表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/17

6.噂は絶えず

「今年の入学生は豊作らしい」

「あぁ。確かランディ家の嫡男やら、ルーラー家の令嬢やらが来るんだってな」

「すげー。ビッグネームばっかじゃん」

「あとラオ家の次男もいるらしい」

「はぁ!? オルフェウス・フォン・ラオの弟……ってことは……」


 確かに香る悪名の匂い。名門ラオ公爵家の中でも歴代最高の才能を持つと言われたオルフェウス・フォン・ラオの弟。そんな僕には、ある異名がついている。


「ラオ公爵家の『異端』……レオンハルト・フォン・ラオ!?」

「ああ。魔法に才覚がないのに、なんで魔法学園に来たんだろうな」

「アレだろ。追放」

「「あー」」


 納得しないでください先輩方。確かに事実上のラオ家からの戦力外通告ではあるかもしれないが、別にラオの名を名乗るなとは言われていない。だから追放ではないはずだ。

 そんな声が聞こえてくる中、隣でものすごい顔になっている人が一人。僕のために学園までついてきた従者のリネだ。


「……リネ? 顔が……」

「不快です。レオン様のことを何も知らず、噂のみで語る愚か者共が」

「まぁまぁ……みんな僕の事情を知らないんだし……仕方ないよ」


 リネは家を出たのをきっかけに、表情筋の凍結が解除されたのか表情豊かになった。笑う事はそこまでないが、負の感情は分かりやすいくらい顔に出る。今のように僕が色々言われている時は特に。

 そして聞こえてきた僕の二つ名。『異端』は、僕ではなく前任者につけられたもの。前任者は名門公爵家の出であるにも関わらず、その才覚は全て剣に注がれていた。だから異端。まぁ貴族にしては口があまりにも悪く、結構粗暴そうだったのも影響してそうだけど。


「まぁ……取り敢えずリネが普通に入学出来て良かったよ」

「当然です」


 リネは僕のようにコネで入学した訳じゃ無い。滑り込みの最終申し込みの枠に応募して、普通に合格した。

 そもそもリネはお姉さん感強めの見た目だがまだ18歳。僕と3つしか変わらない。高校生の歳だから、学校にいてもなんら不思議では無いのだ。ただ、制服を着ても溢れ出るお姉さん感はどうしても拭えない。

 僕はといえば制服に着せられてるという表現がよく似合う。馬子にも衣装とはこのことだ。でも全肯定のリネは似合っているの一辺倒。


「にしても……僕ってそんなに悪名高いの?」

「ええ。忌々しいですが、ラオ家の次男は魔法の使えない出来損ないというのは、貴族の中では有名な話です」

「はええ……やぁねぇ」

「しかしレオン様は出来損ないではありませんよ。前も今も」

「……ありがとリネ」


 本当リネには参る。優しすぎて、溺れそうになってしまうから。



「諸君らは……」


 入学式とか久々だなぁ。僕は高校生だったし、大学に行く余裕なんて微塵もなかったからもう出来ないと思ってた。どこの世界でも学園長の話が長いのは共通なんだ。

 リネは少し離れたところに座っていて、真面目に話を聞いている。やはり礼儀正しいメイドさんだ、中身があるのか無いのかわからない話もちゃんと聞くのは素晴らしい。主人ポイント追加だ。

 魔法学園は読んで字の如く、魔法を学ぶ学校。そして入るのは大体貴族。というかこの世界で魔法に適性があるのは、貴族が多いらしい。逆に剣術に秀でているのは平民が多い。だから魔術師は貴族が、騎士は平民がなる職というのが暗黙の了解。


(じゃあやっぱ前任者って異質だったんだ)


 貴族、それも名門公爵家の次男のくせに魔法が使えない。それだけにとどまらず剣術の才能は天賦と言えるものがある。そりゃ出来損ないやら異端やら言われるか。

 前任者の声はあの時を境に全く聞こえなくなった。僕の中に魂が二つある感覚は確かにあるけれど、反応が無さすぎる。死んでるのか、寝てるのか、僕の事を見て笑っているのか。どちらにせよ、気分で入れ替わるとか言われてるから、いつかは出てくるだろう。


「なぁ」

「ん? あぁ、どしたの?」

「お前、あのレオンハルト・フォン・ラオだろ?」

「うん。そうだけど」

「はっ。魔法に才の無い者が、何故この学校にいるんだい?」


 感じ悪いなぁこいつ。見たところまぁいいとこの坊ちゃんって感じ。見た目やら雰囲気やら、甘やかされて育てられたボンボンというのが見て取れる。

 僕はこの世界で多分めちゃくちゃいじめられるんだろうな。前任者の業を背負ってるから。僕は魔法を使えるのに……まだまだ初心者だけど。


「君は平民共と同じで、剣を振ることしかできないのだろう? なら、隣の騎士学園にでも行けばいいじゃあないか」

「それは僕の父上に言って……」

「口答えする気かい? 公爵家の次男だからと調子に乗るなよ凡才が」


 うへぇ〜そんなこと思ってないのに。調子に乗れるような性格じゃ無いよ僕は。見下ろされるように睨まれているので、ちょっとばかし見返してみる。この人顔は整ってるのに、性格が整ってないのが勿体無いなぁ。

 入学式の長い校長先生の話をガン無視して、僕と坊ちゃん様はフェイストゥフェイス。周りがヒソヒソし出しているけれど、この坊ちゃん様も結構有名なのかな。


「後で僕と一緒に来い」

「はーい」


 全く入学早々大変だなぁ。でも僕の懸念点はこの坊ちゃん様じゃなくて、後ろの席で殺気を放っている僕の従者さん。


「……」

(リネぇぇ……怖い怖い怖い……!)


 まるで『後で絶対に殺しに行きます』とでも言わんばかりの睨みを利かせている。僕より警戒すべき人間がいるよ坊ちゃん様。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