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歴史還元の亡国騎士  作者: mask
南部動乱
32/68

〈家族を救え〉

~副都~


「信用していただけましたか?」

 マリーは副都の宮廷の玉座に座る筋骨隆々の大男ーー王叔父殿下の前で跪いていた。

「そなたの言葉でも俄に信じられんな」

「信じてもらうしかありません。ファラスの勝利のためには」

 王叔父殿下は唸っていたがーー首を振った。

「協力出来ない。これから大戦の準備をせねば」

「……そうですか」

 マリーは立ち上がる。そして腰の鞘からナイフを抜いた。

 すぐに反応したのは王叔父殿下の近衛たち。王叔父殿下の周りを固める。

「何のつもりだ?」

「家族のためです」

 マリーは切っ先を王叔父殿下に向ける。

「不退の長城か?」

「そのために私は戻ってきました」

 互いに睨み合うマリーと王叔父殿下。そこに一報がもたらされる。

「報告! 味方が不退の長城より帰還しました!」

 マリーは駆け出した。

「アーク、リーシア、帰ってきた部隊は!?」

 宮廷の出入り口で待っていたアークとリーシアに問う。

「まだだ。私たちも今知ったばかりなのだ」

「でもマリーの家族も居るかもしれないんだろ? なら向かおう!」

 三人は城門を抜け、城下へと出る。

「こんなに!?」

 三人が見たのは城下の民に世話をされている疲労と負傷でボロボロの数え切れない数の将兵。

「この中に皆が」

 マリーは城下を駆け巡り、兵士たちを見て回った。

「マリー殿!」

 彼女を呼んだのは一人の中年の騎士。

「あなたは!」

 マリーには面識があったファラスの王位継承戦で共に戦ったのだ。

「私の兵を、不退の長城の兵を知りませんか?」

 すがりつく勢いのマリー。中年の騎士は苦しげに首を振った。

「シュテルツ家家臣は現在も不退の長城で戦っている。我らは逃げてきたのだ」

「まだ生きているのですね」

 見捨てた自分を叱責すると思っていた中年の騎士はマリーが安堵したことに驚く。

「よく、お伝えしてくださいました」

 マリーはそう言い残すと再び駆けた。

「二人ともついてきて!」

 マリーはアークとリーシアを呼び止めると兵たちを纏める。

「良いのか? 私たちだけで」

「王叔父殿下は助けてくれない。私たちだけでやるのよ」

「俺たちの兵は二千。敵は総数二十万。死ぬなよ?」

「あなたこそ」

 三人は笑い合いながら兵を率いて不退の長城へ馬を駆けた。


「マリー卿は行ったのか?」

「はっ、先ほど西へ」

 玉座に腰を下ろした王叔父殿下は衛兵の報告を聴く。

「不退の長城か。もう保たないだろうに」

 若く優秀な騎士であったマリーが蛮勇と犬死を取るとは驚きだった。彼女なら戦略を理解してくれると思ってくれたからだ。

「仕方ない。副都決戦の準備を急がせろ。不退の長城が落ちるのも時間の問題だ」

ーー聞こえますか?

