〈極東の軍師〉
未だ勢力差が大きく反撃に勢いがつかないファラス軍。そして仇敵との再びの戦い。
彼らはガイナスを押し返す作戦をその手に掴めるのだろうか。
ファラス軍はミリタ大平原を抜けると軍勢を一度止めて過去へ行く部隊を編成した。
部隊はマリーとリーシアを含む五千の将兵。アークは未だに療養中。この部隊が過去へ跳ぶ。他の部隊は王城を目指す。
過去へ向かう部隊のなかで他の者以上に決意を固めている騎士が居た。
ザラスだった。彼はムガノ城の最後を知っているらしい。
ザラスは短く刈り上げた黒髪を掻きながら話始める。
「俺はムガノ城の援軍として編成された部隊に居た。だが道中で敵の襲撃にあって撃退するもそれの影響でムガノ城に遅参したときには城は燃え尽きて三万を超えるガイナス軍に何も出来ずに退いた」
悔しげに呻くザラスの話を聴き新たな目的ができた。援軍を阻む敵も対処しなければならない。
リオンが将兵たちの中心に立ち、いつものように指示を出す。その中に村の少女も居た。今回は彼女の過去へと跳ぶ。恐る恐るリオンに従い瞳を閉じ、再び開いたときには彼女の生まれ育った村に居た。
「リリル!」
女性の声でそう呼ばれた村の少女は振り向き目を見開いた。
「パパ、ママ!」
リリルは両親に駆け寄り強く抱き締められた。
その様子にマリーは泣きそうになるが顔を引き締める。だが笑みがこぼれてしまった。
「部隊を統べる方はどなたでしょうか?」
村長と思われる白髭の老人が歩み寄ってきた。
そういえば部隊の長を決めていなかった。
「マリー、君が良いだろう。君は名を知られているし、これは君の作戦だ。わたしは君に従う」
リーシアに背を押されマリーが前に出る。
「わたしよ」
一七の少女が長として出てきたことに村長は驚いたが顔を見ると得心した。
「〈百騎兵〉のマリー様、ですかな?」
今度はマリーが驚く。リリルが彼女のことを知らなかったので民には知られていないのかと思い自信を無くしていたのだ。
「何度か拝見したことがございます。して、わたしどもの村にどのようなご用件で?」
「ガイナスが迫っているわ。わたしたちは村を守るために来たの」
村人たちが喜びに湧く。
「ありがたいです。西から村を捨てた者たちが来る度に村の者たちは恐怖に震えておりました」
「その者たちと逃げなかったの?」
村長は首を振り、笑う。
「わたしどもは残ることに決めたのです。わたしどもが村を捨てれば、それはファラスを失うと同じ。故郷がなくなるのは耐えられません。騎士さまが来るまで村を守ろうと誓ったのです」
村長の言葉に周りの村人たちが何度も頷く。
騎士たちは彼らを見て心から誓った、絶対守り抜くと。
ファラス軍は部隊を千づつに分けて、それぞれの村に向かった。マリーとリーシア、ザラスはリリルの村の守備に就く。
村の人口は百ほど村としては小さいが千人なら村全体を守れる。村の周りには高さ二メートルほどの柵があるが相手は獣ではなく兵士だ。攻撃を受けたら余り保たないだろう。その外側には田んぼがあり穂はすでに垂れている。この戦いが終われば収穫ができるかもしれない。
村人は〈教会〉の小さな礼拝堂と村長の家に避難している。この二棟は石造りなので簡単には破れないだろう。そこまで侵入させる気はないが。
村の中はマリーの部隊と他の兵を合わせて五十ほど。柵の周りでは槍兵が三百ほどが柵を突破されないように立ち塞がる。リーシアとザラスの部隊はガイナスが西から来ることを見越してリーシアが村の北西、ザラスが村の南西に陣取った。だが田んぼがあるので隊列は整っていない。
「敵が来るのは夜か」
リリルの話によると彼女が寝ていたときに教われたという。今は昼前らしいが気を抜くわけにはいかない。
「報告!」
リーシアの兵である赤髪の兵士が馬から降り叫ぶ。
「西へ十キロ、部隊有り。旗は揚がっておらず。勢力は不明!」
「敵がもう来たのか!? ……いや、確かマリーがリリルが謎の部隊が来たと言っていた、と」
リリルは他にも言っていたらしい。
ガイナス軍が来た日の昼、つまり今から数刻ほど後に見たこともない兵隊が村に来たという。彼らは別段何もせずに東に向かっていったらしい。
(彼の部隊がそうなのだろうか?)
