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11.プロポーズ

犬獣人の特徴って耳と尻尾か?を撫でたらプロポーズ!?なんてこった。そんな風習知らないよ。カリン先生、なんで教えてくれないの。犬耳と尻尾触りたかっただけなんだよ。それがプロポーズになるなんて気付かないよ。


「……ごめんなさい」


俺は、土下座していた。謝るしかない。知らなかったんだと許してもらおう。


「トモマサ様、頭をあげてください。謝るのは、私の方です」


「いや、俺の方だ。ごめん。犬獣人の風習、知りませんでした。ただ、触りたくて、耳と尻尾を触りました。本当にごめんなさい」


「…………そ、そうですね。永い眠りから目覚めて数十日のトモマサ様ですものね。風習を知らなくて当然ですね。はは、あまりに嬉しくて一人舞い上がってしまったようですね」


俺が顔をあげると、アズキは涙を流していた。プロポーズされて嬉しくて、でも、立場上断るしかなくて断ったら勘違いだった。12歳の少女には辛すぎる現実だ。

俺の心が締め付けられる。なんてひどい男なんだ。俺の軽率な行動が、目の前の少女に涙を流させている。こんなにも慕ってくれる少女の涙に、俺の心はかき乱された。


「アズキは、俺と……」


結婚したいのか?と口から出そうになったが、止めた。今は、そんな事を確かめる時じゃない。俺がどうしたいか伝える時だ。妻よ、俺は、俺は目の前の少女を守りたい。だから許しておくれ。


「アズキ、俺と結婚してくれ! 」


覚悟を決めて、アズキに告白した。


「……トモマサ様! 」


アズキは、びっくりし過ぎたのか固まってしまった。


「混乱させて、ごめん。なんて言うか、アズキの涙を見て決めたんだ。ずっと守って行くって。……妻の死を知ってすぐこんなこと言ってる俺を信用できないかもしれない。昔を思い出して、妻と比べるかもしれない。でも、今はアズキを守りたい。そう思ってる。だから、もう一度言おう、結婚してくれ! 」


「う、うれじいですぅ~。トモマザ様、どってもうれじいです~。でも、でもわだじは、わだじは……」


アズキが、大泣きしながら何か言っている。俺は座ってるアズキにそっと近づいて頭を抱きしめた。アズキも泣きながら抱きしめてきた。アズキが泣き止むまでしばらくそうしていた。


〜〜〜


「トモマサ様、大変嬉しいのですが、罪が無くならない限り結婚はできません」


落ち着いたアズキが再度言って来た。二人で抱き合ったままだ。アズキは、座ったままなので、またしても胸が股間に押し付けられる。少し落ち着かないが、話を進めた。


「法を変えよう。何なら、『建国の父』として強権をふるっても良い」


「い、いけません。トモマサ様。そんなことをしては、トモマサ様の身の安全が失われます」


すごい勢いで、止められた。そんなにやばいのか。本当に最終手段だな。


「そりゃ、俺だって怖いからあまりしたくない。他に方法があるなら、それを優先するけど? 」


それでも第一優先はアズキの安全だ。そのためなら、ためらうつもりは無い。


「他の方法ですか。法を変える方法は私には分かりません。申し訳ありません」


アズキが、しょぼんとしている。高度に政治的な話だから難しいな。


「二人では、解決しそうにないな。ヤヨイに聞いてみよう」


二人で、ヤヨイの書斎に移動した。


「仕事中にすまんな」


俺は、書斎のソファに座って話しかけた。今回は、アズキも俺の横に座ってもらっている。

二人の様子が違うことに気付いたのか、ヤヨイがにやにやしながら茶々を入れてくる。


「すっかり仲良くなったようね。二人の子供が楽しみだわ」


「子供か、そうだな。いずれは欲しいな」


その言葉に、ヤヨイの目が見開かれた。


「驚いた。本当に驚いた。一体何があったの?どこまで知ったの? 」


俺は、アズキの過去、罪、そして、この国の法について話した。


「そのうえで、俺は、アズキと結婚したい」


「アズキは、どうしたいの? 」


俯いたままのアズキにヤヨイは、優しく問いかけた。


「私は、……トモマサ様が好きです。出来るなら結婚したいです。ですが、罪を償わないと……」


「そう。それで、全てを知った父さんは、どうするつもりなの?強権を発動するつもりなの? 」


ヤヨイは、俺を見て聞いてくる。辛そうな顔をしながら。


「いや、出来るなら、強権は使いたくない。そんな事で変わった国は歪んで、いずれしっぺ返しを食らうと思う。だから、話を聞きに来た。ヤヨイはずっとこの国を変えようとして来たんだろ? 」


ヤヨイは、深いため息の後、聞いてきた。


「父さんは、不甲斐無い私を叱らないの?1000年たっても母さんの理想にたどり着けない私を」


辛そうな、寂しそうな、悲しそうな顔だ。大人になってエルフになって変わってしまった顔だが、なぜか子供のころの顔がフラッシュバックした。ヤヨイが幼稚園ころ、友達と喧嘩して怪我をさせて一人飛び出した公園のブランコに座っていた時と同じ顔だ。俺は、ヤヨイを抱きしめた。子供の体だから何とも頼りないけど。


