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14.剣と魔法

数日後の夕食時に、剣術の先生が見つかったとヤヨイから聞かされた。


「明日は、魔法の授業は休みの日でしょう?午後から来てもらうから、話を聞いておいて」


「もう見つかったのか。早いな。しかし、明日は図書館に行こうと思ってたんだが? 」


「図書館なら、午前中に行って来ればいいじゃない。折角、優秀な先生見つけたんだから、しっかり教わってよ」


そうだな。ヤヨイが頑張って探した先生だ。しっかり教わろう。

ヤヨイのニヤケ顔が若干気になるが……。


図書館は、後日にして午前中は、魔素コントロール訓練をして午後に備えた。


「お初にお目にかかる。剣術を教えに来たツバメ ササキだ。よろしく頼む」


メイドに連れられて入ってきた女が、そうあいさつした。

見た目、6歳ぐらいの紅緋髪、紅緋眼の幼女である。頭にコブが2つある。髪に隠れてよくわからないけど、耳かな?体を見ると白い道着に赤い袴を着け、腰には幼女の身長ぐらいありそうな日本刀を差していた。


「えっと、先生ですか?随分若いようですが? 」


見た限りとても剣術を教えられるようには見えない。腰の刀を抜くことすら怪しい気がする。


「ヤヨイ様からは、何も聞いていないのか?あの方も人が悪いな。私は、見ての通り12歳の若造だが、鬼人族最高の剣術、厳流伝承者の父より免許皆伝を頂いておる。心配には及ばん。お主もすぐに剣術の虜にして見せようぞ」


え、12歳?どう見ても6歳ぐらいなのだが?いや、それより鬼人族?頭のコブは角か?気が荒い種族と図書館の本で読んだんだが、いかん、心配しか出て来ない。この子大丈夫なのか?


「うむ、まずは表にて、我が秘儀をお見せしよう」


心配が顔に出てたのか、実力のほどを見せていただけるそうだ。授業を受けるかどうか決めるのはそれからにしよう。

屋敷の広場、いつも魔法の練習をしているところに行くと、数体の鎧が案山子のように吊るされていた。

「よく見ていろ」そう言って、ツバメが近づいていったと思ったら、すぐにこちらに帰ってきた。


「どうしたの?何か忘れものでもした? 」


こちらに向かってくるツバメに問いかけたとき、鎧が袈裟切りに切り裂かれ鎧の上半分が地面に落ちた。俺は、唖然とした。ツバメは、刀を抜く素振りすら見せていなかったのだから。


「こんなものかな?どうだ、私の剣術は?今のは、抜刀術の一刀だ。あれぐらいでは曲芸にしか見えんがな。む、どうした間抜けな顔をして。私の教えを受ける気になったか? 」


