前哨戦
「敵襲! 敵襲!」
見張りをしていた赤髪の一族の兵士がけたたましく鐘を鳴らす。
「白髪の一族がこの砦を狙ってきたぞ!」
真夜中に叩き起こされた赤髪の一族の兵士たちは武器を取り、態勢を整える。
「敵は正面。突っ込んでくるぞ!」
「弓兵は姿が見え次第やれ!」
砦の壁上で弓兵が構える。だが――
「誰も来ねえぞ」
敵の来るはずの方角からは白髪の一族は現れず、パチパチと爆ぜる松明の音以外静かだった。
「おい! 誰も居ねえじゃねえか!」
見張りに吼える赤髪の一族の兵士たち。
「何言ってる!? 炎が迫ってきてるじゃねえか!」
見張りの指差す方向、まだ少し遠いが松明の炎が近づいてきている。松明の数からして敵は二百ほど。対して赤髪の一族の兵力は五百。小さい砦を守るには十分で圧倒的な戦力だ。
「あれは馬か? いや、牛?」
目を凝らすと松明の下で牛の姿が見えた。そしていくつもの松明を縛られた牛車。
数え切れないほどの牛と牛車が砦に攻めてくる。そこに人は居ない。
「まさか!?」
後ろで鬨の声が上がる。
「白髪の一族が砦の門を破ったぞ!?」
松明の炎に集まった赤髪の一族の裏をかいた白髪の一族は手薄になった方角から砦を襲撃。
その晩、計十か所の赤髪の一族の砦が白髪の一族によって落とされた。そして周辺の村から白髪の一族の民は逃げ出し、翌日の昼には全ての白髪の一族が街に集った。




