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21.アズキの誕生日2

夜には、アズキの誕生パーティーが開かれたいた。パーティーとはいっても、参加者は、アズキ、俺、ヤヨイ、シンゴ王子、エカチェリーナ王女、カリン先生、ツバメ師匠と見知ったメンツだけだったが。


「……アズキ、誕生日おめでとう。乾杯」


ヤヨイの挨拶でパーティーは始まった。皆それぞれに、歓談したりアズキに祝いの言葉を言たりしながらまったりと進んでいった。


「トモマサ、今日はちゃんと誕生日プレゼントは買えたかね? 」


部外者がいるため、外向けの言葉でヤヨイが語しかけて来る。顔は、思いっきりにやけていたが。


「はい、おかげさまで、良いものを送る事が出来ました」


「うむ、そうか」と言っているが、いまにも吹き出しそうなぐらい顔が笑っている。くっそ~、また揶揄ってやがる。


「トモマサ君は、すでにプレゼントを渡しているのか?それなら、僕も渡そうかな? 」


王子が懐からリボンのついた小さな箱を取り出してアズキに渡していた。


「シンゴ王子、ありがとうございます。開けてもよろしいでしょうか? 」


「ああ、いいよ」


シンゴ王子の返事を聞いたアズキがリボンを外し箱を開けると、そこには小さいながらも宝石のついたネックレスが入っていた。さすがイケメン王子、プレゼントもそつなくこなすな。俺が感心してみていると、ほかの参加者たちもプレゼントを持ってアズキのところに集まっていた。皆それぞれに、服や、アクセサリー、かわいい小物などが送られていた。下着を送ったのは、俺だけだった。そりゃそうだ。下着なんてなかなか送るものじゃない。皆のプレゼントを見てると、ヤヨイがまた突っ込んできた。


「ところでトモマサは、何を送ったんだ?先ほどは、良いものとしか言っておらんかったし、良ければ教えてくれんか? 」


「え、いや、あの、その、身に着けるものを送りました」


何とか誤魔化していると、さらに突っ込みが入ってきた。


「身に着けるものか、服か何かか? 」


こいつは、と思って顔を見るといつもより少し赤い。ひょっとして酒に酔ってきてるのか?これは、まずいな何と言って切り抜けよう?


「ヤヨイ様。トモマサ様からの贈り物は二人の秘密です。いくらヤヨイ様のお言葉でもお教えするわけにはいきません」


悩んでる俺の横からアズキが返事をしていた。おお、ナイスフォローだ。これで少し黙ってろヤヨイめ。


「二人の秘密か。すっかり仲良くなったようだな。アズキも今日から成人となったし、後継ぎが出来るのも時間の問題かな? 」


俺とアズキが顔を合わせて真っ赤になる。王子が、「それは楽しみですね」とか言ってるし、ヤヨイめ外堀から埋めてきやがった。なんて恐ろしい。他の人たちも、そういう関係なんだ。みたいな顔で見てるし。アズキは、真っ赤になって固まってるし、くっそ、俺が何か言うしかないのか。


「アズキは成人しても、私はまだまだ子供ですからね。後継ぎなんてまだ先の話ですよ。ははは」


「そんなことは気にしなくても良いよ。トモマサ君。世継ぎは、早いに越したことはない。私は、兄たちがいる手前自由にはできないが、トモマサ君は何もためらうことはない。早速今晩からでも頑張ってみてはどうだろうか? 」


予想もしない所から恐ろしい攻撃が来た。さすがイケメン王子、「今晩からでも頑張ってみてはどうだろうか? 」なんて言葉、ただのセクハラじゃないのかと思うのだが、シンゴ王子だと全くいやらしくない。アズキは、まだ固まってるし、もうどうしようもない。


「ははは、シンゴ王子には敵いませんなぁ。はははははははは」


笑ってごまかしておいた。

ちらりとヤヨイを見る。何か言ってくるかと思ったが、カリン先生に捕まったようだ。2人で魔法談議を始めていた。ありがとうございます。カリン先生。あなたのおかげで何とか乗り切れました。


皆でケーキを食べ、アズキのお礼の言葉でパーティーも終わり、お客様方も皆帰っていった。皆を玄関先まで見送った後、アズキと二人部屋に戻る。


「楽しいパーティーだったな」


「トモマサ様もありがとうございました。こんなに楽しい誕生日を迎える事が出来たのも全てトモマサ様のおかげです」


「いやヤヨイが頑張ったんじゃないの?俺、何にもしてないんだけど……」


「確かにヤヨイ様にも大変お世話になりましたが、トモマサ様が来られたおかげですべてが良い方に動き出したと思っています」


俺ってただ、アズキを奴隷にしただけなんだけど。言葉だけだとかなりひどい奴だな。本人は、幸せそうだし良しとするか。

話の途中で風呂の準備が出来たと他のメイドさんが伝えに来たので、ルリと共に着替えを持って風呂に行くことにした。

ルリは孵化数日後から風呂に入れている。最初は怖がっていたルリも今では湯船で泳ぐ程風呂が気に入ったようだ。猫って泳ぐのかとかなり驚いたが。

その間にアズキも後片付けをしに戻って行った。


のんびり風呂に入り部屋に戻った。ルリも洗ってもらって気持ちよかったのか、うっとりとした顔をしている。

そのうち部屋にアズキが匂いを嗅ぎに来るだろうと思って、布団に入って魔素コントロールの訓練をしていると、ルリは気持ちよさそうに眠ってしまった。俺も瞼が閉じそうになりながら、魔素コントロールの訓練をしていると、ドアをノックする音が聞こえて来た。