「ツバメ先生、これからよろしくお願いします」


あれほどの技を曲芸と言ってしまう、ツバメ先生、どれほどの実力だというのか?俺も使えるようになるのだろうか?楽しみになってきた。気性も荒くなさそうだしね。

ツバメ先生も「こちらもよろしく頼む」とうれしそうに頷いている。頭を撫でたくなる可愛さだ。

だが、続けて言ったツバメ先生の言葉に俺は、頭撫でなくてよかったと思った。


「ただ一つ先に言っておこう。お主、剣術の才能は無さそうだ。敵を倒すより身を守る術として覚えるが良かろう。それと、私のことは、師匠と呼ぶように」


気性はちょっと荒いかもしれない。ま、まぁ俺運動神経鈍いのは事実だから、一流の剣士なんて無理なの分かってたよ剣も魔法もつかえる勇者にはなれないって……。

こうして、幼女ツバメ師匠の下、俺の剣術修業が始まった。


~~~


翌日は、魔法の授業の日である。

これまでの魔法の授業では、火、水、風、土の属性魔法と回復魔法を教わってきた。次は何かと思っていたところで、カリン先生が聞いてきた。


「最近、魔素量を測ってますか? 」


「えっと、前回、カリン先生と測ってからは、やってません」


そもそも、俺は魔素量の計測器を持っていないので測りようがないのだ。


「いけません。最初にも言ったでしょう?魔素量は、魔法使いの生命線です。定期的に測定してください」


「すみません。計測器を持ってないので分からないのです」


「魔法を使えば、簡単に測定できますよ。知らないのですか?前に……教えてないですね。すみません。大体の人が使える生活魔法なのですっかり忘れてました」


生活魔法って、魔素の少ない人でも使える魔法のことだな。そう言えば、生活魔法の本って読んでないな。今度読んでみよう。


「簡単な魔法です。使ってみてください。『ステータス』と頭の中で唱えれば自分の情報が見えます。やってみてください」


俺は、『ステータス』と頭の中で唱えてみた。すると、目の前に、名前、年齢、身長、体重、筋力量、魔素量、スキルなどが表示された。もちろんスキルは空欄だ。


「魔素量は、25万ぐらいですね。下の値が変わってる気がしますが、よくわかりません」


「そうですか。そこまで高いと、そう簡単に魔素量は増えませんので、そんなものでしょう。ところで、後ろの獣人のメイド……アズキさんでしたか?は、魔素量を測ってますか? 」


カリン先生は、突然、アズキに問いかけた。


「え、私ですか?私は、年に一度ぐらいしか測ってません。獣人の魔素量は少なくて頻繁に測る必要がありませんので」


「そうですね。獣人は、魔素のほとんどを身体能力向上に使ってますので、計測できる魔素量は、大変少ない値になりますね。ですが、ステータス魔法は使用できる人がほとんどのはずです。アズキさん、一度測ってもらえますか? 」


アズキのステータスか。胸のサイズとか表示されないのだろうか?某シティ○ンターみたいに見ただけでサイズが判る眼力がほしい。

無駄なことを考えてるうちにステータス魔法の結果が出たようだ。


「え、え、え~。なんで? 」


「魔素量が、増えてますね?アズキさん」


カリン先生の突っ込みにアズキが大きく頷いた。


「ちなみに幾つですか?答えたくなければ、無理には聞きませんが」


「大丈夫です。カリン先生。計測結果は、510です。ちなみに前回……この春の時点では、30ほどでした」


「510!獣人でしょ?あり得ない。そんな数字聞いたことない。やはり、トモマサ君との……をしたからなの? 」


カリン先生がぶつぶつつぶやいている。段々と顔を赤くしながら。


「ヤヨイさん、た、大変失礼な質問なんですが、あ、あの、あなたはトモマサ君と、お、お、お」


「「お? 」」


カリン先生が止まってしまったので、俺とアズキが聞き返すと、湯気でも出そうなほど真っ赤になったカリン先生が再起動してきた。


「トモマサ君と、お、大人の関係になりましたか? 」


「か、カリン先生、俺とアズキは、そんな関係ではありません」


慌てて否定した。


「大人の関係?トモマサ様、どのような関係でしょうか? 」


アズキは、よく理解できなかったのか首をかしげていた。アズキ、後でじっくり話そう。それよりもカリン先生だ。


「お、大人の関係でないのなら、どうしてそんなに魔素量が上がったのですか?獣人の魔素量の平均は10ぐらい、最大でも100を超えないぐらいだと聞いています。それなのに500を超えるなんて、人間に換算すると5000を超えるぐらいですよ?そんな値を、トモマサ君とのせ、せいゴニュゴニュ無しに得られるはずがありません」


話が分からない。なぜ魔素量の話が、下ネタに直結していくんだ?詳しくカリン先生に聞いてみた。


魔素量を増やす方法としていくつかの方法があり、魔物の肉を食うこと、魔素量の多いところに行くことが主要な方法であるが、実は、もう一つあるようだ。それは、魔素量の多い男性とエッチな事をすることである。男性から出た濃い体液を体内に取り込むことにより、魔素量を増加させる事が出来るとのこと。一般的な本には書いていない。子供が見るといけないから。危ない女性が増えるといけないから。危ない男性も増えるかもしれないから……。

ちなみに逆の場合、女性の方が魔素量が多い場合も男性側魔素量の多少の増加は確認されているらしい。女性の増加量とは比べもにならないらしいが。


「カリン先生、よくご存じですね」


「私の師匠も女性だったのよ。この方法で、魔素量をあげたと言ってたわ。未だ独身だけど……」


