30.初陣2
後ろからの襲撃に気づいたのは、偶然だった。カリン先生と話をするのに横を向いた時にたまたま視界に入っただけだった。
前に出て来た盗賊が6名。最初にアズキが言ったのが8名。その差2名。
その2名が、カリン先生目掛けて襲いかかって来たのだった。恐らく、魔法使いのカリン先生なら不意を付けば倒せると踏んだのだろう。もしくは、人質にでもするつもりなのかもしれない。
気づいたら俺は、反射的に刀を振り抜いていた。前を走ってくる盗賊に下段から胴へ一振り。斬った盗賊の脇をすり抜け、後ろを走る盗賊へ刀を上段に上げ、袈裟懸けに一振り。毎日している型の一つだった。
ただ、それだけだった。たったそれだけで盗賊2人は血を吹き出し倒れ、動かなくなった。
そして俺は、そこから動けなくなった。
血を吹き動かなくなった2人を見て固まる。
……殺した。人を殺した。その事が俺の思考を縛る。
刀を構えたまま固まる俺の腕に温かいものが当てられた。それも左右から。
そう、カリン先生とアズキが俺の体を優しく抱いてくれていたのだ。
「トモマサ君、ありがとうございます。おかげで怪我もなく助かりました」
カリン先生が、優しく声を掛けてくれる。
「トモマサ様、見事でございました。悪いのは盗賊です。あまり気に病まないでください」
アズキも優しく諭してくれる。
気付けばツバメ師匠も、固まって動かなくなって俺の手から離れない刀から、指を一本ずつ剥がして行ってくれている。
「トモマサよ。よくやった。恐らく無意識であろうが、見事な剣さばきであった」
ようやく全ての指を伸ばして俺の手から離れた刀を鞘にしまって、ツバメ師匠はさらに話を続ける。
「そして、トモマサよ。カリン先生もアズキさんも言っているようにあまり気にするな。悪いのは盗賊だ。トモマサが殺らなくても誰かに殺されていた奴らだ。その上、殺るのが遅くなればなるほど被害が増える奴らだ。だから、な、気にするな」
ツバメ師匠も優しく諭してくれる。おっさん(中身)が3人の少女(一部幼女)に心配されている。何だか、情けなくなってくる。
項垂れていると、ツバメ師匠にグッと顔を掴まれてブチューっとキスされてしまった。
「し、師匠、何を! 」
「男が、いつまでもうじうじするものでは無い。今のはご褒美だ。私の初めてを喜んで受け取るがいい。これで、盗賊の件は終わりだ。いいな」
ツバメ師匠、無茶苦茶である。ご褒美って、幼女のツバメ師匠にキスされてもあまり嬉しく無い。俺はロリコンでは無いので、と言おうとして口を閉じた。さっき盗賊頭が言ってツバメ師匠が切れた所を思い出したからだ。
そっと、盗賊頭を見ると、四肢を切り取られ出血多量で死んでいた。俺は、口に出した後を想像してまた固まってしまった。
「どうした。まだ、動けんのか?そろそろ出発準備しないと帰る時間が遅くなるぞ? 」
そう言いながらツバメ師匠が可愛く首を傾げている。俺は、「あなたのせいですよ」とも言えず、笑って誤魔化しておいた。
俺が普通に戻ったのを確認したアズキとツバメ師匠が、盗賊達を集めて行く。
何をするのかと思ったら、焼いてしまうようだ。放置すると魔物の餌になるらしく、良くないいらしい。
カリン先生が、火魔法で遺体を焼き出した所で、ツバメ師匠が大きな袋を一つ渡してきた。
「なんですかこれ? 」
「ん?もちろん、盗賊の首だ。持って帰ってくれ。街に帰って衛兵に渡さないとな。もしかしたら賞金貰えるかもしれないしな」
爽やかな笑顔で生首を渡してくるツバメ師匠に俺は、何も言わずアイテムボックスに袋をしまった。
それから馬車での帰り道、真っ直ぐ帰るのかと思いきや街道から外れ出したのでツバメ師匠に問いただすと、「盗賊頭が泣きながらアジトを教えてくれたのでな。溜め込んだ物を回収に行くんだ」などと言っている。
他にも、「これが盗賊狩りの醍醐味だ」などとも。
しばらく進むと、目立たない場所に木こり小屋のような建物を見つけた。盗賊のアジトだ。
呆れる俺をよそに、ツバメ師匠は盗賊のアジトに正面から突入し、袋一杯の戦利品を持って帰ってきた。
その間、俺は、カリン先生とルリと馬車で待機していた。
なんせ、付いてきていた御者さんですら、嬉々としてアジトに向かって行ったのだから。
〜〜〜
ホクホク顔のツバメ師匠を乗せて馬車でイチジマの街まで戻る。