「何か言ったか?」

 王叔父殿下は近くで声が聞こえたので傍に居る衛兵に声をかける。

「いえ。何も」

 不思議そうな表情で首を振る衛兵。

「そうか。気のせいだな」

 王叔父殿下は伝令に向き直る。

「副都の全兵士に伝えろ。良いな」

 短く答えた伝令がーー口から血を吐いた。

「どうした!?」

 目の前の光景に瞠目する王叔父殿下。倒れた伝令の安否を確認するため立ち上がった彼は肌を焼くような熱気を感じた。

「何だ……これは!?」

 一度瞬きしただけだった。それだけで世界が変わった。

 熱気の正体は至る所から燃え上がる炎だった。炎は王宮内の壁や床の装飾を燃やし、勢いを強めていた。

「!?」

 気づけば王叔父殿下は血の付いた剣を抜いていた。彼は誰かを斬っていたのだ。足下で倒れている兵士が、それだろう。

「殿下! 急いで、お逃げください!!」

 彼の衛兵ーー数人が唐突に現れたガイナス兵と斬り結んでいる。

「ここは我らが食い止めます!」

 いつの間にか攻められていることに王叔父殿下は唖然としていたが、すぐに表情を引き締めた。

「我だけが逃げるわけには、いかん!」

 王叔父殿下は剣の柄を強く握りしめガイナス兵に突貫した。

「うおおおおおッ!!!」

 武に秀でた王叔父殿下は強かった。集団で迫り来る雑兵など、ものともしなかった。

 だが、いくら強くても炎は彼の身を焼き、酸素を奪っていった。

 ついには王叔父殿下は膝を付いた。

「ガイナスの奇襲に気付かぬとは」

 意識が朦朧とする中、誰かが王叔父殿下の前に立った。

 自分を討ち取る相手を見たかった王叔父殿下は顔を上げてーー再び瞠目した。

「この世界は本物です。今だけは」

 王叔父殿下が見たのは異彩色の髪と瞳の幼い少女だった。

「この世界は、あなたが副都決戦を選んだ結果です」

「我が選んだ?」

 王叔父殿下は目の前の人物を誰何するより、相手が自分に何を伝えたいのかが気になった。

「はい。不退の長城を見捨て、副都に籠城したファラス軍は数倍のガイナス軍に陸と海を押さえられます。包囲で長期戦に持ち込んだガイナスは集めた重砲で壁を破り、津波の濁流のように押し寄せてーー」

 血だらけのガイナス兵が異彩色の少女の隣に立つ。

 異彩色の少女は王叔父殿下を指差す。

「あなたは討たれました」

 ガイナス兵が振り下ろした剣が王叔父殿下を斬り殺す。

 床に倒れた王叔父殿下は声を聞く。

「信じるかどうかは、お任せします。ですが今の痛みが、苦しみが、喪失が再び繰り返されないことを祈ります」

 王叔父殿下は床に流れる自分の血を眺め、死んだ。


「信用していただけましたか?」

 マリーは副都の宮廷の玉座に座る筋骨隆々の大男ーー王叔父殿下の前で跪いていた。

「……何の話だ?」

 王叔父殿下は混乱する頭を振る。

「ですから今の過去改変の話です」

「ん?」

 その話は先ほどしたはずだ……我が死んだのは"いつ"だ?

 身体に触れてみる。生きている。

「王叔父殿下?」

 呆然としている王叔父殿下にマリーは声をかける。

「マリー卿。お主は副都より不退の長城で戦うのか?」

 王叔父殿下の言葉の真意が分からなかったマリー。だが強く頷く。

「兵と物資さえあれば不退の長城は落ちません」

「二十万を超える大軍らしいが」

「丸い壁の副都なら、いざ知れず。地平線まで続く不退の長城を囲めるはずもなく」

「大砲で壁を崩されるかもしれん」

「シュテルツ家は騎兵の名家。撃たれる前に蹴散らして見せましょう」

「……そうか」

 自信に満ちたマリーの表情に王叔父殿下は折れた。やはりマリーは優秀なのだ。

「良いだろう。すぐに兵と物資を送ろう」

「ありがとうございます!」

 二人は微笑んだ。まるで本物の父娘のように。

「ん? 隣の女子(おなご)は?」

 気付いたらマリーの隣に異彩色の髪と瞳の幼い少女が立っていた。

「王叔父殿下は見えるみたいですね! 彼女こそが時間を跳べる力を持つリオンです」

「お初に御目にかかります。リオンと申します」

 紹介されたリオンがワンピースの裾を摘まみ、一礼。

「お主、どこかで?」

「あなたの未来のどこかで」

 リオンは微笑んだ。


「まさか、王叔父殿下が協力してくれるなんて。副都決戦を諦めたのかしら?」

 副都に大量の兵と物資をわざわざ集めたのに、それを不退の長城に送ってしまうなどマリーには不思議だった。結果オーライではあるが。

 と、いうか、リオンが再び姿を消した。神出鬼没な彼女は一体……?

