港奪還作戦
白髪の一族の街にはキンカンの港がある。
一ヶ月ほど前までは極東軍に、そして今は赤髪の一族によって占拠されていた。
「港の敵には気付かれていないみたいだな」
ダモンは建物の陰から港を窺う。
赤髪の一族との戦闘は昨晩から始まっている。第一目標の戦力の集中化は出来た。次は味方である大陸西側の船団を向かい入れるために港と船を奪還しなければならない。現在、港は緊張状態にあるが、どうやら街の外の砦が襲撃されたという情報は伝わっていないようだ。敵の増援が来ていない今が攻撃のチャンスだった。
「昼に馬鹿デカイ音を鐘楼の仲間に鳴らしてもらうわ。それが合図よ」
隣に立つレティシアの言葉にダモンは強く頷く。
他の場所ではガルシアや白髪の一族の兵士たちが時を待っている。
レティシアたちの家ではマルシアが作戦を執っている
教会ではアイシア、レマたち民間人が籠っている。
皆でその時を待った。
ガンガンガンガンガンーー!!!
喧しいほどに鐘楼の鐘が叩かれる。
「突撃いいいいぃぃぃぃいい!!!」
レティシアの号令に各所の部隊から地面を震わせるほどの鬨の声があがった。
目標は桟橋に停泊している大型船五隻。赤髪の一族に苦渋の選択で奪われた白髪の一族の生活を支えてきてくれた大事な船。
それを取り戻さなくてはならない。
五百ほどの白髪の一族の兵士が港に雪崩れ込む。
「敵だ! 応戦しろ!」
港を守っていた赤髪の一族、数は倍の千以上。
二つの部隊は衝突する。
「はあああああッ!」
レティシアは背負っていた向槌を敵に振りかぶる。敵の槍をギリギリでかわし、鎧ごと打ち砕く。向かってくる敵全てを叩き落とす。
傍ではダモンも戦っていた。朱槍を振るい、敵を薙ぎ払っていく。それに仲間の白髪の一族の兵士も続く。
戦力では敵側のほうが遥かに上だ。
だが白髪の一族は神の使いと呼ばれし者たち。戦闘民族である赤髪の一族にも負けないほどの武力と頑丈な身体を有していた。
少女であるレティシアも例外ではない。その腕力で、脚力で、いとも容易く港を駆け抜けた。
だがーー
「不味い! 船が港を発ち始めてる!?」
一隻、また一隻と目標である船がゆっくりと動き始めていた。このまま逃げられて救助に来てくれるはずの大陸西側の船と接触されては困る。もしそこで戦闘が始まり救助が間に合わなくなれば西から来る赤髪の一族の本隊が街を襲うだろう。そうなればひと堪りもなかった。大切なものたちが全て蹂躙されてしまう。
「ダモン! 他の皆もついてきて! まだ動き出してない船を取り返す!」
レティシアは大振りの必要な向槌を仕舞い、片手剣と円楯を装備する。船へと続く桟橋を抑える敵を斬り捨て海に落としていく。空いた桟橋を駆けて渡しを上がり船の甲板へ。
「私たちの船を返してもらうわよ!」




