表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/26

25.二日目 男子団体戦 後半

 試合を前にすると自分の弱さを嫌ってほど思い知る。

 足りないのは実戦経験、練習、心の強さって足りないものだらけじゃないか。

 ここに来て弱気になるのは自信がないからだ。足りなくても今の俺には俺しかいない。今の俺でしか戦うことなどできない。ならば、できることをするだけだ。

 俺の後ろには仲間がいる。


 蹲踞をして相手をじっと見る。

「始め!!」

すっと立つと、一歩前に出る。相手が少し下がる。

「ヤァアアアアアア!」

 気勢を上げてぐっと踏み込んだ。

 あっ、打ってくる。不意にそう感じた。

「コテェエエエエ!」

 前に出て、振り返り残心を取り構える。

「コテあり!」

 いま一瞬だけ、相手の動きが読めた。開始線に立ち相手を睨む。

「二本目!」

「トゥアアアア!」

 相手が気勢を上げる。俺も張り合うように声を上げた。一歩前に詰めてくる。相手はそのまま振りかぶった。

メンかコテ……ならば。

「ドォオオオオオオ!」

 相手の竹刀は肩に当たったが、俺の竹刀もバチンっといい音をさせて相手の胴にあたった。振り返ると向こうが追いかけるように竹刀を振りかぶっていた。


「ドウあり!」

 開始線に戻る。

「勝負あり!」

 納刀をして下がる……隣には流星が立った。視線が絡む。うなずいて俺はコートの外へ出た。


 流星は背が高い。でも彼の背中が大きく見えるのはそれだけじゃない。

 頼もしくて、期待を裏切らない。4月からたった2ヶ月一緒に練習しただけなのに、流星の剣道に対するひたむきさを俺は心から信頼している。


「始め!」


 剣先をカチャカチャと合わせている。ピンと伸びた背筋に、無駄のない足さばき。中段に構えられた竹刀には隙がない。

「トァアアアア!」

 たださすがに相手も大将なだけあって隙がない。ただこちらには二勝しているという余裕があるが、向こうには不戦勝した一勝しかない。ここで二本とって勝たないと負け確定だ。それが相手から余裕を奪っている。

 相手が仕切り直そうと物打ちを打ち合う近間から、遠間に移動した時だ。

「メエエエエエエエン!」

 流星が跳んだ。あの遠間からきれいにメンが入った。

「メンあり!」

 相手も驚いている。流星は駆け足で開始線に戻り構えた。

「二本目!」

「ヤァアアア! メェエン! メェエン!」

 流星は打って変わって連打を始めた。一本取って逃げようとはしない攻めの剣道。相手も流星の気迫にのせられてガンガン打っていた。流星は冷静にその竹刀をかいくぐり、引きドウをした。

「ドォオオオ!」

「ドウあり!」

 綺麗に入って、旗が三本上がった。

「勝負あり!」


 流星が勝った。


 俺たちは流星が下がってくるのに合わせて前に出る。

「ありがとうございました!!」


 あぁ、もう一試合できる。その事実に頬が緩む。




 だが二回戦に当たったのはシードの三山学園だった。

 卓也も智樹も二本負け。俺は一本負け。流星は一本取って引き分けた。


 それはもうあっけない試合で、全国レベルと言うのを体感した。本当に強い相手には小手先の作戦なんて意味がなかった。

 インハイ予選団体の成績はベスト十六で終わった。


 上を見上げればきりがないと、ため息とともに諦念が浮かぶ。

 尽き詰めるとただ勝ちたい。ただそれだけなのにどうしてこんなに途方もないのだろう。


表彰式を終わらせ、武道館に礼をして帰った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