「まあ良いわ。どっちにしろ援軍が不退の長城に到着するには時間がかかるものね。急がないと」

 王宮から出たマリー。彼女と擦れ違うように兵士が一人、王宮へと駆けていった。

「伝令かしら?」

「おい、マリー!」

 アークが呼ぶ。

「不退の長城から撤兵してきた将兵が、ここに向かってるって!」

 まさか、と思い、マリーは駆け出した。だが彼女が探し求めた人々は居なかった。


 陽が沈みかけた頃、副都より先遣隊が発った。アーク、リーシア、マリーを含め数は一万ほど。その後ろには数え切れないほどの荷馬車を率いる輜重隊。

「即日で、これだけ動かせるなんて。王叔父殿下は素晴らしい御仁なのだな」

 リーシアが素直に感嘆する。初動で大軍を動かせるかどうかは将の器量による。そして第一陣が一万なら副都には、どれ程の戦力が抱えられているのだろうか?

「そろそろ野営が必要ね」

 マリーが見た方向では半刻も進まないうちに太陽が隠れ始めていた。

「でも今夜は夜行軍。斥候の許可を取ってくるわね」

 マリーはアークとリーシアから離れて先遣隊を率いる大将にかけあう。すると、あっさりと許可が出たのでマリーは〈百騎兵〉の手勢を散らせて偵察に当たらせた。

 陽が沈む。数人に一人の兵が松明を掲げ、闇を照らす。

 鎧や衣の擦れ、地面を踏み進める音しか聞こえない。とても不気味だった。

「静かなのは良いですけど。なんだか怖いです」

 アークの後ろで馬を進めていたルナが声を漏らす。

「確かに。いくら松明を燃やしても遠くが見えないからな」

 アークも同意する。

「マリーは大丈夫だろうか? いくら夜目が利くとはいっても危険だろう」

 リーシアの言は確かだった。何もない平原の暗闇を自分の目で、馬を走らせながら情報を得るのだから、並大抵のことではない。

 リーシアの不安は募るばかりであった。


 だが仲間が心配しているというのにマリーたち〈百騎兵〉は悠々自適に平原を駆けていた。なぜなら、副都から不退の長城までのここら一帯彼女たちの庭と言っても良い土地だったからだ。

 松明を掲げず、夜目だけで平原を探り、仲間を見つけては情報交換をして頭の中の地図に自分達の位置を記していった。

「今のところ敵影はなく、この辺りに森林はありません。伏兵の可能性は少ないでしょう」

 マリーは集まった情報を大将に報告する。

 大将は頷くと暗闇の中、部隊が進路を違わないように大声で先導した。

 そして二日後の朝、ファラス南部へと広がる大地への進路を塞ぐ、視界いっぱいの長大な壁を先遣隊は見た。

「あれが不退の長城!」

 アークは思わず声をあげた。

 不退の長城はファラス南部と副都への道を寸断する南北八十キロの壁と九つの拠点が合わさったシュテルツ家の城だ。

「南からユトラの港、第一砦、第二砦、第三砦、シュテルツ屋敷砦、第四砦、第五砦、第六砦、アルレリッタ屋敷砦。それぞれに三千人ほどの民が居る」

 マリーが説明していく。

「その九つの拠点を繋ぐのは不退の長城の由縁である二重の壁」

 砲撃音が先遣隊まで届く。

「まだ戦いは続いてる! 皆、頼んだわ!」

 マリーの声に先遣隊は応えた。


「第二砦、陥落!」

「第五砦、敵の手に落ちました!」

 二人の兵士の報告にネルシーは煤けた顔で笑った。

「報告、ご苦労様……お休み」

 報告した二人に兵士はネルシーに笑い返すと、床に倒れた。その背中には何本もの矢が突き刺さっている彼らを見下ろして、ネルシーは枯れていたはずの涙で自分の頬が濡れていることを知った。

