25.二日目 男子団体戦 後半
試合を前にすると自分の弱さを嫌ってほど思い知る。
足りないのは実戦経験、練習、心の強さって足りないものだらけじゃないか。
ここに来て弱気になるのは自信がないからだ。足りなくても今の俺には俺しかいない。今の俺でしか戦うことなどできない。ならば、できることをするだけだ。
俺の後ろには仲間がいる。
蹲踞をして相手をじっと見る。
「始め!!」
すっと立つと、一歩前に出る。相手が少し下がる。
「ヤァアアアアアア!」
気勢を上げてぐっと踏み込んだ。
あっ、打ってくる。不意にそう感じた。
「コテェエエエエ!」
前に出て、振り返り残心を取り構える。
「コテあり!」
いま一瞬だけ、相手の動きが読めた。開始線に立ち相手を睨む。
「二本目!」
「トゥアアアア!」
相手が気勢を上げる。俺も張り合うように声を上げた。一歩前に詰めてくる。相手はそのまま振りかぶった。
メンかコテ……ならば。
「ドォオオオオオオ!」
相手の竹刀は肩に当たったが、俺の竹刀もバチンっといい音をさせて相手の胴にあたった。振り返ると向こうが追いかけるように竹刀を振りかぶっていた。
「ドウあり!」
開始線に戻る。
「勝負あり!」
納刀をして下がる……隣には流星が立った。視線が絡む。うなずいて俺はコートの外へ出た。
流星は背が高い。でも彼の背中が大きく見えるのはそれだけじゃない。
頼もしくて、期待を裏切らない。4月からたった2ヶ月一緒に練習しただけなのに、流星の剣道に対するひたむきさを俺は心から信頼している。
「始め!」
剣先をカチャカチャと合わせている。ピンと伸びた背筋に、無駄のない足さばき。中段に構えられた竹刀には隙がない。
「トァアアアア!」
たださすがに相手も大将なだけあって隙がない。ただこちらには二勝しているという余裕があるが、向こうには不戦勝した一勝しかない。ここで二本とって勝たないと負け確定だ。それが相手から余裕を奪っている。
相手が仕切り直そうと物打ちを打ち合う近間から、遠間に移動した時だ。
「メエエエエエエエン!」
流星が跳んだ。あの遠間からきれいにメンが入った。
「メンあり!」
相手も驚いている。流星は駆け足で開始線に戻り構えた。
「二本目!」
「ヤァアアア! メェエン! メェエン!」
流星は打って変わって連打を始めた。一本取って逃げようとはしない攻めの剣道。相手も流星の気迫にのせられてガンガン打っていた。流星は冷静にその竹刀をかいくぐり、引きドウをした。
「ドォオオオ!」
「ドウあり!」
綺麗に入って、旗が三本上がった。
「勝負あり!」
流星が勝った。
俺たちは流星が下がってくるのに合わせて前に出る。
「ありがとうございました!!」
あぁ、もう一試合できる。その事実に頬が緩む。
だが二回戦に当たったのはシードの三山学園だった。
卓也も智樹も二本負け。俺は一本負け。流星は一本取って引き分けた。
それはもうあっけない試合で、全国レベルと言うのを体感した。本当に強い相手には小手先の作戦なんて意味がなかった。
インハイ予選団体の成績はベスト十六で終わった。
上を見上げればきりがないと、ため息とともに諦念が浮かぶ。
尽き詰めるとただ勝ちたい。ただそれだけなのにどうしてこんなに途方もないのだろう。
表彰式を終わらせ、武道館に礼をして帰った。




