〈白の次女②〉
「弱いね、ダモン」
「だから言っただろう」
十戦したが一度もダモンはチェスで勝てなかった。
「俺には兵を指揮する才がないのかもな」
苦笑するダモン。マルシアは小首を傾げる。
「何言っているんだい。チェスでは本当の指揮力は計れないよ」
「指揮の練習だって言ったのは君だ」
「あくまで練習。本当の戦場は広くて天から盤上のように見下ろせない。そして人間の兵士は駒じゃないし、戦場だって変わる。ダモンなら知っていることだろ?」
「じゃあ何でチェスをしたんだ?」
マルシアは再び小首を傾げる。
「言ったじゃないか、私が暇だからだよ」
悪びれずに言うマルシア。
「期待には応えられたか?」
溜め息を吐くダモンにマルシアは頷く。
「うん、楽しかったよ」
そこでマルシアは眉間を指で押さえる。
「どうした? 気分でも悪いのか?」
「すまない。限界が来たみたいだ」
マルシアは布を取り出すと赤い瞳を覆うように頭で縛る。
「これで大丈夫だ」
「それで生活できるのか?」
「出来ない。私は神様じゃないからね。普段はお母さんかアイシアが世話をしてくれる」
「辛いか?」
まるで盲目の憐れな少女にダモンには見えた。
「まあ、少し引け目や負い目は感じる。だからこそ私は学ばなければならないんだ。そしてそれを次の世代に繋いでいくのが私の義務だから」
「次って大袈裟だな。君はまだ十三才。自分のことを考える年だ」
大きな夢過ぎるとダモンはマルシアを茶化す。
だが、マルシアは怒りも恥ずかしげに笑いもしなかった。
ただ無表情に淡々と彼女は言った。
「白髪の一族で『天性の才』を持つ者は短命なんだよ」




