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26.青春したい!《終》

 試合が明けて月曜日。

 俺は朝練に向かった。インハイ予選、終わってみれば足りないとこだらけの試合だった。

 勝てるなんて思ってなかったのに、負けたことが悔しいのはなぜだろう。

 いくら練習を積んでも、強い人たちもさらに練習を積んでいく。強ければ強いほど、また強い相手と戦ってその経験を糧に強くなる。追いつけるなんてどれだけの努力が必要なのか、途方もないことは分かっている。

 部内では絶対の信頼を背負う流星ですら県の強豪三山学園にはかなわなかった。

 上を見ればきりがない。後輩や横にも強い奴がごろごろ育っていて。俺よりも努力する人、俺よりも才能のある人にあふれている。

 いや、才能だとかセンスだとかそれ以前の問題だと分かっている。

 それでも、それが頑張らない理由にはならない。努力が無駄とも思えない。剣道を続けるのはただ俺が続けたいからだ。楽しいだけじゃない、苦しい。痛い。悔しい。報われない。でもそれがあっても続けたいと思ってしまう。


 非常に厄介だ。


 朝の剣道場ではすでに詩音と流星が練習していた。

「来ると思った」

 流星がにやりと笑ってこちらを見る。

「いると思った」

 俺もそう返して、詩音に手を振り流星の隣に立つ。鏡の前で竹刀を振る。向かい合っているのは自分。相変わらずのしかめっ面だ。強くなりたいと瞳をギラつかせている。


 入口の方で物音がする。

「おはよ」

「おはよう」

 智樹と、卓也だ。

「おはよーーー!」

 ひと際元気な声を出したのは大河だ。


 朝練は強制ではないから誰かが声を掛けて集まったわけではない。だけど自然と六人が揃った。

 少し口角を上げていると、流星があきれたように笑った。


 そして黙々と竹刀を振る。

 まずは当たり前に竹刀が手足のように動かせるようにしよう。それから、力をつけて、早さをつけて。スタミナも。それで今度こそ、強豪校と呼ばれる相手と当たっても心で負けないようにしよう。


 練習を終えて、剣道場の入り口に集まった。


「そう言えば高橋先生が動画撮ってたって。みんなで見ようって言ってたよ」

 詩音がスニーカーを履きながらそんなことを言う。

「じゃあ、鑑賞会は水曜日の午後にしよう。守屋師範にも見てもらおうよ」

 卓也が笑う。

「そうだな、みんな揃ってみようぜ」

 智樹が笑う。

「俺次の大会こそ出るから」

 大河が笑う。

「俺も……でるから!」

 詩音が笑う。

「団体戦は五人までだぞ?」

 俺が言う。

「楽しみだな。負ける気はしないが」

 流星が笑った。



 俺は強くなりたい。でも一人で強くなるには限界がある。だからみんなで強くなるんだ。智樹のカッコよさや、卓也のマイペースな柔軟さ。大河の明るさや、詩音の生真面目さ。流星のまっすぐさ。

 全部全部自分のものにしたい。


 それがなんか青春って感じだろう。

 中学の頃の俺に言ってやりたい、お前、高校で剣道するぞってしかも仲間もいるんだぜって。一人で耐えているあの頃の時間もそれは遠回りであって終わりじゃないってこと。ちゃんと今につながっている。



 まだまだどうにもならない問題も多いけど、それでも俺はこの青波工業高校剣道部で青春している!





読んで下さりありがとうございました

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