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歴史還元の亡国騎士  作者: mask
白の伝説
64/68

衝突

「敵襲!」

 赤髪の一族の陣に焦りの混じる声が響き渡る。

 それは陣の全てに届くように戦太鼓に変わり第二皇子まで伝わった。

「戦準備を整えろ!」

 第二皇子の号令で陣中の赤髪の一族の兵が忙しなく動き出す。

「敵の勢力は?」

「騎兵部隊と歩兵を載せた荷馬車部隊。数は二千にも達していません」

「歩兵部隊及び騎兵部隊準備完了!」

 赤髪の一族は遊牧の民族のため戦力のほとんどは騎馬部隊であった。その数は九万。既に数だけでも勝っているが、赤で統一された革鎧と兜、朱槍に腰には刃の厚い鉈のような剣を装備している。士気も高く、まさに大陸を蹂躙する精鋭たちだ。第二皇子の近衛を抜いた残りの歩兵部隊五万は顔の見える兜と貧弱な革鎧、そして剣と円楯。顔も青ざめている。明らかに騎兵部隊と違う。

 先に動くのは例の赤髪の一族歩兵部隊。指揮官の怒号のような命令に歩兵部隊が歩きで進む。

 目指すは小高い丘。

 ミリタ大平原では獲得すべき目標は皆無に等しい。だが唯一、白髪の一族の街から一キロのところにある丘が戦場の優劣に関わる要素になっている。

 そのため歩兵部隊は、まず丘に布陣する作戦だった。

 しかし、白髪の一族が先に丘へと進軍していた。

 騎兵と歩兵では騎兵の方が足が速い。当たり前のようにレティシアたちの騎兵部隊が丘へと布陣。

 だから赤髪の一族歩兵部隊の任務は丘の奪還である。

 白髪の一族千五百と赤髪の一族歩兵部隊五万が丘を取り合うために衝突した。

「丘を守れ!」

 丘からレティシアたち騎兵が駆け降りる。荷馬車部隊の歩兵も荷馬車から降りて敵に向かっていく。

 レティシアの得物は片手剣と円楯。他の得物は背中と腰に携えている。

 丘を上がってこようする赤髪の一族の歩兵に片手剣を振り下ろす。

 兜を叩き割り、また振り上げては近付いてきた敵の首を刎ねる。その間も馬の足は止めない。止めた瞬間、引き摺り降ろされる。そうしたら騎兵は一気に不利になるからだ。それを分かっているため白髪の一族騎兵部隊は敵の壁を突き進む。

「ダモン、躊躇するんじゃないぞ!」

 両手剣のため馬から降りたガルシアが敵を蹴散らす。

「今さらしません。アイシアと約束したんです。例え同胞を殺してでも」

 馬上からダモンは朱槍で敵の胸を貫く。

「こいつ!?」

 敵から兜が外れた。

 その髪は黒かった。

 敵は赤髪の一族ではなかったのだ。

「奴隷兵か!」

 赤髪の一族の軍に居たダモンとガルシアは知っている。赤髪の一族は奴隷にした者を兵士にして戦わせることがあった。騎兵部隊が主力の赤髪の一族に歩兵部隊が編入されている場合、考えるべきだった。

「奴隷兵でも向かってくるなら容赦しないぞ!」

 相手も赤髪の一族の犠牲者だとしても今は敵同士。情など湧かなかった。

 敵から抜いた朱槍で今度は殴る。

 周りの仲間も動揺を圧し殺して敵を討ち倒していく。

 敵は士気が低く脆い。

 白髪の一族なら大軍でも容易く蹴散らせた。

 五万が四万、そして三万まで減る。

「ガルシア様は前に言いましたね。白髪の一族を倒すには百万の部隊が必要だと」

「ああ、俺たちは一人一人が一騎当千。つまり千倍の戦力差がない限り負けることはない」

「この状況でもですか?」

 いくら強者とはいえ一人で一千人を倒すことなど不可能だ。

 敵が数を減らすのと同じく味方も倒れていった。

「レティシアは無事か? 見失ったぞ!」

 乱戦状態になり、馬上にいるにもかかわらずダモンからレティシアの姿が見えなくなっていた。

 馬から引き摺り降ろされたのかもしれない。

 ダモンから血の気が引いた。

「ダモン、上だ!」

 ガルシアの声にハッとしたダモンは頭上を見上げる。

「くそが!?」

 空から黒い雨が降り注いだ。

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