〈白の長女④〉
「ダモンどうしたの?」
無事にレティシアが戻ってきた昼時、街の近くの原っぱで横になっていたダモンの顔をレティシアが不思議そうに見下ろす。
「何でもないよ。そういう君は何してるんだ? また、ガルシア様に怒られるぞ」
「もう十分怒られたよ。ねえ、暇なら一緒に遊んでよ!」
「ダメだ。今日は大人しくしてるんだ」
「ええ~。ダモンのケチ」
不貞腐れたレティシアはダモンの横に寝転がる。
「戻らないのか?」
「戻ったってすることないし」
「お母さんの手伝いがあるだろ?」
「アイシアがやってるもん。あの子、一番頑張り屋さんだから」
「ならガルシア様に遊んでもらったらどうだ?」
「お父さんはマルシアと難しい話しててつまんない!」
「なら、今日はじっとしてろって神様が言ってるんだよ」
「そんな神様居なくて良い!?」
手足をばたつかせるレティシア。
「あーそーぼーよ~!」
「君はもう十四だろ? 女性らしくしたらどうだ?」
「女性らしく? 例えば?」
レティシアの言葉に答えようとしたダモンだったが、すぐには出ない。
「……レマさん、そうだ! レマさんのような女性だよ。大人っぽくて淑やかで包容力のある女性」
「? ダモンはお母さんみたいな人と結婚したいの?」
「男ならそういう人が憧れるってだけで」
「ダモンもそうなの?」
「ぐっ。それは……」
ダモンは再び言葉を詰まらせる。質問も質問であったが、ダモン自体が戦争と赤髪の一族の将来にしか考えたことなかった。自分の未来で寄り添ってくれる相手などダモンには想像も出来ていなかったのだ。
「もし、ダモンがお母さんみたいな女性が好きなら無理だね」
レティシアは身体を起こす。
「だって、私は私だもん。変われないし、自分を変えたくもない。それにーー」
レティシアは顔にかかった長い白髪を払い、ダモンに微笑む。
「ダモンが苦しそうに悩んでいるのに、何も出来ない私じゃダモンのお嫁さんにはなれないよ」
悲しげに、そして悔しそうに、だけどそれを隠そうとするレティシアの笑みをダモンは
「綺麗だ」
と、思ってしまった。