まずは衛兵詰所に行って、盗賊の首を渡す。
しばらく待ってると、衛兵さんが金貨3枚渡してくれた。盗賊頭だけは、賞金がかけられていたようだ。
人の命の値段としては安すぎる気もするが、盗賊なんて珍しいものではないので高い賞金はかけられないようだが。
次は、御者さんに教えてもらった解体屋で魔物の解体を頼んで屋敷に戻った。
解体は、血抜きやらで数日かかるらしい。
料金は、1体銅貨50枚、8体いたので、全部で銀貨4枚。半金の銀貨2枚前払いで後は、引き渡し時に払うと教えてくれたので、銀貨2枚渡して引換券を受け取り店を出た。
その後は、まっすぐ屋敷に帰って風呂に入っている。湯気が立つ湯船に浸かって一息ついた所で、ふと気が付いた。俺を含めて風呂の中に4人いたからだ。
「あれ、いつもより人が多いな? 」
アズキのこともカリン先生のことも受け入れてからは、一緒に風呂に入ることも多い。3人で入ることも多々あったのだが、今日はもう一人多かった。そう、ツバメ師匠だった。
「ツバメ師匠、なんで入ってるんですか? 」
「皆入るんだ、私も入るのが普通だろう。前も、一緒に入ったでは無いか、今更遠慮するな。大体、その二人は良くて何故私はダメなのだ? 」
慌てる俺に、ツバメ師匠は平然と言い放った。その言葉に、アズキとカリン先生の冷たい視線が向けられる……気がする。
「いや、それは、二人とは深い仲というかなんというか、その……」
俺、しどろもどろである。
「そうか、主らはそういう関係だったのか。ならば、私ともそうなれば良いでは無いか?うむ、この体ではちと厳しいな。ならば、これでどうだ? 」
そう言ったツバメ師匠、ぐっと気合を入れたかと思うと身体が一気に成長して言った。「ふう」と言って近づいてくるツバメ師匠の体は、長身のグラマラスな女性そのものだった。
「な、な、な、なんで」
「鬼人族は、一時的に体を成体にすることが出来るんだ。知らなかったのか?この体なら、深い仲にもなれるし、一緒に風呂にも入れるだろ?問題解決じゃ」
どこが、問題解決だ。問題アリアリだろう。
「ツバメ師匠、すみません。俺には、もう、アズキとカリン先生がいます。ですので、先生と深い仲になるわけにはいきません」
「何故じゃ、2人も3人も一緒じゃろう。細かいこと言わず、私も仲間に入れてくれ。昼間のキスは何も言わなかったでは無いか? 」
昼間のは不意打ちだろう。確かにダメだともなんとも言わなかったけど。
しかし、この人こっちの言うこと全然聞いてくれない。どうやって断ろう。俺がうんうん悩んでいる所にアズキが提案してきた。
「トモマサ様、ツバメ様を受け入れてあげられないでしょうか?私からもお願いします」
ま、またですか。アズキさん。今、俺断ろうとしてたよね。どうして受け入れようとするの?
「トモマサ君、私も受け入れてあげてほしいな。トモマサ君なら3人ぐらい余裕だよ」
何が余裕なんですか。俺としてはアズキとカリン先生だけで十二分に満足なんですけど。
「トモマサ様、これは、以前もお話ししましがたトモマサ様の為に必要な事なのです。トモマサ様は、これから、たくさんの方と関係を持つよう勧められるでしょう。それこそ、全く知らない人や、トモマサ様が好きでも無いような人とも。それらをお断りするためには、ある程度の人数を受け入れている必要があるのです。それには、私とカリン先生だけでは全く足りません。幸い、トモマサ様は、ツバメ様をお好きなようです。私やカリン先生がおられなければ、受け入れているのでは無いでしょうか?それなら、嫌でないのであれば、受け入れてあげてもらえないでしょうか? 」
なんですか、その設定。俺、ハーレム作らないといけないの?少し前まで妻一筋だった俺にその要求は、高過ぎやしませんか?そりゃアズキに続きカリン先生は受け入れたけど、そんな簡単にホイホイと次を受け入れるって、俺はそんなに軽くない。
断るぞ、と思ってツバメ師匠を見る。目の前で立ってるツバメ師匠を下から順に見上げていく。細く長い足、くびれた腰、形の良い胸、整った顔立ち、赤く綺麗な髪。ダメだ断る言葉が出ない。
代わりに言ってしまった。
「だ、だめだ、成人するまではダメだ。成人したら受け入れよう。それまでは、深い関係にはならない。それで良ければ、一緒に風呂に入ろう」