 私は、まだ仲間のために泣けるのだと。

「第二砦、第五砦に続く門を閉じて! シュテルツ屋敷さえ落ちなければ、私たちは負けないわ!」

 ネルシーは涙を拭い、指示を飛ばす。

「ネルシー様!」

 息を切らせた兵士がネルシーの足下で転ける。

「大丈夫!?」

「ネルシー様、あれを!?」

 新たな敵が来たのかとネルシーは西を見た。

 だが兵士が指差したのは東だった。

「東から……味方……?」

 空腹のせいで思考が追い付かなかった。

 ネルシーは遠くを見ようと両目を細めたが、迫り来る部隊は未だに遠く、疲労のせいで焦点が合わない。

「誰か! 単眼鏡を持ってきて!」

 自分の単眼鏡は敵の刃でレンズが砕かれてしまったので周りの兵士に叫ぶ。

 だが必要がなかった。

 

 ダーン 


 東から響いた銃声と風に流される硝煙。この距離では、当たるはずもない銃撃、視界の妨げにもならない白煙。本来なら無意味な無駄弾。

 だがネルシーには、それだけで分かった。

 肩に掛けていた短弓を外し、矢筒から矢を抜いて、天に向けて射った。


 キイィィーン

 

 矢から発せられた甲高い音が戦場を支配していたはずの砲声すら貫いた。



「応えた!」

 ライフルド・マスケットの引き金を天に引いたマリーは思わず頬を弛ませた。

「ネルシーね! 彼女が居るわ!」

 興奮するマリーと〈百騎兵〉の近衛兵たち。だが周りの兵士はポカーンとなったり、怪訝そうに彼女たちを窺っている。

 マリーは〈百騎兵〉を率いて先陣を駆ける。他の部隊も彼女に続く。

「東門を開いて!」

 ネルシーの指示にシュテルツ屋敷砦の東門の重厚な門扉がゆっくりと開かれる。

「マリ姐!」

 壁上よりかけられた声にマリーはライフルド・マスケットを握っていた手を振った。

 そして先遣隊は無事に不退の長城への入城を果たした。

「お帰り、マリ姐!」

 馬から降りたマリーに一番に飛び付いたのはネルシー。

「帰ったわ。皆、よく戦ったわね!」

 シュテルツ屋敷砦を守っていたシュテルツ家の兵士たちが歓喜に咽び泣き、〈百騎兵〉の近衛たちと無事を讃え合う。

「ネルシー、イリーダたちは?」

「戦場に出てる。敵の大砲を潰しに行ってるよ」

 二人は壁上を駆け登る。他の騎士たちも従う。

「囲まれてるじゃない!?」

 騎士たちが見たのは大砲の周辺で戦闘を行うシュテルツ家の兵士たち。それを指揮しているイリーダも戦闘に加わって状況を打開しようとしているがガイナス軍に徐々に追い詰められている。

