〈白の三女②〉
「普通ですか?」
ダモンの言葉にアイシアは目を丸くする。
「ああ、そうだ。今は世界中で戦争している時代だ。知恵のある者、武力のある者、勇気のある者たちの全ての能力が人殺しに使われている。そしてそれに率いられた民兵たちは命を惜しみなく国へと捧げる。そんな戦い方で良いのかと俺は思ってる」
「あ、あの。すみません。お話が難しくて私では分からないのですが……」
「え? あ、俺も自分で何言ってんだか」
ダモンは苦笑する。
「ええと、だな。何が言いたいかというとアイシアは普通だから兵士を率いる将にはならない。それに戦嫌いなら戦場に憧れを抱かないから兵士にもならない」
「それでは私は何も出来ないということですか?」
自分の無力さを改めて語られたようでアイシアは落ち込む。
その肩をダモンは力強く叩く。
「アイシアは先生になりたいんだろう? それならば君のやるべきことは姉たちのように武器を取ることじゃない。その手には筆と紙を握るべきだ」
ダモンはアイシアの手を優しく握る。
「そして、いつか平和になった世界で君は子供たちに教えるんだ。私たちはたくさんの戦火で土地を焼いたが、これからは黄金の穂が垂れる土地で幸せに暮らそうと。これは俺のような兵士にはできない。君だけの役目だ」
「私だけの、役目」
アイシアは呟くと、強く頷いた。
「私、頑張ります! いっぱい勉強して立派な先生になって見せます!」
そこでアイシアはふと、何かに気付くと顔を真っ赤にする。
「だ、ダモンさん!? そろそろ手を放していただけますか……」
「え? あ、すまない!」
ダモンはアイシアの手を放す。その耳は赤く染まる。
二人の間に気まずい空気が流れたが、その空気はとても優しく、暖かかった。




