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閑話 個別訓練

季節は6月の中頃、そろそろ梅雨が走り始める頃の出来事である。

その日は、週の真ん中であるにも関わらず、世間的には休みであった。休日の名は、国王の誕生日そのままの命名であるが、数少ない国民の休日である。


「それで、結局今日もトモマサ君は、ソウイチロウ先生の研究室に篭ってるの?」


「はい、カリン先生。昨日遅くに帰られたトモマサ様を、お誘いしたのですが、『今が佳境なんだ、ゴメン』と仰られて断られてしまいました」


「むう、最近のトモマサはずっとそう言ってるのだ。おかげで、全然、剣術の修行が進まないのだ」


「にゃー!」


朝から、彼女達が集まって愚痴を言い合っている。ついでにルリも不満げに鳴いている。スキンシップが足りないと。

魔法学園に入ってから始めた、魔導車開発。それにすっかり没頭しているトモマサに皆の不満が溜まりつつあるようだった。


「そう、仕方がないわね。いくら勉強が学生の本分とは言え、ちょっとやり過ぎですね。今晩にでも、こってりと絞らないと行けませんね」


「はい、カリン先生。よろしくお願いします」


頷き合う2人、どうやら説教コースであるようだ。


「それはそうとして、今日は私たちだけで行きましょうか?」


「はい、私達とルリがいれば大丈夫だろうとトモマサ様からも許可は頂いておりますので」


トモマサの奴隷であるアズキは、外出にもトモマサの許可が必要である。本当は形式的なものなので、自由にして欲しいとトモマサも思っているのだが、真面目なアズキは頑なに許可を求めるのであった。


「それじゃ、行きましょうか。フクチヤマの領域へ」


トモマサの許可を得たと聞いたカリン先生が言うと、アズキとツバメ師匠、そしてルリも大きく頷いた。


〜〜〜


3人プラス1匹は馬車へと乗り込む。馬車は、ヤヨイのところにお願いしていた馬車だ。屈強な男が御者席に座り、馬を操りイチジマの街を駆けていく。


「今日は、アイテムボックスを持つトモマサ君がいないから、あまり獲物を持って帰れないですね」


「そうですね。それにしても、カリン先生でも時空魔法は使えないんですね。不思議です」


馬車の中で、カリン先生とアズキが話をする。

ちなみにツバメ師匠とルリは、馬車に乗って早々に夢の中へと入って行っていた。


「トモマサ君の家庭教師をしていた頃、ヤヨイ様に時間を頂いて直接レクチャーを受けたのですが、どうにも4次元とか虚数空間という考え方が理解出来なくて、そこで止まってますね」


21世紀の日本人なら、ドラ○もんの4次元ポケットと言うだけである程度のイメージが伝わる話なのだが、アニメなどない現代(31世紀)、少し勉強した程度で同じイメージを理解する事は難しかったようだ。


「そうだったのですね。でもそれなら、今なら少しは使えるのではないのですか?かなり上がってこられてますよね。魔素量」


「確かに、今の魔素量なら使えるかもしれませんね。容量は少しかもしれませんけど」


そんな事を言いながら、時空魔法の発動を試みるカリン先生。やがて、大量の魔素を消費して漸く魔法の発動に成功する。


「あ、なんか出来たみたい。でも、魔素量の消費が激し過ぎてアイテムボックスを保持してられないですね。魔素がドンドン減っていく感じがします」


言いながら慌てて、魔法を取り消すカリン先生。そんなカリン先生にアズキが疑問を投げかける。


「アイテムボックスって魔素を消費するんですか?」


「ええ、もちろん。ただ、普通は、自然回復分以下なので目に見えて減っていく事は無いのですけどね」


カリン先生の返答に納得の表情を浮かべるアズキは、授業の内容を思い出していた。

魔素、それは、魔法を使うのに必要な物質であり、使用した分は体内で自然回復していく物質であると。


「それでカリン先生、大丈夫ですか?魔素量の残りが少なくなったのなら今日は狩りを中止した方が……」


心配そうに尋ねるアズキにカリン先生が元気に答えた。


「大丈夫よ。今、ステータス見たところだと2割ほど減ったけど、まだ25万は残ってるから」


「そうですか、それだけあれば安心ですね。それにしても、2割減って25万ですか。それでしたら、総量は……」


カリン先生の言葉に含まれている数値から総魔素量を計算し始めるアズキだったが、計算が終わる前にカリン先生から返答が帰ってきた。


「今の所、最大で32万ほどですね。それでも、まだまだ増えてますけど」


「32万ですか。すごい数値ですね」


人族の平均が100程である、魔素量。その中で、32万なんて数値、はっきり言って人外である。それでも、トモマサの半分にも満たないのであるが。


「そう言う、アズキさんも結構上がってますよね?私よりも長い事側にいるわけですし、ナニする回数も多いでしょうから」


「ええっと、私は、今4万ほどです」


カリン先生の質問に顔を赤らめながら答えるアズキ。たまに、一緒にナニしている関係にも関わらず、カリン先生にですら恥ずかしがるアズキである。それが、余計にトモマサを興奮させている要因でもあるのだが。


「ほらー、4万って、アズキさんも十分高いですよ〜。しかも獣人なんですから、実質40万って事なんですよ〜」


馬車の中で和気藹々と繰り出される美少女2人の話。傍目には非常に癒される光景であるのだが、御者席に座る男は顔を顰めて呟いていた。


「4万とか32万とか、あり得んだろ。ヤヨイ様からは、この子達を守れとか言われてるけど、そんな必要あるのかよ。まぁ、でもよ、命令だし、嫁と子達を養わないといけないしよ。いつもトモマサ様からも心付けを貰ってるから精一杯頑張るけどな」


