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歌姫ギルと海の獣達  作者: 青樹加奈
第二章 スフェーン
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ドムドムの実

 翌日、ピュールとの待ち合わせ場所、崖の下に行った。キイルは群れと一緒に狩りにいってしまって、私一人だ。いや、一頭というべきか。

 海の底から見上げる。海面にボートの底が見えた。崖よりの岩陰に浮き上がってそっと覗く。ボートにピュールが乗っている。ピュールと女の人が一人のようだ。良かった。私を捕まえようとした人達はいない。若い女の人がボートを漕いでいる。

 私はボートの側に寄って海面に顔を出した。女の人がオールを操ってボートを停める。


「ピュール、元に戻る方法が見つかったわ」


 ゆったりした服を着たピュールが船縁から顔を出した


「ビシャ、ありがとう! で、どうやるんだ?」

「あのね、あなたをグンダグンダの元に連れて行かないといけないの」

「じゃあ、すぐに行こう!」

「駄目よ。グンダグンダのいる場所まで、丸一日かかるの。人の船だともっとかかるわ。なんとか船を手に入れて、たくさん食料を積んでいかないと。それと、ドムドムの実がたくさんいるの」

「だったら、あの枝のを取ろう」


 ピュールが女の人に向って崖の下をさかんに指さしてみせる。女の人が崖下にボートを寄せた。ドムドムの木の枝が海面すれすれに垂れ下がっている。ピュールはボートの上に立ち上がって、枝を揺すった。ボートにぼとぼとと実が落ちる。


「これぐらいあればいいかな」


 そう言われても海の中にいる私にはボートの中は見えない。


「いくつぐらいある?」

「うーんと、これぐらい」


 私に両手を突き出して見せた。


「あたし、数が数えられるようになったんだ。人間の体って便利だな」

「うーん、もっとじゃないかな? 種の中に出来ているかもしれないリツっていうのがいるんですって。リツがあるかどうかは、種を砕いてみないとわからないんだし。麻袋一杯くらいいると思う」

「麻袋って、これのことか?」


 ピュールが足下に落ちていた麻袋を取り上げる。


「そうそう、それくらい」


 ピュールがせっせとドムドムの木から実を落とす。

 その様子をぼんやり見ていると、誰かが私に網を掛けた。


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