リーシアは確認するために馬に乗り十人の供を連れて駆けた。
四半刻ほど駆けると相手を視認できた数は約五十、騎乗しているのは五人か。
相手もこちらに気づいたようで一度止まり、こちらの様子をうかがっている。
(こちらから出向くべきか)
リーシアは供を待機させ相手を警戒させないように、ゆっくりと馬を進ませる。
相手からは麻の服を着た兵士が一人近づいてきた。腰に携えているものにリーシアは見覚えがあった。
(あの武器は黒服の兵士たちが使っていたもの!?)
ガイナスの〈軍〉が使っていたものと同じ"刀"という武器である。これは極東のものだがリーシアが先に見たのは〈軍〉だったので近づいてきている相手がその仲間かと思ってしまい警戒をしてしまった。それを感じた相手も腰に手を添えて柄を握りしめてリーシアを睨む。
「ま、待ってくれ!?」
リーシアは慌てて相手を制す。
だが相手は刀を抜いた。それに合わせて騎兵が駆け寄ってくる。そしてリーシアは取り囲まれた。
相手の兵士たちは異国の言葉で互いに言葉を交わしている。内容は解らないがそれに怒気と殺気が含まれているのは間違いではないだろう。
ここで槍を構えたら一斉に襲い掛かってくる。リーシアはそう感じた。
「国はどこだい?」
リーシアの使い慣れた言葉が聞こえた。そちらに顔を向けると、一騎がこちらへゆっくりと進んできた。馬に乗っているのはファラスでもガイナスでもない異国の黒装束の小柄な少女だ。周りの物と違い、麻ではなく絹の衣装である。高貴な身分なのだろう。
「あれ? このあたりの言葉を使ったつもりだけど」
「わたしはファラスの騎士リーシア・エインワーズだ。君たちを害したりはしない」
「そうか」
相手の少女は安堵したように微笑む。しかし、すぐに表情を引き締めた。
「ならば、どいてほしい。あたしたちは極東の一大名――黒川の一門。国へ戻るために東に向かわないとならない。ファラスなら止めないよね?」
こちらを見据えて微笑む少女。彼女が右手を掲げると、リーシアを取り囲んでいた兵士たちが彼女へと刃を向ける。返答次第では殺すことも厭わないということだろう。
「異国の姫よ。どうか力を貸してほしい」
「はあ?」
リーシアの言葉に相手の少女は眉根を寄せる。
「力を貸してほしいだって? あたしたちが必死に戦っているときには助けなかったくせに!?」
相手の少女は激昂した。
「お前たちが助けに来なかったからムガノ城は落ちた。多くの将兵が散って逝ったんだ!」
「それは違う!」
リーシアは全力で否定する。
「ファラスは助けに行ったんだ! だが敵に阻まれて間に合わなかったんだ」
「違わないじゃないか!」
今度は相手の少女が否定する。
「助けがなかった。城が落ちた。大勢の仲間が死んだ。何も違わない」
言葉に落ち着きが戻る。
「ファラスとは手切れだよ。どうせお前たちの国は亡びる」
相手の少女は兵を下がらせて引き連れていた部隊と共に東へと去る。
「大丈夫ですか?」
リーシアの兵士が彼女へ駆け寄る。
「ああ、急いで戻ろう」
リーシアは馬に跨ると、自分の持ち場へと駆け戻る。その途中、先程の少女が率いる部隊が見えたが先を急いだ。
再び四半刻を費やし、村へと戻りつく。
「ザラスさん話がある、来てくれ」
他の兵と共に守備していたザラスと共に村の中へと入る。
「どうしたの二人とも?」
二人の様子にマリーは小首を傾げる。
「村の少女リリルが言っていた部隊と会った。彼の部隊はムガノ城の生き残りなのだ」
「なんだと!」
声を上げたのはザラスだった。すぐに村を出ようとする。
「何処へ行くのですかザラス殿?」
「すぐに迎えに行く。俺が助けられなかった命が助けれんだ。そのための過去に跳んだんだろ?」
そう言い残すと駆けて行った。
「これは幸運ですね」
マリーの隣にいつしかリオンが並んでいた。