「アズキか?どうぞ」


「トモマサ様、失礼します」


温かそうなガウンを着たアズキが入ってきてベットの端に座った。


「アズキも風呂に入ってきたのか?珍しいな。いつもはメイド服なのに」


「トモマサ様、今日はありがとうございました。実は最後に一つお願いを聞いてほしいのですが、よろしいでしょうか? 」


「お願い?昼も言ったけど、俺にできる事なら遠慮せずに言ってよ」


今日はアズキの誕生日だ。プレゼントは渡したが、それ以外にも何かしてあげたいところだ。いつも身の回りの世話とか色々とやって貰ってるし。


「そ、それでしたら、わ、わ、わた、私を貰っていただけないでしょうか? 」


その言葉と共に、立ち上がって、すっとガウンを脱いだ。今日プレゼントした下着だけの姿になっていた。大きな胸にピンクの下着がよく似合っている。

真っ赤な顔のまま、こちらをまっすぐに見つめているアズキの尻尾がピンと立っている。緊張しているようだ。


「あ、アズキ?あの、その、えっと? 」


しどろもどろになった俺は、言葉が続かない。


「駄目でしょうか?……私、不安なんです。トモマサ様は、毎日こんなに近くにいるのに、結婚の約束までしたのに、ちっともこちらを向いてくれてない気がします。頑張って頑張って側にいても不安ばかり募っていきます。父や母のようにいなくなってしまうのではないかと、奥様の元に行ってしまわれるのではないかと……」


段々と目に涙が溜まっていく。両親ともに帰らぬ人となり、自身の将来もどうなるかわからない。その上、主人と決めた人は全然見てくれない。体は成人したとはいえ、まだ13歳、この世界を一人で生き抜くには心が若すぎたようだ。

そんなアズキを見て俺は気づいてしまった。プロポーズまでしもしておきながら、逃げていた事を。

そのせいで、ずっとアズキを待たせていた事を。寂しい思いをさせていた事を。


「アズキ、寂しかったんだね。頑張ってたんだね。気づいてあげれなくて、ごめんね。でも、もう大丈夫だよ」


アズキを抱きしめて一緒に布団に入る。下着姿でずっと立ってたものだから、体が冷え切っていた。体を合わせて温める。


「俺は、ずっと戸惑っていたんだ。1000年も寝ててすっかり違う環境になってしまって。妻はいなくなり、ヤヨイもすっかり独り立ちして、俺も不安だったんだ。アズキは、ずっと側に居て支えてくれてたのにね。こんなにも思ってくれてたのにね。何でちゃんと向き合わなかったんだろうな?でも、もう大丈夫だから、逃げないから自分の気持ちにもアズキの気持ちにも。アズキを置いて何処かに行ったりしないから。妻のことは、たまに思い出して寂しくなるかもしれないけど……そんな俺でも、アズキ、一緒にいてくれるかい? 」


