7.持論を述べる
長い入学式が終わり、僕は早々に坊ちゃん様とその取り巻きたちに連れられて裏庭にやって来ていた。気が乗らないけれど、ここでこの人たちを対処しなければ永遠に陰湿なイジメを受けることになる気がする。それだけは避けねばならない。
「僕はプリテンダー伯爵家の嫡男、ハンス・プリンテンダーだ。よろしく頼むよ、凡人様」
「あぁ、よろしくね。僕はラオ公爵家の次男、レオンハルト・フォン・ラオです」
名乗られたし、一応名乗っておこう。にしても伯爵家かぁ。公爵家よりは下だけど、普通に上級貴族だよね。しかもわりかし凄そうだし。
隣にいるリネをツンツンと突いて、耳打ちをする。
「リネリネ。プリテンダー家ってすごいの?」
「伯爵家の中でも、かなり高い地位を築いている名門です。魔術師も多く輩出しており、その大半が宮廷魔法使いです」
「はぁ〜……あの人自体は?」
「ハンス・プリテンダー様は魔術の天才とされています。が……才能に胡座をかき、甘やかされているせいで成長の伸びが無いとのこと」
「じゃあ勝っちゃうかもね僕」
秀才は天才には敵わない。でもそれは天才が秀才と同じくらいの努力をしてる場合に適用される。努力もせず、才能に酔ってるやつに僕は負けん。
魔法に関して僕は、ほぼ何も知らない。知ってることは、魔力を消費して放つことと、イメージが強く影響することくらい。
だから魔法学園で座学的なことを学べるのは非常に楽しみだ。だからこんな奴のせいで、キャンパスライフを台無しにされても困る。
「いいかい? 魔法のみの勝負だ。剣術と体術の使用は禁止だよ」
「はーい」
「じゃあスタートっ!」
その掛け声と同時に、風の魔法を放ってきた。鋭い圧縮された風、『風刃』だろうけど、圧縮が足りて無いからか威力がお粗末だ。
避け切れず頬を掠めたけれど、薄皮一枚を切っただけにとどまった。体制を立て直して目線を相手に向け直す。
「ふぅっ……」
「ふんっ! 逃げろ逃げろ! 魔法の使えない君に勝ち目なんて……」
両の掌を向かい合わせるようにして、水を湧き出す。球状に水を整形し、魔力を込める。そこから一気に勢いよく放出する。
「『水砲』」
「なんっ……!?」
魔法を使えないと鷹を括っていた相手がいきなり魔法を放ってきたので、ハンスは身を捻ってギリギリ僕の水の砲撃を避けた。
思ったより上手く放てた。イメージ的には某アニメの気弾に近い感じ。魔力の込め方も、魔力回路が太くなったおかげでやりやすくなったし、威力も込められる魔力の量が増えたから高まった気がする。
ハンスは呆気に取られたような表情で僕を見ている。まぁそりゃそうだよね。レオンハルトは魔法を使えないって思ってんだから。
「なぜっ……貴様……」
「噂違いだったんじゃないかな?」
「……くははっ……しかし所詮落ちこぼれ。その程度の魔法を使えたくらいで僕に敵うと思うなよ!」
「む」
そう言ったハンスは大きく手を掲げて魔力を込め始めた。何をする気だ一体。取り敢えず警戒の意味も込めて、魔法を仕込んでおこう。
そう思った直後、僕の真下に魔法陣が現れた。しまったと思った瞬間に、ハンスは掲げていた手を思い切り振り下ろして魔法を発動した。
「『烈風』!」
瞬間、僕を包み込んだのは巨大な竜巻……のような旋風。しかしその一つ一つが魔力を帯びていて、僕の肌を切り刻んでくる。
しかし風魔法に重要な圧縮がここでも足りておらず、肉を抉るには至っていない。ダリ先生から教わった風魔法に必須の二項目は『圧縮』と『収束』。風を集め圧縮し威力を高め、それをさらに一点に収束させ旋風を生む。
僕も初級くらいなら結構な威力で放てる。前世のラノベやらゲームやらで得たイメージがあるから。前世知識はいいね。
「ははははは! 魔術師はね! 99%の才能と1%の頭脳が無いと一流にはなれないんだよ! 才能がない落ちこぼれな君はその時点で僕に……」
「そりゃ違うよ」
竜巻から一気に飛び出して、ハンスとの距離をゼロにする。ハンスは全く反応しきれず、僕への演説を止めようとする素振りをようやく見せ始めたところだ。
どう飛び出したかというと、『電荷』という魔法を使って雷を纏い、光速で一気に飛び出た。乱風の中を走るのは稲妻って相場は決まってる。
電気を帯びた掌をハンスの腹部に押し当てて、今度は僕が軽めの持論を叩きつける。魔術のことなんてまだ分からないことだらけではあるけれど、そんな僕が出した一つの持論。
「魔術は99%の努力と、1%の閃きから成るもの…‥なんじゃ無いかな」
「な……」
「『衝雷』」
バチィ! といういかにも雷が走りましたよという音が周囲に響いた。僕がまとっていた電気を全てハンスに当ててやったから、多分気絶はしたはず。
雷魔法を使いながら、エジソンの言葉を借りて自論として見下してきた相手に言い放つ。んー気持ちいい。うまくハマった。