「叱ることなんて何もないだろ。ヤヨイは、頑張ってるんだから。父さんの方こそ、遅くなってごめんな。これからは、父さんも手伝うから、そんな顔するな」


ヤヨイも俺を抱き返してきた。


「子供のくせに生意気ね。父さんは、アズキとイチャイチャして早く子供作ってくれたらいいんだから。まぁ、どうしてもと言うなら手伝わせてあげるわ」


全く素直じゃない娘だ。幼稚園の頃は、わんわん泣いて可愛かったのに。減らず口を叩いて元気を取り戻したのか、ヤヨイは俺から離れた。


しばらく無言でお茶をすすった後、聞いてみた。


「反対勢力ってなんだ? 」


「それが、馬鹿な貴族がいるのよ。アズキをただただ自分のものにしたいがために動いてる本当のバカ。でも、力のある貴族がバックにいるから無下にもできなくて困ってるのよ」


「他の女の人を紹介したりしてもダメなのか? 」


「他の人ではダメなのよ。アズキの母親に個人的に恨みがあるらしくて。その恨みをアズキで晴らしたいらしいの。本当に愚かとしか言いようの無いバカよ」


愚かなのかバカなのかはっきりして欲しいものだ。まあ、どっちも当てはまりそうなのだが。


「それならアズキは俺のものだ。とか言ったら、退かないかな? 」


俺の言葉に、アズキが真っ赤になっている。


「今の父さんなら余計にちょっかい掛けてくると思うわ。攻撃されたら、し返す。貴族の習性みたいなものね。あ、子供が出来たら退くかもね」


ヤヨイがにやけて言ってくる。


「え、こ、子供は、成人してからがいいかな?結婚も成人しないと出来ないでしょ? 」


「そ、そうですね。通常は、16歳から結婚できます。犬獣人は特例で13歳からできますけど。こ、子供はもう少し後でもいいかなと思います」


アズキは、相変わらず真っ赤なままだ。


「しかし、本当に結婚まで約束したのね。出会ってから、一月ほどでしょ?けしかけたとはいえ早いわね。やっぱりあの巨乳かしら?母さんが少しかわいそうになってきたわ」


けしかけた?気になる言葉が聞こえてくるが、決して巨乳だけが決め手ではない。気持ちいいのは確かだが。


「私の計画はね、あのバカが手を出せないほどに父さんに力をつけてもらって、アズキを守ってもらうつもりだったの」


「アズキを守るために力をつけるのは構わないんだが、それだと裁判は避けられないんじゃないのか? 」


「裁判を避けるのは簡単なのよ。アズキが父さんの奴隷になればいいのよ。それで、時間を稼いで、法を何としても変更するわ」


アズキを奴隷にする?それって駄目なんじゃないのか?


「ヤヨイよ。俺は、アズキと結婚したいんだ。奴隷になどしたくない」


「いや、一時的によ。法を変えたら罪も消えるから奴隷解放して、結婚すればいいでしょ? 」


一時的とはいえ、奴隷になる。それでいいの?と思ってアズキを見ると、


「私は、構いません。トモマサ様の元なら、ずっと奴隷でもいいぐらいです。奥様をずっと思ってられるようでしたし、プロポーズしてもらえるなんて思いもしませんでしたから」


妻一筋でしたよ。アズキに会うまでは。本当ですよ。


「アズキがそこまで言うなら仕方がないけど……」


奥歯に何かが引っ掛かってるそんな気がする。


「それじゃ、早速契約しましょうか」


「え、そんな急がなくても、成人になる直前ぐらいでいいんじゃないのか? 」


「駄目よ。馬鹿貴族への牽制でもあるんだからね。善は急げよ」


奴隷契約が、善な訳ないだろう……。


契約は、本当にすぐに終わった。契約書すでに用意してあるんだもの。名前書いて血判押すだけで終わったよ。本当にこんな契約してよかったんだろうか?そう思ってアズキを見ると、尻尾を振り回し、涙流して喜んでいた。


 奴隷になった人には、奴隷魔法を封じ込めた魔法媒体をつけてもらう必要がある。媒体の形は首輪が多いが、これは単に首輪が一般的で安価なためである。また、奴隷であることが判別しやすくトラブルの回避に役立つ側面もある為でもある。


「アズキにも首輪をするのか?他の目立たないものの方がいいんじゃないのか? 」


奴隷契約したとはいえ、馬鹿貴族への牽制なんだから目立たない媒体にしたかった。アズキのあの細い首に武骨な首輪とか見てるだけで気が滅入るからだ。


「駄目よ。牽制だからこそ、目立つ媒体にするべきだわ」


確かにヤヨイの言う通りなんだよなぁ。首輪は仕方ないとして、せめてかわいらしい物にしたいところだ。


「せめてファッション性の高いもので出来ないかな? 」


「仕方ないわね~。あんまり安物つけても貴族の品を問われるから……これなんてどう?メイド服にも似合いそうだし」


そういってレースをあしらったリングのようなものを持って来させていた。あらかじめ、業者からサンプルを借りているようだ。用意が良すぎるだろ。


「まぁ、これにメイド服なら目立ち過ぎなくていいかも。アズキは、どうだ? 」


「わ、私は、トモマサ様に選んでいただいたものなら、何でも構いません」


顔を赤らめたアズキが、かわいいことを言って来た。二人で見つめあってしまう。


「はいはい、イチャイチャ子作りは部屋でやってね」


ヤヨイにあしらわれる。いや、子作りはしないから。理性が持つ間は。最近怪しいけど……。


「それじゃ、このレースのでいいわね。アズキはこれ着けて。父さん手出して」


装着した媒体に主人の魔素を登録すれば完了らしい。


「制限事項は、特になしでいいわね。それとも命令拒否付けとく?夜のプレイで拒否されないように」


「いらないから。そんなことしないから」


俺は、全力で拒絶した。ヤヨイめ、俺をどんな変態だと思ってるんだ。昔は、ちょっとした下ネタでも過剰に拒絶するうぶな少女だったのに、すっかり変わってしまったな。年月は、恐ろしいな。

いつもありがとうございます。

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