「ムガノ城を救えることができればファラスの戦況は大きく変わります」
「その前にムガノ城までの道を何としても繋がないとね」
クラム砦からの援軍を送るためには道中の襲撃を撃退せねばならない。
「すべての兵をムガノに投入するのか?」
「今のファラスの兵は四万ほど。ムガノに連れていけば勝てるでしょう。ですが他の城砦は手薄で簡単に捕られてしまいます。ギリギリの数で戦うしかありません」
彼女たち三人が話し合うこと半刻ほど、村に部隊が到着する。
「またお前か」
嫌そうな顔をしたのは異国の姫である黒装束の小柄な少女だった。それに驚いたのはリーシアである。
「よくぞ参ってくれたな」
「大柄の男に頭を下げられたんだよ。身分があるだろうに何度もね。そして謝られた。すまなかった、と。懇願された。一緒に戦ってほしいと」
少女は悪戯っぽく微笑んだ。
「だから言ってやった。いやだ、と。お前たちのためには戦わない、と」
「それならどうしてきたの?」
マリーが問う。
「民のためだからだよ。聞いたよ。この村には村人が残っているんだってね」
「ええ、それを守るのがわたしたちの役目」
「じゃあ、最後の戦をするか」
少女は懐から取り出したものを頭に乗せた。それは漆塗りの椀。彼女の覚悟の表れ。
「不肖、クロカワ・イチヒメ。民のため協力するよ」
夜のことである。
雲は厚く月明かりでは頼ることができずに松明を多く燃やしている部隊があった。
火に照らされた旗はガイナスの双頭の赤竜である。
彼らの目的はミリタ砦を攻める前にファラスに補給させないために制圧するためである。
「あれを」
この部隊を率いる将の隣で部下が先を示す。
彼が指した方を見ると夜道の先に赤々と燃えるものがあった。
「あれは……村の灯りか?」
「おそらく。ですが、松明の数が多く感じます」
部下の言葉に単眼鏡を覗き、舌を打った。
「ファラスの旗が立っている。奴ら村に兵を詰めたか」
松明の火のせいで見えにくいが確かに黒地に金の鷲の旗があった。
単眼鏡から目を離して将は鼻を鳴らす。
「村を守ろうとも守備兵程度であろう。そう数は多くない。こちらは千を超える部隊。一気呵成に攻めれば半刻も、いや四半刻もかかるまい」
周りの部下と高嗤う将の前に兵が一人ひざまずく。
「報告。この先に田んぼがあり道が狭くなっております」
そう言い残すと兵は下がる。
「田んぼか? そんなものは見えないが」
「確認してまいります」
部下の一人が部隊を離れて先を進む。そして馬を下りて道端を松明で照らす。確認すると将の許へと戻る。
「確かに道の両端に田んぼがあり、立派な穂を垂らしています。焼き払いますか?」
「かまうな。今は村を片付ける。九百の兵で攻めよ」
部下たちは短く返事をすると兵を連れて村へと向かった。残ったのは将と彼を守る百ほどの兵である。
「それにしても暗いな。もう少し松明を灯せ」
その時かさりと音が鳴る。
「何の音だ?」
兵士の一人がその音に気付く。
「風で穂が揺れたんだろう」
仲間の言葉に兵士は納得する。
「村は落とせたかな?」
「突撃!」
ガイナスの兵たちが村に展開しているファラス兵に襲い掛かる。
赤々と照らされる村を背にした影のように黒いファラスの兵士に矢を射かけて怯ませ槍兵が突撃する。
「うおおおおぉぉぉおおッ――……おお?」
敵はこちらに気づいて迎撃してくると思っていた。だが何も反応せず、目の前にいる兵士も全く動かない。明らかにおかしい。
そして謎が解ける。
「こいつはただの丸太だ!」
槍で突かずともわかる。これは丸太に鎧を着せて武器を縛り付けているだけだ。こんなものを兵士と間違うなど不思議なぐらいおかしいことだ。だが彼らは実際に近づくまで敵だと思ってしまっていた。それならば村を照らす大量の松明や掲げられた旗は何なのだ?
