幕間 出会った
私はとある伯爵家に生まれた。名前をヘルメス・ニオ・アルテメデスをされ、幼少期はそれなりに甘やかされて生きてきた。勿論貴族だから、甘やかされつつも厳しくはあったけれど。
5歳になったある日、水晶のようなものに手を翳して何かを測った。するとみんなが驚いて、その後に私をわっしょいわっしょいと胴上げし始めた。
お父様はこう言った。
『お前はアルテメデス家の希望だ……』
お母様は私を抱きしめて囁いた。
『貴方は私の宝物よ』
それから私の生活は、もっとみんなが甘やかしてくれるようになった。沢山家庭教師の人が来て、私に色んなことを教えてくれる。次第に私は理解した。私は沢山期待されているんだと言う事に。
でもそれをよく思わない人もいる。私のお姉ちゃんは、私が嫌い。小さい頃はよく遊んでくれたのに、今じゃお父様とお母様にはバレないように私に直接悪口を言ってる。
「お前なんか死ねばいい」
「誰もお前を好きじゃ無い」
「お前はこの家の癌細胞」
なぜそんなことを言うのだろう。私より優れていないのが何故そんなに嫌なのだろう。そんな日々が二年続いたある日。九歳になった私は、お姉ちゃんに一言だけボソッと呟いた。
「頑張ってね」
私は単純にエールを送ったつもりだった。お姉ちゃんが頑張っているのは知っていたし、魔法を努力して学んでいるのも知っていた。だから頑張れと、お姉ちゃんがいつも私にするように呟いた。
しかしその瞬間お姉ちゃんは私を思い切り殴った。倒れ込んだ私に馬乗りになって、右、左、また右、また左。殴る、殴る、また殴る。従者の人が止めても止まらない。発狂しながら私を捲し立てる。
「あんたがいなければ! 私は頑張らなくて済んだのよ! 何が頑張れよこの悪魔!!」
「お嬢様! おやめ下さい!」
「……」
私は何も分からなかった。その日の夜手当をしてもらっているときに、何故あんなに怒ったのか知った。お姉ちゃんは出来損ないと噂のラオ公爵家の次男とお見合いをされていたらしい。
お姉ちゃんは高飛車で自己肯定感が高い。そんなお姉ちゃんだから、出来損ないなんて言われている人は当然靡くと思ってた。でもその人はバッサリと断った。プライドが傷ついて帰ってきて、そのイライラがまだ残ってたときに私が火をつけてしまったんだ。
「……私、その人見てみたいな」
「ええっ? 物好きですねヘルメスお嬢様は」
「顔は超絶美人なお姉様を断ったんだから、見る目があるかも」
「お嬢様……割と毒舌ですね……」
その二日後、お父様には内緒でメイドちゃんと執事長と一緒にラオ公爵家に伺った。あいにく当主様と奥様は留守で、代わりに次期当主様と噂の長男さんが出迎えてくれた。
名目上は今後についてのお話をということでやってきたということになっているので、三人はすぐ難しい話をし始めた。私はその出来損ない君を探して広い屋敷内を散策した。
「あ……」
「……」
庭に出ると、それと思わしき人がいた。私と同じくらいの歳に見える。なのになんで、あんな暗い顔なの。なんで何もかもに疲れた目をしてるの。なんであの子は、一人でポツンと庭に立ってるの。
「あの……」
「……はぁ……またかよ」
「えとっ」
「俺に嫁なんて要らん。帰れ」
その子はそう言って私の横を通り過ぎた。それが私と、レオンハルト・フォン・ラオの出会い。
月日は流れて私が15の年。魔法学園に入学し、本格的な錬金術を学び始めた。そこから一年沢山のことを頭に詰めて、沢山錬金した。いつか、私が必要とされる時が来るまで。
「ん?」
「む?」
貴方が私を必要だと、言ってくれるその日まで。
「あっ君、レオンハルト・フォン・ラオくん……だよね?」
私はヘルメス・ニオ・アルテメデス。ただのしがない錬金術師。今日は私が一目惚れした男の子に再会できました。