その瞬間、ツバメ師匠に抱きつかれた。柔らかい胸の感触が……スルスルと消えていった。見ると子供に戻っていた。いや、良いんだ。成人するまでは、ナニもしないんだから。
アズキとカリン先生に視線を向けると、二人とも喜んでいるようだった。好きな男に新しい彼女ができたんだぞ。喜ぶところなのか?俺には、理解できない心情なのだが、31世紀では普通なのだろうか、謎である。
風呂から上がり夕食を食べた後、ツバメ師匠は自分の家に帰っていた。帰り際にキスされた。ナニもしないと言ったが、これぐらいは良いかな。見た目6歳の女の子だし、微笑ましい部類だろうから。
実戦訓練で疲れたので、今日は早く寝ようと一人ベットに入てうつらうつらしていたところで、アズキとカリン先生の二人がやって来た。二人とも薄いネグリジェでとても扇情的な格好で。二人が、ベットの左右から入ってきて、「「今日は3人で!! 」」とユニゾンで言われて眠気が吹っ飛んだ。ツバメ師匠を受け入れてくれたお礼らしい。カリン先生は、助けてもらった礼も兼ねているようだが。
二人とも実戦で気が冴えてたのか、とても積極的でカリン先生の謎知識によりナニをナニされた俺は、大興奮してしまった。お陰で、深夜まで頑張ってしまい、次の日は3人とも昼近くまで起きれないほどに。
〜〜〜
翌日昼前ごろ、トモマサを挟んでの会話である。
「おはよう、アズキさん」
「カリン先生、おはようございます。朝、起きれませんでしたね」
「全くだね。トモマサ君、ハッスルし過ぎだね。ちょっと煽り過ぎたかしら? 」
可愛く舌を出すカリン先生。とっても可愛いのだが、トモマサはまだ寝たままなので誰も褒めてくれない。アズキが微笑んでいるだけである。
「ところでアズキさん、魔素量は幾つになりましたか? 」
トモマサと関係を持って数ヶ月のアズキの魔素量にカリン先生は興味津々の様子だ。
「『ステータス』、えっと、魔素量ですね。10532ですね。昨晩だけでも100ぐらい上がってます」
「はは、1万越えですか。最も魔素量が多いと言われているエルフを超えて帰狭者並みですね。しかも、まだまだ上がってるとなると先が怖いです」
カリン先生が苦笑いしている。獣人がエルフを超える魔素量を持っている。とんでもない事である。何よりも獣人は、魔素量の90%を身体能力に使用しておりその余りがステータスに表示されているのである。獣人の魔素量が1万という事は、普通の人にとっては10万に値するのである。完全にチートな世界である。
「そう言うカリン先生はいくつなのですか?関係を持って2週間ぐらい経ちましたしそれなりに上がってると思うのですが」
「私は、今、9723です。昨日までは、8000台でしたのに。これまで、地道に魔素量をあげていたのが嫌になる程の上がり方です。嬉しいやら悲しいやらなんとも言えません。師匠が嬉々として勧めていた理由がよく分かりました」
カリン先生も爆発的に上がっているようだ。トモマサからナニを注がれるたびに。
「それで、トモマサ君の魔素量はいくつになってんでしょうかね? 」
「確か、カリン先生と初めてなされた後に40万ぐらいに上がったとおっしゃってましたが」
「その時で、40万ですか。昨晩の興奮具合から考えるとさらに上がっているかもしれませんね」
頷きあう2人。視線は、トモマサに向けられているがまだ起きる様子は見られない。
仕方がないとばかりに、2人はトモマサを起こすことにした。左右から抱きついて。
裸の2人に抱きつかれるトモマサ。柔らかい胸の感触に目覚めて来る。特に下半身が。当然の生理現象である。
少しして目を開けるトモマサに、
「「トモマサ君(様)、おはよう(ございます)」」
ユニゾンで挨拶が聞こえるのだった。
〜〜〜
その日は、起きてすぐすぐベッドから出ましたよ。明け方まで何してさらに寝起きでとか、いくら体が10代でも心は40代なのだから、自制心は持ってるので。ちょっと残念だだけど……、いや、いや、いや、ナニもしないよ。そこまで飢えてないから。
後で、自分の魔素量を確認したら60万を超えていた……俺もう、人間じゃないかもしれない。
いつもありがとうございます。
取り敢えず、ここまでで一章とします。区切りは微妙ですが。
しばらく、緩和を挟んでから、2章の学園生活を始めます。
更新周期が遅くなるかもしれません。
ご了承ください。




