12.独学
魔法学園に入学しておおよそ一ヶ月が経過した。僕の扱いは相変わらず変わらないのだが、変わっていくものもある。
まずは僕を『異端』と見る目は減ったと言うこと。まぁこれは僕が魔法を使っている姿を見続けているのだから当然だろう。だってこれでまだ認めてなかったら、ただのプライドの高いアホでしか無い。
ただみんなの視線が公爵家の出来損ないという目から、公爵家から追放された魔法使いという目に何故か切り替わったようだ。どういう解釈かは分からないけれど、やはり僕を下に見ていたいらしい。
「まぁ好きにすればいいけどさぁ」
「ええ。レオン様の方がどれを取っても上でございますので、お気になさらず」
「ええ……惨めと思っておけばいい……」
「それはそれでなんか……どうなのかな」
リネとミョルニルさんが相変わらずの様子。僕の味方をしてくれるのはありがたいけれど、この二人結構過激だからなぁ。でもこの二人、すごく強い。クラスの中でもトップに入りそうなくらい。
リネはルイーガを模擬戦で完膚なきまでにボロカスにしたのが、みんなの脳にこびり付いているようだ。それにここにいる誰より年上なのが、より何かを助長しているようにも思える。
ミョルニルさんは平民枠で最強クラス。クラス内の平民でも1.2を争うレベルの実力者だった。だけど僕に負けちゃったせいで貴族の皆様からは下に見られている。ごめんね。
「僕ってまだ落ちこぼれに見られるのかな」
「人の第一印象は……拭えない」
「愚かです」
まぁ仕方ないと割り切るしか無いのかな。そんな人たちを見返すくらい魔法で成果を出せばいい話だし。
やる気を入れ直し、授業に臨む。今日は『魔法応用』の時間で独学の魔法を作ってみようということになった。
「独学ってーのは自分で考えた魔法だ。まぁ想像力がモノを言うってやつだ。頑張れお前ら」
リュグナー先生のめっちゃくちゃふわふわした説明……になっているか怪しい説明を受けてからみんなが作業に取り掛かる。
しかし独学は、センスが問われる代物だとダリ先生から教わった。ここで言うセンスは才能ではなく、頭のキレの方。リュグナー先生も言った想像力という面での意味が強い。
僕はあの防御用水魔法、名前を『霊亀水』としたアレ以外はまだ作ったことがない。というかアレもアドリブで生まれた偶然の産物に過ぎないし。
「んー……防御の水……デバフの炎……持続的に燃える……」
手のひらから炎を出してから、イメージを組み立てる。燃え続けさせる為に消費する魔力量を増やす。別に薪を焚べて炎を燃え続けさせてるわけじゃないんだ。ただこれでは効率が悪い。
ならばと一旦炎を消して次に出したのは黒い炎。これは赤い普通の炎とは違い、半永久的に燃え続ける性質を持っている。これを応用すれば、僕の今思ってる理想のデバフ炎が出来るはず。
「おーおー。『黒炎』とはまたセンスがいいな」
「わっ。先生」
「半永久的に燃え続けるが、水魔法や氷魔法ならば鎮火される。でもお前なら上手く調節しそうだな」
「へへっ」
半永久的に燃え続ける。ならば深めの傷にこれを付与すれば、その傷を焼き続けて再生もさせないデバフ魔法にすることが出来る。問題は鎮火だけど、可燃物と酸素と熱さえ無限に供給出来ればここは大丈夫だろう。
可燃物は、『黒炎』の性質上必要無い。酸素は風魔法を組み込んで回し、熱は魔力量を少し増やす事で担保しよう。
「よしっ……出来た」
手のひらに現れた黒い炎。燃え方は滾るようなモノでは無いが、ユラユラと揺らめき消える事のない灯火とも思えるもの。しかしその正体は傷を焼き続け再生すら拒むほどの灼熱。
僕が刀を使えるならこれをエンチャントして、切りつけた傷にそのまま炎を残すとかも出来たりするんだろうな。
まぁコレを使うことはあんまり無いだろうけど、一応名前をつけなければ。デバフの炎、焼き続ける……焦げる……。
「『黒焦』……とかかな」
「おー。おいお前ら、ラオ坊はもう出来てるぞ〜。あと20分あるから頑張れよ〜」
おそらく使うことになるかは微妙な独学を作り、その時間は終わった。やはり楽しいなぁ独学は。




