陰の勇者
足元には、ギルディスターンの首が転がる鈍い音だけが響く
その静寂の中、立ち尽くすルークの姿
「ルーク…お前は……一体……」
「やあ。キース」
返り血を浴び立ち尽くしていたルークは、少し寂しげな表情を浮かべ、こちらを振り返った
「ルーク………お前っ……やあ。じゃねぇよっ!!」
そういうと、俺はルークの胸ぐらを掴んだ
「お前は!!お前は、一体!今まで、どこに行ってたんだよっ!こちらの気も知らずにっ!!」
そう言うと、ルークは目を丸くし、キョトンとした顔をしたかと思うと、急に笑い出した
「ははは。キース、君という人は。普通、こういう時は違う質問をするんじゃないのか?」
ルークは、とても楽しげな笑顔を浮かべた
「あ、ほら、これ!」
俺は懐からルークの母親からの形見を取り出し、ルークに手渡した
「ありがとう。大事に持っていてくれたんだね」
「そりゃな、シンシアから預かってて欲しいと頼まれたからな」
少し照れくさく感じ、耳が赤くなるのを感じた
「おーい!!」
呼びかける声が聞こえ、声の方を見るとアンダーソンが手を振っているのが見えた
アンダーソンも、どうやら無事のようだ
俺とルークは、アンダーソンに手を伸ばし、引き上げた
その後、アンダーソンは、叔父の事が気になると言い、駆け足で先に戻った
あれ程の怪我を負いながらも、走れるのは凄いものだと関心した
それから俺たちは、皆のところに戻りながら、今までの話をした
俺たちと別れた後の事、どうやって俺たちの行動がわかったのかなど、ルークに訊ねる
どうやら、ルークから預かった母親の形見は、どういう仕組みかは不明だが、ルークの感覚で、どの場所にあるか、おおよそでわかるのだそうだ
その為、俺たちの動きがおおよそ予想出来た為、そこから俺たちのサポートにまわっていたようだった
「何故?俺たちは、お前を追放したのに…」
そう伝えると、にこりと笑い
「あの時の約束の石を、追放された夜に袋に入れて渡してくれただろ。
覚えていないかい?あの日の約束」
ハッとした
昔の記憶が、俺の頭の中で駆け巡った
俺とルーク、イライザ、カイトで、勇者ごっこをした日に、将来パーティーを組もうと約束した
その時に、2人も勇者がいるのはおかしくないかという話の中で、ルークが言い出したんだ
「大きくなったら、キースが勇者で、僕は陰の勇者になるよ!」
胸を張ってルークが言った
「えー。何それ?陰の勇者って」
イライザがルークの顔を覗き込む
「陰の勇者っていうのは、勇者が活躍するのをそっと支えるのさ!僕がキースを陰から支えるよ」
「支えるのなんて、皆一緒でしょ?変なのー」
「そうじゃないよ。僕は勇者のピンチの時に助けるのさ!あとね、あとね、僕なら勇者も平和も守れるよ。だって、僕…」
と言いかけた後、急に口を閉じた
「だって、何?」
イライザがそう聞き返したところ、寂しげな表情を浮かべ
「ううん。なんでもないよ」
とルークは微笑んだ
「よしっ!そしたら、これは約束の証だ!」
と俺は言うと、ポケットの中から大事そうにしていた袋から取り出し、3人に小石を渡した
イライザには薄桃色した小石、
カイトには青色の小石、
ルークには黄色の小石を
渡した
「これが俺達の仲間の証だよ!」
俺は赤い小石を顔の前に出した
追放した夜、宿を出ていこうとするルークに投げた袋
その中に、俺はいくらかの食料と当面のお金などを入れていたのだが、その時の小石も入っていたそうだ
それを見たルークがその影響で、最強パーティーを作れていないのかと思うと、少し心が痛んだ
俺はルークに問いかけた
「そういえば、陰の勇者になって、勇者も平和も護るとか言ってたな」
そういうと、ルークはこちらを見て、気まずそうな、なんとも言えない微笑みを浮かべ
「キース、1つ提案があるんだが、聞いてもらえるかい?」
「なんだ?提案というのは」
「これは…魔族からの提案なんだ…」
「は?魔族?なん?何故魔族?はっ!!まさか……ルークも魔族に何か弱みを握られているのか?」
「違うんだよ…僕さ、魔族なんだ…」
……はぁ??はああぁっっつ!?




