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18.ヘルメス・ニア・アルテメデス

 なんとかあの空間から抜け出すことに成功した。結婚の件はとりあえずリュグナー先生の尽力もあって、保留になってくれた。もう2度とあの二人が一緒にいる空間に足を運びたくない。5歳くらい老けた気がする。

 交流会の方はいよいよ本番、二年生の時間に入っており大熱狂の歓声が魔法学園の廊下まで聞こえてきている。


「リネ〜。戻る?」

「私は何方でも構いませんよ」

「んー……僕もう疲れたんだよね……」

「かなり派手に闘っていましたものね」

「というかリネ。僕が剣を使ってることに違和感無いの?」


 リネはタナトスも知っているけど、僕とタナトスが入れ替われることは知らない。だから魔法を使えるレオンハルトが、急に前までの剣がすごいレオンハルトに変わったのだから違和感はあるはず。

 でもリネは首を横にフルフルと振ってそれを否定する。


「剣を振っているレオン様は、久方ぶりに見ました。しかしやはり何年も見ていたお姿ですので、違和感はそこまで」

「魔法使えるようになってから剣はさっぱりだったのに?」

「レオン様ですから」


 理由になってなさそうな理由を述べ、なぜか得意げに胸を張るリネ。リネは本当にタナトスと僕のことが好きだなぁ。


 転生して半年で魔法学園に流され、一ヶ月半でこんなに色々なことが起きてる。鉄骨に潰されて終わった人生の続きが、まさかこんなてんやわんやだとは。

 前世の知識は生きることがあまり無いけれど、魔法を使う時のイメージには本当に役立ってる。これからも重宝しよう。


「ん?」

「む」

「あっ君、レオンハルト・フォン・ラオくん……だよね?」

「えっ? あっはいまぁ」


 廊下を二人並んで歩いていると、突如目の前に綺麗な女の人が現れた。水色がかった白髪のショートウルフに、僕と同じような琥珀色の瞳。制服についている紋章は魔法学園二年生のもの。

 二年生は今、選抜メンバーの応援に行っているはずだから学園内に残っているのは相当アウトローな人くらいだ。そんな雰囲気じゃ無いけれど。


「なんでしょう先輩様」

「あっ、バカにする訳じゃ無いの。さっき中継を見ていて、物凄く頭のキレる子だなって思って」

「ふむ……貴方は目がいいですね」

「ふふん。こう見えても視力2.1なので」


 どういう会話だと二人をジトっと睨む。すると先輩はふふっと目を細めて笑った。


「私は二年生のヘルメス・ニオ・アルテメデス。錬金術師だよ」

「僕は……ってもう知ってますよね。隣はリネ。僕の従者です」

「リネと申します。ヘルメス様、宜しくお願い致します」

「はいっ宜しくお願いしますリネさんっ」


 魔法学園なのに錬金術師。また何か変な人と関わり合いになってしまったかもしれない。この世界の錬金術師は絶滅危惧種みたいな存在だって、本でちらっと読んだ記憶がある。

 前世で言う錬金術師は、まぁその名の通り金を生成したり人体錬成で失敗してる印象。この世界の錬金術師は、ポーションを初めて発明したりした物凄い方々。所謂回復薬や、解毒薬だ。


「錬金術師とは珍しいですね」

「ふふっ。私の家系は錬金術師と深い関係があるの。だから魔法学園に通うようになったら、魔法じゃ無く錬金術を重点的に学ぼうって」

「そんなに珍しいんだ。やっぱり絶滅危惧種みたいなものだから?」

「それもありますが……」

「なにより母体が少な過ぎるからね。ポーションを作った全盛の時代でも、魔法使いの四分の一程度しかいなかったらしいから」


 そんなに珍しいものなのか。こんな世界だし、錬金術師もウヨウヨ居るものだとばかり思っていた。

 リネとヘルメスさんが話しているのを横目で見つつ、僕はついさっきの結婚云々の話を思い出す。エランさんとドゥールさんは言っていた。


『才能があるのだから、その才は受け継がなくてはならない。それが公爵家の息子ならば尚の事』


 理解はできるけれど賛同はしたく無い。僕は前世で死したせいで恋が実らなかった。だから今世くらい、好きな人とお付き合いして結婚したい。縁談なんていらない。

 父上と母上も、僕の事が嫌いなら放っておいてほしい。そもそも放っておきたいからここに僕を来させたはず。なら別に結婚したっていいはず。


「リネ〜」

「はい?」

「僕が好きな人と結婚したくなったらどー思う?」

「へ?」

「え、レオンハルトくん好きな子がいるの?」

「もしもの話です!」


 ヘルメスさんが目を光らせて首を突っ込まんとしてくる。恐ろしい野次馬根性……というか恋バナ好きな女子の魂か。

 対するリネは少し悩むような仕草を見せた。でもすぐに顔を上げて、僕の目をしっかりと捉えてこう告げる。


「私は貴方の従者。貴方の幸せが、私の幸せでございますよレオン様」

「……」

「ふふっ。いい従者さんだね」

「……はい」


 本当に、タナトスが従者にだけは恵まれてて良かった。リネがいなきゃタナトスが今頃どうなっていたか分からない。


「じゃあ好きな人がいるって事なの?」

「いないです」

「レオン様に恋愛はまだ早いです」

「15歳なのに? リネお姉ちゃんは弟くんに離れてほしく無いんだねえ」

「誰が弟ですか!?」


 ぷくくと笑うヘルメスさん。それを見てふふッと初めて見るレベルの笑みを浮かべたリネ。それに驚愕する僕。その顔を見た二人がまた少し吹き出した。

 なんだか、少しだけ心が軽くなってホワホワってした。


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