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15.余興

「騎士学園の諸君。今日成果を上げることができるならば、我々王立騎士団も君達をスカウトすることがあるかもしれない。励んでくれ」

「魔法学園の皆々。宮廷魔法使いになりたいのならば驕らず、相手を侮ることなく戦いに挑む事を忘れるな。それこそが最高の魔法使いの道である」


 王立騎士団の代表エランさんと、宮廷魔法使いの代表であるルーン・オネシスさんが一言を述べたところで開会式は終了となった。

 まずは一年生の選抜から。6クラスあるのに選ばれたのは4人だけ。なぜその中に僕が入っているのかはわからない。揶揄われてるのかな。

 しかしカイザーくんは、僕以外の二人を見て少し難しい表情を浮かべていた。どうしたのかと顔を近ずけてみると、意図に気づいたのか耳打ちしてきた。


「レオンハルト。あの二人は恐らく本当の余興要員だ」

「え? でも結構優秀そうじゃない?」

「いや。奴らには驕りが見える。その時点で誉ある騎士には勝てぬ」


 そう言うカイザーくんの表情には、確信に近い何かがあった。確かに魔法学園の人たちは貴族が多いし、騎士学園の人を見下してる節はある。それは確かに驕りかもしれない。

 実際騎士学園にタナトスレベルとは行かないまでも、相当なポテンシャルと実力を持った人がいるならば絶対に負ける。油断は最悪のデバフだしね。


「全く意地の悪い学園だ」

「まぁ騎士学園の人たちのほうが死に物狂いで来そうだよね。馬鹿にされる鬱憤晴らしの為にも」

「勿論だ。我は特段バカにもしておらぬが、大半はそうだろう。だから騎士学園と魔法学園の溝が深いのだ」


 額を抑えてため息を吐くカイザーくんを見て、僕も少し息を吐く。カイザーくんは否定しかしないけれど、やはり王子様だ。

 溝が深い。その言葉を口にした時の目は、どこか憂いを帯びていて何かを案じているような顔をしていた。カイザーくんは王様になる訳だし、騎士と魔法使いの仲の悪さはなんとかしたいのだろう。どちらも国のための戦力なのだから。

 転生する前の世界も、人種やら肌の色やらなんやらでメチャクチャに揉めたり仲違いしてたりする国はワンサカあった。僕は偶然人種差別もほぼ無く平和で、戦争もない国に生まれていたけど。


「いつか」

「?」

「二つが仲良くなれたらいいね」

「……ああ。我は切実に、そう思っている」


 そう僕たちがエモさ満載の話をしてる間に、第一回戦が始まろうとしていた。控室から魔法中継を眺める。この世界はなんでも魔法で作るなぁ。まさかテレビまで魔法で作ってるなんて。

 魔法学園の先鋒と騎士学園の先鋒の戦いは、あまり長い時間はかからなかった。終始魔法で遠距離を保ち続けていたが、騎士学園の子が隙を見て一気に距離を詰めた。しかし魔法学園の子はそれに対処できず、一太刀で切り伏せられた。

 第二回戦もほぼ同じシチュエーションで騎士学園の勝利。なぜ一度見ているのに対処できないのか。やはり驕りと油断は怖いなぁ。


「はぁ……これでは我らの質が悪いと思われてしまうぞ」

「じゃあ僕頑張らないと」

「頼むぞレオンハルト。我はそこそこ楽しんだらすぐに勝つ故」


 控室から出て表の闘技場内へ向かう。タナトス安全保険はありつつも、自分の力だけで勝つことができるのならばそれはそれで収穫だ。負けは考えない。勝つことを目標に、油断せず行こう。


『それでは一年の部第三回戦。魔法学園代表、レオンハルト・フォン・ラオ!』


 僕が出ると、途端にザワザワし始めた。まぁ無理もないか。今日は上級生どころか、王立騎士団やら宮廷魔法使いやらの重鎮たちがわんさか来ているんだから。そりゃざわつくよね。

 頬をポリポリと掻きつつ相手側の入場を待っているのだが、出てこない。アナウンスもないし何かあったのだろうか。首をコテンと傾げながら、対戦相手を待つ。


「……?」

『あー……少々お待ちください。ただ今確認を行なっています』


 なんだ一体。ただでさえザワついていた会場がより一層ザワつき始める。異様な雰囲気と、若干僕の中で漂い始める嫌な予感が背中を伝っていく。

 確実に向こう側の通路で何か行われている。それを視認することはできないけれど。


「……」

《来る》

「っ!」


 タナトスが呟いた瞬間、通路から剣がものすごい勢いで飛んできた。間一髪防御魔法を展開して防ぎ、その剣はバキンと折れた。

 視線をそっちに戻すと、人が1人歩いてきた。いや正確には2人だ。1人が歩き、もう1人は引きずられている。視認できるくらいの距離まで来た時に、引きずられている人が誰かようやく分かった。


