涙の出発
「行ってきます」
笑って言ったのは赤髪の一族の結婚衣装を着たアイシア。
街の門では白髪の一族の人々が複雑な表情で彼女を見送りに来ている。
「アイシア、すまない。お前を道具のようにしてしまった」
悔しげに俯くのはアイシアの父であるガルシア。
「いつでも帰ってきて良いんだからね」
泣かずと笑みを作る母のレマ。
アイシアは親しかった人々と握手する。その度に溢れそうになる涙。でも彼女は泣かない。泣いてしまっては皆を困らせてしまうから。
「レティシアお姉ちゃんは?」
姉のマルシアに別れを告げたとき、もう一人の姉が居ないことに気付く。
「出掛けてるよ。姉さんは一番悔しがっていたからね。顔を会わせづらいんだ」
「レティシアお姉ちゃんのせいじゃないのに」
アイシアは少し寂しかった。いつもワガママで頑固な姉だったが、可愛がってくれていた。
赤髪の一族の土地に行ってしまっては、もう会えないかもしれない。
最後に一度だけ会いたかった。
会って、ごめんなさいと、ありがとうを伝えたかった。
頑張れ! と抱き締めてもらいたかった。
「レティシア、お姉ちゃん……!」
我慢していたはずの涙が溢れた。
目頭が熱く、前が見えない。
「行こう、アイシア」
ダモンが悲しみで震えるアイシアの肩に手を置く。
アイシアは頷くと涙を何度も拭って目を腫らしーー
「ありがとうございました」
笑った。




