〈白の三女①〉
「あ、あの、ダモンさん」
「何か用か、アイシア?」
いつも誰かの陰に隠れてしか会話したことのなかったアイシアが面と向かってダモンに話し掛けた。
「甘いものは、お好きですか?」
「え? ああ、好きだけど」
「良かった!」
アイシアが強張っていた表情を緩める。
「お母さんと作ったんですけど、ダモンさんにもって思いまして」
アイシアが背に隠していたのは両手に収まる籠一杯の焼菓子だった。
「これは?」
「クッキーです。小麦とお砂糖、ナッツで作った海の外から伝わった食べ物なんですよ」
ダモンはクッキーを一つ摘まむと口に放り込む。
「少し硬い食べ物だが甘くて美味しいな」
「喜んでもらえて良かったです」
そこでアイシアの笑みが翳った。
「ダモンさんは強いんですよね?」
「レティシアと同じようなことを訊くんだな」
「いえ、レティシアお姉ちゃんとは違う意味です。レティシアお姉ちゃんは相手が強ければ腕試しが出来ると喜びますが、私は自分の弱さを改めて感じてしまうんです」
アイシアは悲しげに目を伏せる。
「レティシアお姉ちゃんはワガママで頑固、だけど何事にもめげず力強い。マルシアお姉ちゃんはあまりお喋りしてくれないし目の障害があるのに頭が良くてお父さんを支えている」
レティシアは俯き、苦し気に言葉を発する。
「だけど私は平凡。姉妹の中で一人だけ何の取り柄もない普通の子」
アイシアは顔をガバッと上げる。
「だから私も強くなりたいんです! ダモンさん、どうすれば強くなれますか? どうすれば皆の役に立てますか?」
その表情は必死だった。
だからこそダモンは答えた。
「普通じゃダメなのか?」




