プロローグ
『残念ながら息子さんにはどの属性の適性もありません』
『そんな!?もう1度調べてください!』
これは...そうか昔の記憶だ。
『彼は適性がない代わりに他の子よりも魔力量がかなり多い、冒険者になるのは厳しいかと...大きくなってから相談してみてください』
なんでこんなこと思い出すんだろ...。
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「──きろ、起きろ」
誰かに呼ばれ夢から戻される。
「こんなとこで寝てないでさっさと帰れよ、もう戸締りしなくちゃいけないしな」
ここは...学校か、どうやら下校時刻はとっくに過ぎていたようだ。
「早く帰れよ、先生も帰りたいんだ」
そう言って先生は教室から出ていった。
......帰るか。
その日の夜も夕方と同じ夢を見た、理由は分からないが全く同じ夢だった。
俺は魔法を使えるがどの属性にも適正がない。
かわりに他より少し魔力量が多いだけ。
初等部のときは周りから何か言われたりは無かったが中等部になってからは『無能』、『落ちこぼれ』などと言われるようになった。
だが別段気にすることは無かった。何故かって?全部事実だからだ。
次の日は朝から講堂に生徒が集められた。今日から新しい先生が来るそうだ。微妙な時期だが手続きが遅くなっていたらしい。
「こんにちは、今日からこの学校で教えることになったシエル・フォークリッドです。分からない事が多いので教えて下さると嬉しいです」
この時はこの人が俺の運命を変えるとは思いもしなかった。
シエル先生が来てから1週間がたったある日、先生の研究室まで来るように言われた。
「失礼します、ラティウスです」
「おお、待っていたよ。君が噂の適正無しだね?失礼、気に障ったなら謝罪しよう」
「いえ、もう慣れました。それよりも何か用事があったのでは?」
「ああ、私は君のような子を何人か見てきてね、その中の何人かはどの属性も使えない代わりに固有魔法というものを持っていたんだ。だから君もその可能性があるから今日試して貰おうと思って呼んだんだ」
固有魔法?なんだそれ。
「おや?固有魔法を知らないのか。固有魔法というのはその名のとおりその人固有の魔法だ。特徴としてその人の1番身近にあったものを扱う事が出来るんだ。説明はこの辺にしてさっそくやってみようか。過去を思い出しながら掌に魔力を集中して適正があれば1番身近にあったものが具現化するんだ。さあやってみよう」
それにしてもよく喋るな...。
まあやってみるか...過去を思い出しながら魔力を集中させて...。
この時はどうせ何も起こらない、結局は無能のまま、なんて思っていた。
しかしその日、俺の運命は動き出した。
「...なんだこれ?」
「ほう?君は鏡か。君はずっと鏡でも見ていたのかな?」
なんで鏡なんだ?鏡なんて身近に...そうか、あれか。
「多分適正が無いことを知ってから毎日家の近くにある『鏡』のように透き通った湖面を見ていたからだと思います」
「まあ何にせよおめでとう、これで君は固有魔法である鏡魔法を使えるようになるだろう。なにかあったらここへ来なさい、鏡の性質について教えてあげよう」
それからは毎日研究室に通い鏡の性質を理解し、鏡魔法の練習をした。
月日が流れるのは早いもので今日は卒業式だ。
「卒業おめでとう、これからも用があれば私の研究室まで来るといい」
「用が無ければ行ってはダメですか?」
僕は笑いながら冗談混じりでそう言った。
「そんなことは無い。いつでも来なさい、君を歓迎しよう」
「ありがとうございます。高等部の授業で行き詰まったら行かせてもらいます」
そこで僕らは別れた。
これがこの人に会う最後の瞬間だとは思いもしないまま。
息抜きに書いていたらまだまだ書けそうなので投稿して見ることにしました。
もう一つ作品があるので是非読んでみてください。