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24.二日目 男子団体戦 前半

 白い雲と青い空が武道館の窓に映る。

 朝はまだ肌寒いが昨日に続き熱い一日になりそうだ。



 今日も武道館 玄関前には道着や、制服を着た人たちであふれていた。

 入り口では昨日と同様スーツの人が開場についての案内をしていた。


 俺たちは詩音の後ろをついて歩く。

「今日も10時半開会。それまでに検量とウォーミングアップを終わらせること。今日はメイン会場で練習できるから着替えたらそっちに集合。試合は第二会場で一回戦目だから卓也は開会が終わったらすぐメンとコテを着けておいてね」

「紅白タスキは白だから」

 詩音と大河はテキパキと予定を説明してくれる。ほんと、頼りになる。六人ワンチームって感じがして心強い。


 二日目の検量を終えるとメイン会場に入る。今日もお世話になる会場に深く丁寧に礼をした。

 詩音と大河は応援席から応援すると上がっていった。


 メイン会場は見上げると黒い鉄骨が入り組んでいて、なんだかかっこいい。天井高いなーあれならバレーボール挟まらないだろうなとか思ってしまった。

「おい宣、ぼーっとしてるとはぐれるよ」

 前を見ると皆がどんどん歩いていた。でも大丈夫だ、なんてったってランドマーク瀬良垣がいる。俺はそれをめがけて追いかけた。

 切り返しをするにも十分の広さが取れた。しっかりと柔軟をして、素振りをする。

 なんだか視線を感じて周りを見ると、本当にこちらの練習を見ている人がいた。

「練習からもう敵情視察みたいなもんだから。俺も昨日当たったやつを観察してる」

 智樹がきりっとした顔で言う。あぁ、前回優勝者……智樹の視線の先を見ると一糸乱れぬ速さで切り返しをしている集団がいた。垂れを見ると三山学園とあった。全国常連の剣道エリート高校。その向こうには西城高校もいる。

「一回戦勝ち抜いたら次は三山学園だよ」

 と卓也が言う。

「気合が入るな!」

 竹刀を握り締めて感じ入っていると、三人があきれたように笑う。



開会式は昨日と同じように並び、あいさつ。審判の説明。試合の順番と表彰式の説明と続いた。

俺たちはすぐ試合だ。

「よし、じゃあ第二会場だから……あっちだ」

俺が指を指すと、すかさず「あっち」と智樹になおされた。頼りなくてごめん。


 試合は先鋒 卓也、中堅 智樹 副将 俺 大将 流星の順だった。


 俺はみんなの紅白タスキをポンと叩いた。背中を押すということが勇気づけるという意味になったことを昨日実感した。だから、俺も実践する。精一杯の力が出るように。

「揃いのタスキがあると負ける気がしないね」

 智樹は口角をキッと上げて笑って見せた。緊張しているくせに、強がりを言う。そう言うところが智樹はかっこいいんだ。

「なんか、すごい空気がビリビリするね。こういう空気……漫画に描けないかな」

 卓也はふわふわと笑う。そう言うマイペースで好きがぶれないところがすごく尊敬できる。

「僕も負ける気がしない」

 流星がにっかり笑う。彼のいつだって試合を楽しむ泰然とした性格はすごいと思う。

「なんか、この仲間でよかったって思うよ。俺も全力で挑む」

 照れるけどやっぱり言わなきゃ始まらないと思った。照れくさすぎてごまかすように右手を突き出すと、皆も同じように出した。

「がんばろー」

「「「おー!」」」


「では、これから男子団体戦を始めます!」

 とアナウンスが流れる。

 そして、俺たちはコートの中央へ進んだ。


「礼!」


 拍手が会場内に響いた。


 先鋒の卓也が蹲踞した。

「始め!!」

 しっかりと竹刀を構えて前後に足を動かせている。

 じいちゃんは「想像力」、いわゆる勝つイメージ。強い剣道をイメージするってことがちゃんとできているのが卓也だと言っていた。今も正眼に構えたまま相手との間合いをしっかりと取っている。まだ、剣道を始めて二か月なのにそんな風に見えないだろ。卓也が何度も手のマメをつぶして手に入れた努力の証なんだ。

 相手も卓也の強さを測りかねて、慎重になっている。卓也は攻められると同じように攻めて、攻撃をいなした。

 これが今回の卓也の選択だ。守りに特化した剣道をする。俺たちにつなぐために、一本でも負け本数を少なくすると卓也は言っていた。数少ない実践で自分の剣道をしたいだろうに……。下手をすると反則負けになりもする作戦。

「止め!」

 試合時間 四分が過ぎ。卓也は引き分けとなった。

 面を外した卓也はごっそりと生気が抜けて疲れた顔をしていた。四分間集中を切らさず、戦っていたのだからそうなっても仕方ない。だが視線は強く智樹の背中を見つめていた。

 次鋒はいないため、相手が蹲踞して下がるのを待つ。


 そして、中堅は智樹だ。

「始め!」

「ヤァアアアアアア!」

 智樹にしては珍しい泥臭い気勢だった。びりびりするほど響く。

 積極的に攻めていく姿勢のようだ。あれだけ技の習得にこだわっていたのに、インハイ予選が近づくにつれて卓也の指導をかって出てくれた。それにあわせて徐々に内にある焦りも消えているように見えた。


 剣先を合わせてじっくりと相手の様子を見ている。

「メエェエエ!」

 ダァンと床を打つ音と同時に智樹の竹刀が走る。相手は頭を傾けて避けたがその隙をつく。

「コテェエエエ!」

 すかさず下がった小手にコテを入れた。

「コテあり!」

 バッと三本白い旗が立つ。残心をとっていた智樹は駆け足で開始線へ戻る。

「二本目!」

 そのまま、相手に攻めさせず、智樹は1本で勝ちとなった。



俺の番だ。


手首を回して智樹が開始線から下がってくるのを待つ。すれ違う時、智樹と視線が絡む。俺は何かを受け取った。

「智樹、ありがとう」

下がっていく智樹を横目に開始線に進み蹲踞をする。


大きく深呼吸した。シンと心が静かになる。


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