「はい、いつまでも一緒にいます」


アズキは、泣きながら笑っていた。


「すっかり冷たくなってしまったね。一緒に温まろうか」


俺は、アズキをぎゅっと抱きしめてキスをした。温かくなる様に長い長いキスをした。

そして、二人はひとつになった。


少し痛そうだったので回復魔法をかけてあげた。良くなったらしい。


〜〜〜


「プレゼントした下着姿あんまり見れなかったな」


「トモマサ様が、すぐに脱がすからじゃないですか」


アズキが恥ずかしそうに布団の中でもぞもぞしている。


「裸のアズキも早く見たかったんだから仕方ないだろ。もう一回見せて」


もぞもぞしているアズキを引き寄せて眺める。


「そんなじっくり見られると恥ずかしいです」


「出会ってすぐの頃、風呂に押しかけて来たじゃないか。あれは、恥ずかしくなかったのか? 」


「あの頃は、トモマサ様に振り向いてもらうために夢中だったので……。今思うとすごく恥ずかしいです」


真っ赤になって俯いているアズキが可愛すぎて、キスをした。


「もう一回いい? 」


肯くアズキに覆いかぶさった。

その日は、夜遅くまで思う存分楽しんだ。


一つだけ言っておこう、回復魔法はすごかったと。


〜〜〜


目を開けると懐かしい天井が見えて来た。


「あれ、ここは……」


俺の家だった。生まれて、育って、大学行くとき一回出たけど結婚してまた帰って来た俺の家。懐かしい築100年近い古民家。


「そうか、あれは夢だったのか。そうだよな。荒唐無稽だものな。31世紀は、剣と魔法の世界なんて。その上、美女獣人とラブラブなんて、溜まってるんだろうか?俺」


1人考え込む俺は、何と無く視線を感じて横を見る。


「うぉ。睦月いたのか」


妻の睦月が、座って俺のことをじっと見ていた。


「あなた、早いわね」


「ん?今日はまだ起きる時間じゃないのか? 」


「違うわよ。アズキに手を出すのがよ。数ヶ月でプロポーズ、半年経たずにエッチだものね。しかも13歳の子に何度も。信じられないわ! 」


「え”?な、何で俺の夢の中身を知ってるんだ? 」


身体中から冷や汗が流れ出す。何故だ、何故バレた。ただの夢のはずなのに。いや、夢でもダメか。40過ぎのおっさんが、13歳の子に手を出すんだから。

改めて睦月を見ると、まるで変態を見るかの様な顔をしている。


「うわ言で何か言ってたのを聞いたのか? 」


「何言ってるの。全部見てたわよ。上から」


上?何だ?夢を解析する人工衛星でも打ち上げたのか?意味が分からない。全く意味が分からないが、とりあえず謝ろう。


「ごめんなさい。夢とは言え浮気してしましました。でも信じて欲しい。本当は、睦月一筋なんだ」


「……」


布団の上で土下座して謝るが、返事がない。


「ごめん。許してくれ。本当に夢だけなんだ」


「……」


再度謝るがダメなのかな。それでも俺には、謝ることしかできない。


「ごめ「もういいわよ」……え? 」


「あなた、本当にあれが夢だと思ってるの? 」


「ええ? 」


「まだ気づかないの?全く困った人ね。今はね、この世界が夢なのよ。あなたは、21世紀の夢を見てるのよ」


「えええーーー。それじゃ睦月は、幽霊か何かか?枕元に立つと言う」


俺の言葉に、睦月は呆れ顔だ。


「違うわよ。残念ながら幽霊では無いわ。私は、あなたの中に残ってた残留思念のようなものよ。守護霊とでも言った方が分かりやすいかしら?何の力もないけどね。それよりも、さっきから謝り倒してるけど、あなた、アズキのこと本当に大事に思ってるの?本当に守ってあげられるの? 」


なんだかよく分からないが、俺の心の中の睦月ってことか?そんなことより質問に答えないと。


「もちろんだ。必ず守るよ。一生をかけて。そう思ってプロポーズしたんだ」


俺の宣言に、睦月は寂しそうに笑った。


「私の事は、置いてけぼりにしたのにね」


「ご、ごめん。そうだよな。睦月にしてみたら、勝手にいなくなった身勝手な男だよな。本当に、ゴメン」


「いいわ、許してあげる」


「え! 」


「その代わり、アズキの事はちゃんと助けてあげて!それに、ヤヨイや今後、関係を持つ人達もよ。約束よ、分かった! 」


睦月が言い放つ言葉に、俺は罪悪感を感じていた。


「本当にそれで良いのか?俺は、お前を置いてけぼりにしたんだぞ。そんな俺を許してくれるのか? 」


「もう良いって言ってるでしょ?それにね、私は幸せな人生を送れたわ。あなたがたくさんのものを残してくれたおかげでね。もちろん大変な時代だったし、辛い時や寂しい時もあったけど、孫、曾孫まで見れたし、何も思い残す事ない人生だったわ。だからね、あなた。あなたは、あなたの人生を歩んで欲しいの。分かった? 」


俺は、涙が溢れて来た。こっちに来てからずっと伸し掛かってた重石が取れた気がしたからだ。

泣いている俺にふわりと温かいものが覆いかぶさる。睦月に抱きしめられていた。俺も、目を閉じて睦月を抱きしめる。


「俺、今度は、悔いのない人生を送るよ。ずっと見ていてくれるのか?それなら嬉しいのだけど」


「ずっとかどうかは分からないけど見てるわよ。それにしても、死んだ妻に別の女とのナニを見せつける宣言ってどうなの? 」


「いや俺はそんなつもりでは……」


俺の弁明を聞きながら笑顔を浮かべる妻を見たのを最後に、俺の意識は遠のいて行った。


〜〜〜


再び、目を開けると温かいものに包まれていた。まだ外は暗くかなり早い時間のようだ。


「睦月? 」


「トモマサ様。おはようございます」


アズキだった。


「あ、アズキ、ごめん」


朝起きて、前の妻と間違えるって最悪だな。フラれる男の典型だな。アズキも怒るだろうかと思って、おそるおそる顔を見る。

すると、アズキ、満面の笑みだった。


「トモマサ様、謝らないでください。ムツキ様と間違えていただけるなんて光栄です」


なんて健気な子なんだ。俺は、嬉しくなってさらに抱きついてしまう。


「それより、トモマサ様、大丈夫ですか。涙を流してうなされてましたが」


「ああ、夢に睦月が出て来たんだ。それで、ちゃんとアズキを守れって叱咤激励されたよ」


「そうでしたか。ムツキ様にまで気を使っていただいて嬉しいです」


本当に優しい子だ。俺は、アズキに優しくキスをして再び目を閉じた。

本来の目覚めの時間まで、アズキの体温を感じながら。

いつもありがとうございます。

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