目覚めたら追放する側だった
「な…今、なんて…」
頭がズキッとした
頭を抑え、目を開くと目の前には真っ青な顔をした少年が驚いた表情でこちらを見ている
あれ?この少年、見た事があるけど、誰だっけ?
まだ頭がズキズキしている
「だーかーらー、今、キースが言ってたの 聞こえてなーいのー?」
右隣のツインテール女子が何か言ってる
「ほら、キース、もう1回言ってやりなさいよ」
とツインテール女子が肩をそっと抱いてきた
「なあ、キース…嘘だよな?追放なんて…」
目の前の少年が今にも泣きそうな声で聞いてくる
え?追放?何が?
今、追放って言ってたよな?
誰が?
どこから?
ズキズキする頭を右手でおさえながら、周りを見ると
古びた建物
薄暗い照明
その中で俺の周りには、
右隣にツインテール女子
左隣には白い杖を持ったボブヘア女子
後ろには筋肉自慢してきそうな男
で、高そうな椅子に足を組んで座っている俺
なんだ、このシチュエーション
また頭が強く痛みだした
そんな中で俺の頭の中で再生される記憶
「ルークをこの勇者パーティーから追放する!!」
と満足げな顔で言い放つ俺
勇者パーティー?
え?俺勇者パーティーの人なの?
え?勇者なの?俺?
…あれ?よく見ると目の前の少年って、
【勇者パーティーを追放されたので、最強パーティー作ります!】
の物語の主人公ルークじゃないか?
え?ええっ!?
ちょ、ちょっと待ってよ
じゃあ、今そのルークを追放しようとしてる俺って、あの物語の勇者キースじゃないのか?
確かルークは勇者パーティーを追放され、その後に才能が開花し仲間にも恵まれ、最強の仲間を集め、この世界を救う真の勇者になるんだよな
うん!それは良し!
良かったねー!ルーク!
幸せになってくれ!
と思ったと同時にサーっと血の気がひいた
ちょ…ちょっと待てよ
確かその追放した勇者パーティーは
ルークにどれだけ救われていたか気付かずに、ダンジョンで散々な目に合い
右隣のツインテール女子のイライザは、無残な死に方をする
左隣のボブヘア女子 シンシアは、苛立つ勇者に失望をし、自ら勇者パーティーを離れ、ルークに心からの謝罪をし田舎暮らし
後ろのマッチョ アンダーソンは、悪魔との対戦時に、勇者を交渉材料として差し出し、自分だけ助かろうとして殺される
そして、勇者である俺は、悪魔に身も心も乗っ取られ、最後ルークの手により討伐をされ、散っていく…
いやだぁー
そんな将来、断固拒否するわー
あー、マジで泣きそうだ…
そんな事を考えていたところ、手で顔を覆った俺を見てイライザが一言
「ほら、ルーク。あんたのあまりに情けない姿にキースが呆れ返って顔を隠しちゃったじゃないのよ」
違うわー!!!
お前、本当にこの時強気だな!
「うちのパーティーはな、力の無い者はいらないんだよ」
筋肉をピクピクさせながらアンダーソンが何やら言っている
筋肉野郎なのにそういう事言うの?
人に優しいのが筋肉野郎なのでは?
「シンシア…君は…わかってくれる…よね?」
ウルウルした目でシンシアを見つめるルーク
気まずそうに目をふせるシンシア
「まあ、そういう事だから、お・つ・か・れ・さ・ま!」
髪を手で払いながら高飛車に言ってのけるイライザ
「わ…かった…」
寂しげな背中で部屋を出ていくルーク
………
え?俺、まだ何も発してないんだけど…
……え?
勇者が部屋を出た後、ぞろぞろと各自、自分の部屋へと戻っていった
まあ、ルークが最強メンバーを見つけられたのは、このパーティーを抜けたからなんだよなー
ベッドの上でぼーっと考えていた
でもなー、最初の方のルーク、金を最小限で、宿にも泊まれず、極寒の地で手足がもがれそうな思いをして、
ろくにご飯も食べられず…
……可愛そう過ぎたんだよな……
おもむろに起き上がり、もやもやした気持ちで部屋を出ると
誰からも見送りすらされず宿の扉を開けて出ようとするルークの姿
そんな姿を見ていると胸がぎゅっと締め付けられて、思わず階段を駆け下りた
「ル、ま、待てよ!役立たず!」
息を切らしたのを少し隠した
「……キース…」
まだほんのりと目が赤いルークの姿
「ほらよ!忘れ物だよ!」
ルークに茶色の小袋を投げつけた
「え?これ…って…」
「このゴミも一緒に持ってけよ!ついでで捨ててこいや!じゃあな!!」
捨て台詞を言って、ルークに背を向けた
ルークは袋の中身を覗いた後に、深々と頭を下げていた