「な……」

《こないだ切りかかってきた騎士もどきじゃねえかよあいつ》


 それは以前僕と渡り廊下ですれ違った時に切りかかってきた騎士学園の人だった。僕の記憶上では切りかかってきた直後、僕に足蹴にされていたのだけれど。

 さっきの剣もおそらく引き摺られている人のもの。引きずっている女の人はその人を雑に放り投げて僕の方に寄越した。


「レオンハルト・フォン・ラオだな」

「そうだけど……コレは?」

「あぁ。あなたに不遜な態度を取ったと聞いた。騎士道に反する行為だった事を変わって謝罪する」


 胸に手を当てて、ぺこりと頭を下げる女の人。しかし放り投げられた人はボロッボロで、ところどころに切り傷も見られる。絶対この人にシメられたじゃん。


「私はレウコユム。騎士学園一年生次席。あなたの噂は常に耳にするよ、レオンハルト・フォン・ラオ」

「そりゃあどうも……嫌な噂ばっかなんだろーね」

「そちらではそうかもしれないが、こちらではそうでは無い。むしろ尊敬、畏怖の念が強いさ」


 レウコユムさんは少し笑いながら腰に携えたショートソードを抜きつつ、僕にそう告げる。黒髪に白いメッシュのようなものが映えていて、可愛いというより美しい見た目の人だが、その笑みにはどこか歪なモノが含まれているように見える。

 僕も魔法をすぐ出せるように魔力を回路に流し、手のひらに魔力を集中させる。騎士相手は瞬発力勝負。近接戦になったら勝ち目は薄い。


「あなたは多くの騎士を倒していると聞く。その力、見せていただきたい」

「君が見たいモノは見せられないかも」

「ならば……力ずくで見せてもらおう」


 ダッ! と踏み込んだレウコユムさんは僕の懐に一気に潜ってくる。しかし僕はすぐさま『電荷』を一瞬だけ発動して、光の速度で距離を取る。

 ミョルニルさんがやっていた『電荷』状態での擬似的な光速移動。アレをパクった。僕は『電荷』を数秒しか維持できないから、使い方はコレしか無い。

 『電荷』を解除し左の手のひらをかざして、グッと切り返して僕に向かってくるレウコユムさんに魔法を放つ。


「『(ボルト)』!」

「無属性魔法? 舐めるな!」


 無属性魔法はただの魔力の塊。しかし威力はかなり高いし、騎士ならばコレでもいけると思った。しかし流石に首席。魔力を多めに使った『(ボルト)』を楽々斬ってみせた。

 ならばと今度は右の手のひらを地面に置く。グラグラと地面が揺れ始めた。


「む?」

「『岩衝ロックダウン』」

「ぐっ!?」


 地面が巨大な拳の形に変形し、アッパーカットのようにレウコユムさんを襲う。かなりの奇襲だったが、レウコユムさんは反応して防御した。

 しかし衝撃までは吸収しきれず、後ろに吹っ飛んでいった。今のうちだ。左の手のひらをかざし、右手を左腕を抑えるように添える。


「『(ボルト)』『強化(ブースト)』」


 魔法の二重使用は基本不可能らしい。でも僕は、『足す』が無理ならば『掛け』ればいいじゃ無いかと考えた。

 『(ボルト)』が顕現した後に、『強化(ブースト)』が右手から伝って『(ボルト)』に繋がる。しかしこれでは反発して不発になる。


「『二重掛ダブル』」


 だから『強化(ブースト)』を倍掛けして、反発しないようにした。足し算がダメで掛け算はOKな理由が分からないけれど、まぁろうとする人間がいなかったんだろーな。

 前世ではこういう重ねがけとか、真反対の属性の融合は浪漫だしかっこいいしで人気だったのに。超サイ◯人に界◯拳を重ねがけやら、炎と氷を使える人やら。

 レウコユムさんが再び向かってこようとしたタイミングドンピシャ。ソレを放つ。


「『重射ハードボルト』」


 無属性の魔力の塊が、二重に強化された状態で放たれる。しかし……


「『水蘭』」


 その塊を今度はあまりにも綺麗な太刀筋で、八つに斬り伏せて見せた。アレが剣術、型というやつだろうか。タナトスのノートに少しあった気がする。

 細く赤い刀身のショートソードをこちらに向けて、レウコユムさんは僕に問いかけてくる。


「あなた……魔法使いでは無いのでは?」

「さぁね?」


 僕は何回これ聞かれるんだろ。

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