「出るわ! ネルシー、あなたも付いてきなさい!」

「分かったよ!」

 マリーは〈百騎兵〉を率いてシュテルツ屋敷砦を出陣した。


「退けえええ!」

 イリーダは重装の鎧の上から意識をなくした仲間を肩に抱える。

 もう何度目か分からない砲兵襲撃だった。これを成し遂げなければ、いくら不退の長城とはいえ瓦礫と化してしまう。

 だが今回は疲れか、それとも同じ戦い方をしていたからか敵の奇襲に対応できなかった。

「ぐっ!?」

 マスケット銃の弾丸が兜を掠めた。彼女を狙ったのは砲兵を守る一人の軽装ガイナス兵。

「マスケット銃の精度で散兵だと! あり得ない!?」

 マスケット銃は命中精度が低いから集団で横隊を組んで戦うのだ。散兵で戦えるわけがない。

 これじゃあ、まるでーー

「お嬢みたいだ」

 あの方は天才だった。彼女は馬で駆けてでも的を撃ち抜いていた。そう、あの人なら。

「お嬢、また会いたかったです。後は……頼みました」

 イリーダは先に逝ってしまった仲間を肩から下ろすと騎兵槍の柄を強く握り締める。

「私はシュテルツ家の重臣イリーダ・アルレリッタ。功を望む者は私に挑め!!」

 イリーダは七十人ほどの無事な仲間と共に砲撃を止めるために、傷ついた仲間を逃がすために突貫した。


 キイィーン


 ネルシーの鏑矢が響いた。先ほどに続いて二度目。

「イリーダ!」

 求めて止まなかった声が聞こえた。

 敵とイリーダの間に割って入るようにマリーが敵を襲撃した。

「イリーダ! 逃げるわよ!」

「お嬢!?」

「何をボケ~としてるのよ? とっとと離脱しなさい!」

 マリーは腰の鞘からナイフを引き抜いて敵と刃を交える。

「お姉ちゃん! マリ姐が来てくれたんだよ!」

 ネルシーが馬上から矢を放ち、敵を討っていく。

「〈百騎兵〉撤退!」

 マリーの口から発せられた言葉にイリーダは心が踊った。

「ははは! 〈百騎兵〉揃いましたな」

 〈百騎兵〉の旗を担いでいたマーグがイリーダの隣で笑う。

「全員、生きて壁に戻りなさい!」

 マリーの声に応えるように鬨の声が上がる。

「先に行くなよ」 

「共に戦うと言っただろう」

「私も助勢します」

 アーク、リーシア、ルナが部隊を率いて合流を果たす。

「来てくれるのが分かってたからよ」

 マリーは三人に笑い返す。

「さあ逃げるわよ!」

 敵を蹴散らしながら部隊は不退の長城への撤退を成し遂げた。


 不退の長城に戻り、負傷兵の治療と炊き出しが行われた。

「お嬢!」

 兜を脱いだ涙目のイリーダにマリーは抱きついた。

「イリーダ、苦しい。鎧が痛い!」

 マリーは苦笑する。

「マリー? マリー帰ってきたのね!」

 黒装束の女性がマリーを見つけて顔を輝かせる。

「お母様、お久し振りです!」

 イリーダから抜け出したマリーは母親のレジーナと抱擁を交わす。

「すごい仲良しだな」

「確かに」

 アークとリーシアは家族水入らずにするために離れて見ていた。

「私も早く兄様に会いたいです」

 どこか懐かし、羨ましがるように家族団欒を見つめるルナ。

「大丈夫だ!」

 アークはルナの背を叩く。

「ファラスを取り戻せば、また会える」

「はい!」

 ルナは笑った。この人と出会えて良かったと。

「ん?」

 リーシアが何かに気付き、天を仰ぐ。

「どうしたリーシア?」

 怪訝そうなアークにリーシアは返す。

「急に風が冷たくなった」

 風? アークやルナ、周りの兵士が同じように空を見る。

「報告!」

 シュテルツ屋敷砦の壁上に居た兵士が叫んだ。

「雲が! 分厚い雲が南より参ります!」

 騎士たちは壁上へと登り、南の空を見た。

 兵士の言う通り、天高く、そして厚く、表面は白いのに見下ろす面は黒く、地上を薄闇に染めていた。

 普通なら、この光景は凶兆で身を竦ませて心を沈めるだろう。

 だがシュテルツ家は違う。

「急いで火薬を閉まって! 武器庫から槍と弓を出して!」

「伝令は他の砦に連絡を入れろ! 騎兵部隊は装具点検だ!」

「弓の弦には油を塗って! 破城槌を引っ張り出してきて!」

 マリー、イリーダ、ネルシーは指示を飛ばす。

「何をする気だ?」

 迅速に動くシュテルツ家の兵士に唖然としながらもアークが問いかけた。

「決まっているでしょう? 不退の長城を取り戻すのよ」

 マリーは不敵に笑った。

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