〈白の次女①〉
「暇そうだね」
昼食後、部屋で何もすることもなかったダモンが自分の槍の手入れをしていたときだった。マルシアに声をかけられる。
「珍しいね。君が俺に声をかけるなんて」
「そうだね。いつも私はお父さんと一緒に居ることが多いからね」
「今日は付き添わなかったのか?」
「今日は少し調子が良くなくてね」
「具合でも悪いのか?」
「少し前から頭痛がするようになったのさ。お父さんは『天性の才』の影響だって言っていたけど」
『天性の才』。ダモンはガルシアから聴いた話を思い出す。
「白髪の一族の一部の者に現れる力だったな。マルシアもそうなのか?」
「私は『天性の瞳』って言われた。他の人より目が良すぎる力」
「良すぎる?」
「夜目が利きすぎて昼間の日光だと視力が低下するし、遠くが見えすぎて疲労のせいで頭痛が起こりやすい」
「それは大変だな」
「大変だよ。だからチェスをしよう」
「……どうしてそうなるんだ?」
「私が暇だからだ」
「レティシアとアイシアは?」
「姉さんとアイシアは弱くて面白くない。それに姉さんに至っては未だにルールを覚えられないし。まあ姉さんは外で走り回っている方が姉さんらしい」
「俺も得意な方じゃないぞ」
「良いんだよ。私は相手がどんな戦術を立てるのかが知りたいだけだから。それにダモンは軍人でしょ? そのうち兵の指揮を執るかもよ。その練習だって思えば良いさ」
「なるほど。じゃあ少しやってみるか」
「そう来なくちゃ」
ダモンとマルシアは盤上を挟んで対峙した。