そのとき首を傾げる彼らの背後で鬨の声が上がった。
部下を村へ送り出した、わずか数分後。将は矢から兵士に守られていた。
「どこから射られているんだ。敵を探せ!」
命令された兵たちは周りの様子を探る。だが松明の灯りで見える範囲では敵の姿が見えない。つまり田んぼの中に敵は潜んでいるらしい。
ガイナスの兵士たちは四、五人で纏まり田んぼに侵入する。
「出てこいファラス。姿を見せろ!」
そう叫んで脅すが、彼らの視界は松明に照らされた二、三メートルほど。敵を見つける前に跳んできた矢によって討たれる。
ガイナス兵の一人が矢によって討たれて松明を落とした。それが垂れている米の穂に燃え移った。その炎は衰えず徐々に燃え広がる。それはガイナス兵たちに恐怖を煽った。
「火事だ! 逃げろ!」
田んぼに下りていた兵士たちは道に戻り、怯えながらも武器を構えなおす。
「何をしている。早く敵を探さぬか!」
激怒しながら矢を避けている将に鬨の声が聞こえた。
驚いて顔を向けると炎の中を走りながら何かが駆けている。その正体がつかめたのは松明に照らされた時だ。
「はあああぁッ!」
田んぼから鎧ではなく中の衣服姿のリーシアが朱槍を道の反対の田んぼからザラスが大剣を振り回す。彼女たちに続くようにファラスの兵たちが槍を構えて道に居るガイナス兵に突撃した。道の両端からの攻撃だ。つまり、いともたやすく挟撃の成功。
「急いで前に出ている兵を呼び戻せ!」
将がそう言わなくても異変を感じた部下たちは将の許へ駆け戻っていた。
「今だよ!」
田んぼの中から誰かが言った。それが聞こえたかと思うと先頭を駆けていた兵士が盛大にこけた。何人もこけて、さすがに気づいた兵士も勢い余ってこけて、後ろにいた兵士も先にこけた兵士に躓いてこけた。
前で二十人ほどこけたため、さすがに後に続いていた兵たちが止まった。
「なぜ止まっている?」
「これが地面に」
兵士の一人がそれを掴み持ち上げる。
それは一本の綱であった。ガイナスの兵たちはこれに足を引っ掛けたのだ。行きは難なく通ったのに。
「クソ! このような罠を……まあいい。早く起きないか! 加勢に向かうぞ」
そのとき再び鬨の声が上がる。今度も後ろからだ。だが今回の後ろは村の方からであった。
「ガイナスを蹴散らせええぇえぇぇッ!」
マリーの号令に三十騎の〈百騎兵〉が突撃する。目標は背を向けて足を止めたガイナス軍。
騎兵の突進力で村には丸太の兵しか居ないと思っていたガイナス兵は蹂躙されて兵たちは散り散りに逃亡した。
こうして四半刻で決着がついた。村はガイナスから守られたのだった。
戦が終わった後、村が火事にならないように急いで松明の火を消して数を減らす。
そして負傷兵を村へと運んで治療して――夜が明けた。
松明の代わりに陽が照らした田んぼには敵味方の亡骸が数えきれないほど横たわっていた。だがその中にファラス兵は少ない。これも策が成っていたからだろう。そしてその策を考えたのは――
「リーシア殿、だっけ? 君から見て、これは快勝になるのかい?」
イチヒメが田んぼを見つめて訊いた。
「ああ、素晴らしいと思う。被害も少なく、村も守れた。君には恐れ入ったよ」
松明をたくさん灯すことにより注意を惹き、丸太で作った偽の兵へと突撃させて自分たちは明かりの届かないところから攻撃する。たくさん松明を灯せば見つかりやすくなってしまうと思うかもしれないが実は松明の灯りは有能ではない。照らせるのは二、三メートルでそれ以上はまるで黒い壁があるかのように先が見えなくなる。これは夜闇に対して松明が明るすぎるためである。空にずっとある星が、昼には太陽のせいで見えなくなるのと似ている。そして松明の灯りのせいで夜目が効かなくなり遠くで何かが動いても見ることが不可能なためでもある。丸太の偽兵に騙されたのは松明と旗を掲げられていたことにより敵がいるという先入観を持ち、松明の灯りの逆光により丸太の偽兵に陰ができ姿が曖昧になったためである。
それをイチヒメは知っていた。そしてリーシアたちから与えられた情報だけで見事に勝ってみせた。