俺の背筋に悪寒が走った。カリン先生の師匠が何歳か知らないけど、よぼよぼのバーさんに襲われるイメージが浮かんで来たからだ。


「か、カリン先生、絶対に俺の魔素量、人には言わないでくださいね」


「言いませんよ。奴隷にはなりたくないですから」


ヤヨイ、グッジョブだ。契約は大事だな。罰則も。


「本当にお二人は、大人の関係ではないのですか?以前に、布団に入り込んでくると言ってましたが? 」


カリン先生が改めて聞いて来た。


「間違いなく、関係は持ってません。ただ……」


俺は、アズキが朝晩じっくりと体中の匂いを嗅いでいくことを説明した。


「匂いですか。犬獣人特有の行為ですね。でも、いや、可能性はありますね。いやしかし、それだけでここまで上がるとは。トモマサ君の魔素量なら……」


また、カリン先生一人の世界に入ってぶつぶつつぶやき始めた。カリン先生、こうなると長いんだ。考えがまとまるまで、こっちの言葉に全く反応しない。天才と言われる所以だろう。

俺とアズキは、結論が出るまでしばらくの間休憩を挟むことにした。

アズキに入れてもらったお茶を飲んで一息ついたころ、カリン先生が帰ってきた。いや、目の前にいたのだが。


「仮説が立ちましたよ」


話し始めたカリン先生にお茶を進める。「ありがとうございます」とお茶を一口飲んだ後、話を進めだした。

アズキの魔素量が増えたのは、匂いを嗅ぐ行為が原因で間違いないらしい。俺から発せられる匂い=汗が気化したものを間近で大量に吸うことにより、エッチと同じだけの効果を得たのではないかと言う事だった。


「しかし、それだけの体液を摂取しようとなると大変な作業だと思うのですが? 」


「いえ、カリン先生、トモマサ様の匂いは私の活力剤ですので、毎日2回丹念に余すところなく体中の匂いを嗅がせていただいております」


アズキが、うっとりしながら答えた。


「毎日2回も?……トモマサ君、そこまでされてよく我慢できるね。ひょっとして不能? 」


「カリン先生、俺のナニは正常ですよ。いつでもギンギンですよ。俺だってやりたいですよ。でも、12歳の子に手を出すとか危ない人じゃないですか。それに、子供が出来てもまだ責任とれませんし……」


カリン先生が、「いつでもギンギン」と呟きながら赤い顔をそらした。


「言葉の比喩ですから、いつも発情しているわけではないですから……」


いらぬ誤解を与えてしまった。カリン先生も初心なんだから何も言わなければいいのに。


「トモマサ君、14歳でしょう。12歳のアズキさんとなら普通ではないのですか?子供の件もです。貴族の跡取りなら、早く子供を作ることは義務です。14歳の父親などよくあることです。アズキさんも犬獣人ですから13歳で成人です。今すぐにでも立派な赤ん坊を産めると思いますよ。それに、トモマサ君が望まなければ、子供はできませんから」


「へ?子供が出来ない?なんで? 」


「あなたは、本当に常識がないですね。魔素が本人たちの意志を感じ取って阻害するんですよ。なので男女ともに子供を望まない限りできる事はありません。すべての子供は、望まれて生まれてくるのです。誰でも知ってますよ? 」


アズキも恥ずかしいのか赤い顔しながら頷いている。そ、そうなのか。いくらナニしても子供が出来ない?貴族ならよくあること?……いかん俺の心のハードルがどんどん下がっていく。これから俺は、何を頼りに我慢したらいいんだ。


耐えきれるだろうか、俺……。


考え込んでいる俺をよそに、先生とアズキが話を続けていた。


「アズキさん、あなた魔法の授業受けませんか?見た所、ずっとトモマサ君に付いているようですし、生徒が複数いる方が、互いに成長しやすいですから」


「しかし、私は奴隷です。それに獣人は魔法が得意ではありませんし……」


「え、奴隷?メイドではなく?いやいや、聞いてはいけない。守秘義務、守秘義務。……獣人が魔法が不得意なのは魔素量が足りないからですよ。それだけの魔素量があるなら魔法は十分に使えます。将来はもっと増えそうですし。それに、魔法を使えれば、きっとトモマサ君の役に立つ時が来ますよ」


カリン先生の提案に俺も乗ることにした。


「そうだな。どうせ後ろで聞いてるなら、一緒に授業を受けてるようなものだろ。俺が許可するから一緒に受けよう」


奴隷になったのは、対外的なデモンストレーションであって、心まで奴隷になる必要は全くない。出来るだけ、俺と対等であってほしいと思う。俺の役に立つとか別にどうでもいいのだ。


「トモマサ様が、そう仰るなら受けてみたいです」


この日から、魔法授業の生徒が二人に増えた。


〜〜〜


「ところで、その首から下げてるのは何ですか? 」


昼休憩の時に、カリン先生と話していると魔獣の卵が気になった様だ。この露店で買った卵だが、普段から持ち歩いている。ただ、手で持ってると流石に邪魔なので、アズキに卵袋を作って貰って首から下げる様にしている。

俺の説明を聞いたカリン先生は、ため息をついていた。


「また、変な事してますね。魔獣の卵は……」


ヤヨイと同じ事を言われたが、敢えてしていると言うと、諦め顔で愛想笑いをされてしまった。害が無いなら一緒にいても良いと思うのだが、一般的では無い様だ。直ぐに孵化するだろうし良いんだけどね。

いつもありがとうございます。

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