ブツブツと独り言を言いながら馬を進める、御者の男。暫くして、目的地であるフクチヤマの領域へと到着した。


〜〜〜


馬車を降りて10分ほど、アズキ達は、フクチヤマの領域の外縁を歩いていた。


「日頃の魔法の練習成果を見るために、2人には今日、魔法だけで狩をしましょうか?私も苦手な上級魔法を圧縮して小さくする練習をしますので」


突然の提案に驚くアズキとツバメ師匠に向けて、カリン先生は更に話を続ける。


「2人とも学園の授業で新しい属性魔法を覚えたのですから、それの練習をしましょう。それに、この領域の外周部で2人が普通に戦っても楽しくないでしょう?一瞬で終わってしまうのですから」


そう、はっきり言ってこのフクチヤマの領域、特に外周部の魔物はとても弱いのだ。それぞれ達人の域に達しているアズキとツバメ師匠にとってここの魔物など、飛んでいるハエと変わりの無いものであった。

そのためカリン先生の言い分は、とても理にかなっているのだが、折角の狩で暴れたいツバメ師匠が、カリン先生に食い下がる。


「カリン先生、それだと数が取れないのだ」


「ツバメさん、そもそも、アイテムボックスが無いので数は持って帰れません。なので大丈夫です」


「なら、誰がカリン先生を守るのだ?私達が魔法に集中したら防御が手薄になるのだ」


「ルリが頑張ってくれますので大丈夫です」


「あう……なら、なら、魔素が足りなくなったらどうするのだ」


食い下がったは良いが、全てを返されて困っていたツバメ師匠の苦し紛れの言葉にカリン先生が、これまでとは違う反応した。


「あら、そうですねぇ。それは、考えてませんでした。ツバメさんって今、魔素量如何程ですか?」


「今測ったら、2350なのだ」


ひょっとしたら刀使えるかも?と思って元気に答えるツバメ師匠だったが、周りの反応が凄かった。


「え”、どうしてそんなに高いの……」


「もしかして、影でトモマサ様と……」


そう言って、絶句する2人。暫くの沈黙の後、カリン先生が、重い口を開けた。


「ツバメさん、はっきりと言って下さい。嘘は無しですよ。……トモマサ君といつしたのですか?」


突然の質問に頭に『?』を浮かべていたツバメ師匠であったが、カリン先生に「いつ、そのナニをしましたか?」と詰め寄られて始めて理解したようだった。


「私は、まだ誰ともナニをした事は無いのだ。いつもトモマサに断られている事をカリン先生も知っているはずなのだ」


「そ、そうよねぇ〜。トモマサ君も成人するまではと約束してましたしねぇ〜」


あからさまにホッとしながら話をするカリン先生。


「それなら、何でそんなに高いのかしら?鬼人族って獣人と同じで魔素量低い部類の部族のはずなのに?」


「カリン先生、此れは、もしかすると私の『匂い嗅ぎ』の時と同じでは無いでしょうか?ツバメさん、結構トモマサ様とお風呂に入ったり膝に乗ったりしてますし」


「あ、あ〜、なるほど。それは、ありますね。……それにしても、それだけで2000越えですか。昔の私が、1000を越えるのにどれだけ苦労したかと思うと、泣けてきますね」


しんみりと昔を思い出すカリン先生にツバメ師匠が話しかける。


「それで、魔素が切れた場合は……」


「何言ってるんですか、ツバメさん、それだけあれば切れる事なんて、まずありませんよ。思う存分魔法だけで戦えます」


そして、ツバメ師匠の思惑は完全否定された。


〜〜〜


「今日は、ゴブリンの魔石が20とワイルドボア1匹ですね」


「3人プラス1匹では、十分では無いでしょうか?」


「それも、そうね」


フクチヤマの領域からの帰り道、馬車の中で和やかに話すカリン先生とアズキ。その横で、ツバメ師匠は1人凹んでいた。


「魔素が、全く切れなかった」


そう、全く刀を振るう必要がなかったのだ。

戦い始めこそ、アズキの飛ばした水球ウォーターボールやツバメ師匠の飛ばした風刃ウィンドカッターは、魔物では無く後ろの木を倒していたのだが、それも数回のみ。元々、運動能力の高い2人は、直ぐにコントロール能力を手に入れ、ほぼ一撃でまものをたおすようになってしまったのだ。

そのため、魔素が切れるほど魔法を打つ必要もなく、狩の時間は終了を迎えた。そもそも、ツバメ師匠ですら人族の最高値を超える(トモマサの関係者を除く)魔素量を持っているのだ、簡単に無くなるわけがない。


「まぁまぁ、ツバメさん、魔石を取り出した時の刀捌きは見事でしたよ。ナイフいらない程でしたから」


何とか、慰めようとするカリン先生だったが、逆効果だったようだ。


「剣術と解体術は別なのだ……」


そう言って、俯いてしまうツバメ師匠に、これ以上かける言葉はないと困ってしまうカリン先生だった。


〜〜〜


その夜、トモマサは、カリン先生に絞られていた。


「トモマサ君、研究もいいですけど、ちゃんと休みを取ってみんなの相手をして下さい。特に、アズキさんとルリは、トモマサ君がご主人様なのです。分かってますか?」


「はい」


布団の上で正座させられ、返事をするトモマサにカリン先生はなおも続ける。


「それに、私だって、休みの日には一緒にいたいのですよ。分かってますか?」


「はい」


人差し指を立てながら、顔を近づけて話をするカリン先生。


「それでは、今から相手して下さいね」


そう言って、更に顔を近づけてキスしてくるカリン先生。

そして、カリン先生に押し倒されたトモマサは、思う存分絞られたのであった。

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