今まで騎士として戦ってきたリーシアたちはこんな戦いは初めてだった。いつも相対した敵と正面からぶつかる戦いしかしてこなかったからだ。この少女が居なかったらファラスはただ突撃していただろう。
「そうか。村が守られたならどうでもいいか」
そう言うイチヒメは悲しげに目を伏せる。再び開くと元気そうに笑う。
「じゃあ、後は頼むよ」
イチヒメは自らの配下を集めて村を去ろうとする。
「おねえちゃん!」
イチヒメに突撃するように抱き付いたのは彼女よりも小柄なリリルだった。
リリルは嬉しそうに笑う。だがイチヒメは困惑した。
「ええと、どこかで会ったかい?」
「ええ!? 忘れちゃったの?」
この過去ではイチヒメとリリルは会うのは初めてである。だがリリルには難しいことは話していないので彼女は二回目だと思っている。
「イチヒメ殿」
「殿は要らないよ。ヒメで既に敬称はついているから」
「それならイチヒメ。わたしたちと共にムガノ城を救ってはくれないか?」
リーシアの言葉にリリルの頭を撫でていたイチヒメが怪訝そうな顔をする。
「それはムガノ城の奪還に協力してほしいってことかい?」
「ちがう。過去に戻り、ムガノ城を陥落の運命から救い出す」
「はあ?」
かわいそうな人を見るような目を向けた後、嘆息する。
「過去に戻れるわけないじゃないか。ファラスは戦疲れで頭がおかしくなってしまったのかい?」
イチヒメの悪口にリーシアは少しムッとした。
「本当だ! そうだよなリリル?」
「うん! すごかったんだよ。目を閉じたらビューンっていつの間にかに戻ってきたんだよ」
「君、子供を味方につけるのは卑怯じゃないかい」
「本当のことを言っただけだ」
「君ね~」
やんや、やんやと言い合っている二人の許にマリーが間に入る。
「何しているの一度クラム砦に行くわよ」
「他の村と連絡が取れたのか?」
「ええ、ここを含めた五つの村全てが守られたわ。多少被害はあったらしいけど。支度を済ませ次第クラム砦へ集まると伝令が来た。わたしたちも急がないと」
部隊に指示を飛ばし自らの支度も進めていくマリー。リーシアも丸太の偽兵に使った自らの甲冑を回収する。
部隊を纏めて村から出立してゆっくりと半刻でクラム砦へと到着する。
「減ったわね」
クラム砦に集まった味方は砦の守備兵を抜くと四千にまで数を減らしていた。この場に居ない千の兵たちは村を守るために散ったのだろう。
「それであんたは付いてきたのね」
「君たちのことが気になるからね」
マリーの隣に漆塗りの椀を外したイチヒメが並ぶ。
「はじめまして、イチヒメさん」
「やあ、君は誰だい?」
イチヒメは正面に立ったリオンに普通に話しかけた。
「リオンが見えるの!?」
「何だい? 見えちゃいけないのかい? もしかして幽霊なのかい!?」
震えだすイチヒメをリオンが落ち着かせる。
「わたしは生きていますよ。安心してください」
「なあんだ」
ケロリと笑顔に変わるイチヒメ。どうやら先程の怯えは演技だったらしい。
「それで、あたしになんか用かい?」
「目を閉じてください」
リオンの言葉にイチヒメは不思議そうに小首をかしげたが言われたとおりに瞳を閉じる。
「もういいですよ」
リオンの言葉にイチヒメは目を見開いて、そして苦笑した。
「嘘だろ?」
彼女の目の前にはファラスの最後の拠点――ギルライオ王城がそびえたっていた。
「ようこそ、未来のファラスへ。そして共に戦いましょうファラスの未来を変えるために」
いや~追い詰められるファラス。
そこに風が吹く。極東の軍師。彼女がファラスの反撃にどう影響するのか。
そして今回、あまり活躍しなかった主人公は次回活躍するのか!?
こうご期待!
補足、いや蛇足ですが極東の軍師の設定は戦国武将の一人から拝借して考えたもの。椀を頭に被ることから知っている人は知っている。知らなくても大河ドラマにもなったので名前だけは知っているかもしれません。
では、mあた、aいましょう。さようなら!




