再会
「さあ、覚悟はできているかな?」
そう言いながら、ギルディスターンの手がひらりと光をまとい、次の瞬間には魔力を帯びた攻撃の気配がこちらに迫る
ギルディスターンの掌から、どす黒くも眩い光が奔り出した
それは幾筋もの鋭い閃光となって矢のように放たれ、容赦なくこちらへと襲いかかってくる
「っ……!!」
俺はその光が当たらぬよう、飛び回り逃げるだけでも精一杯の状況下で、攻撃を仕掛けることもままならない
「ふははっ!勇者の力などその程度なのか。大した事もないな」
そう言うと、続けて矢のような光を放ってくる
何か攻撃の糸口を探らねば
攻撃を交わしながらも様子を伺う
「うおおおおぉっ!!」
ギルディスターンの背後から、アンダーソンが大剣を振りかざした
「大声を出さぬと攻撃すら出せぬとは。愚かな」
そう吐き捨てると、アンダーソンの身体を中心に凄まじい衝撃が炸裂し、吹き飛ばされた
隙を突いて俺も刀を振りかざすが、その一撃は軽々と弾かれ、空間を裂く音すら立てずに宙を切り裂かれた
「ぐっ……!!」
ギルディスターンの放つ矢の如き光は、まるで意思を持ち、俺の動きを先読みするかのような漆黒の閃光が右太腿を貫く
骨を砕く衝撃と共に血が
全身を絶望が包み込む
だが、恐怖と痛みに身体が震える中、怒りが胸を焦がす
「この程度の力を魔王様がお認めになる理由が、やはり私には全く理解出来ぬ。やはり、人族など全て消し去るべきだな」
ギルディスターンは冷酷な笑みを浮かべ、アンダーソンをまるで塵芥のように踏みつけると、崖下へと蹴り落とした
振り返った瞬間には、すでに俺の首はその漆黒の爪に捕らえられていた
鋭く尖った爪が喉奥へと食い込み、血と共に焼けつくような激痛が走る。呼吸は奪われ、視界は暗転し、抗う間もなく死の気配が首筋にまとわりついた
息が…苦し……い…
剣を掴もうにも、手が届かぬ範囲にある
こんなところで……殺されて…た…まるか……
ふと、懐に暖かさを感じた
これは…父が遺した短剣か…
この程度で何か出来るとは思えない…が…
このまま何もせぬままよりか!!!
決意と共に、俺は短剣を握りしめ、ギルディスターンの胸めがけて突き刺した
短剣は一瞬、浅く胸に突き立ったように見えた。やはり、この程度か……
その思いが頭をよぎった瞬間――
「ぐはっ!!」
ギルディスターンの手が力なく離れ、口から血が溢れ出す
目を見開き、手についた血を信じられぬように見つめるその表情に、初めての驚きと恐怖が滲む
「貴様っ!!一体…何を……この私に……」
ギルディスターンの苛立ちと焦りが手に取るように伝わる
だが、この程度では致命傷にはならないようだ
今すぐとどめを刺さねば!!
俺は足を引きづり、這いつくばりながらも剣を拾いに動いた
あと少しだ!あと少し!!
これで剣に手が届く!
そう思った瞬間にギルディスターンが俺の剣を踏みつけた
口から血をペッと吐き出しながら
「このクソ蛆虫めが!!次期魔王となるであろう、この私に傷を負わせおってからに!!」
そう言うと、更に黒い光の塊をこちらに向けた
その直後、その光など到底及ばぬほどの眩い光が辺りを照らす
誰もが驚いたその瞬間、ギルディスターンの身体が遠くの柱まで飛んでいた
「貴様ごときが次期魔王だと?滑稽な戯言だな」
その声に振り返ると、そこには見覚えのある顔があった
「…!?ルーク!!?」
ルークだ!あの顔は、明らかにルークだ!
ルークが何故ここに?
沢山の疑問を浮かべながらも、次の言葉が出ずに口を開けていると
その男は、こちらを見るとにこやかな笑顔を返した
「くっ!!何故……このような……」
そう言いながら、立ち上がろうとするギルディスターンに、ルークは、これまで一度も見せた事のない、まるで氷のように冷たく、鋭い蒼の眼差しでギルディスターンを見下ろし
「貴様の今まで行なってきた大罪を、この私が知らぬとでも思うておるか。この場での処刑に値する」
「ふ…ふ……ふざけるなっ!!認めん!やはり、私は!貴様など決して認めん!!」
叫びながら攻撃をしかけるギルディスターンに、ルークは腕を一振りした
数秒が流れた後、ゴトっという音と共に、ギルディスターンの首がゴロリと転がった…
足元には、ギルディスターンの首が転がる鈍い音だけが響く
その静寂の中、立ち尽くすルークの姿
「ルーク…お前は……一体……」




