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第六話 おもしれぇ男

「約束のお時間より早かったですが、よろしかったでしょうか?」


「それはお構いなく。元々子供らの代表だった神ノ木、もといイナミがいますし、その参謀でもある冴斬(さえぎり)もといタクマがいましたのでね。年長者というだけの私だけではすんなりまとまらなかったでしょうが、彼らの力ですよ」


 吉野先生、身内だけでなく対外的にも完全にキャラ変のまま行けるのね。


 しかし、あの王女もやっぱり大したものね。明らかに容姿も雰囲気も少し前までと、別人のようになっている吉野先生に対して、全く同じる事なく接しているのだから。あれかしら、異世界転生してくるとあんな感じ(・・・・・)になる人がいるとかの、文献が残っているのかしらね。


「シラユ王女殿下、私たちがこのまま全てを受けいれるとしたら、この後の流れはどうなっていたのか、教えていただいても?」


「勿論ですわ。この後の話し合いが問題なければ、流れとしては変わりませんので」


 先ほどまでいた部屋を出てから、ずっとこの調子で腹の探り合いをいしてるが、少なくとも吉野先生はそれを楽しんでいる節があるから、任せておけば良い感じね。


「まずは皆さんの、魔力測定から開始いたします。魔力量をおおよそ確認することが出来れば、皆さんにとっても有意義な検査かと」


「なるほど。確かにそれは、生徒達の今後の進路(・・・・・)を考える上でも重要な指標となりえるという事だね」


 吉野先生は、もう王女に対して敬語はやめたようね。そもそも王女本人はそんなこと(・・・・・)特に気にもしてない感じだけれど、王女の取り巻きが気にしていただけだったようだけれど、その取り巻きたちも先生を見て考えを改めたようね。


 それにしても、まるでギリシャ神話の中にでも入り込んだかのような作りになっているけれど、異世界だとしても人は人と言うことかしら? それとも、これまでに異世界人を拉致した際に、その人達が元の世界の文化を模倣したとかも、普通にありそうね。


 ただ、今はそんな歴史や建築に関する考察をしている場合ではないの。たった今できてきたワードが、間違いなくこれからの私の行動に関係する事に違いないわ。


 〝魔力測定〟


 吉野先生が、後ろから見ていても〝魔力測定〟という用語が出てきてから、心躍らせているのが、丸わかりだもの。きっと異世界モノとしては、定番の展開なのでしょうね。


 ここが、完全なるターニングポイントとなることは、火を見るより明らかね。大体は、私や冴斬(さえぎり)君、吉野先生の魔力量がきっと驚かれる感じに多いのでしょう、知らないですけど。で、問題は彼ね。


 きっと彼のことだから、これまでの人生経験から異世界にきたところで、自分に特別な何かがあるとは、間違いなく思っていないはず。さらに普段は奥ゆかしい性格の彼のことだから、最後に魔力測定するはずよ。現に今も、この行列の最後尾をおどおどと歩いているもの。


 何故、先頭集団にいる私が、最後尾に彼がいることがわかるかって? そんなの彼の気配、匂い、足音など、私以外なら見逃しちゃうことでも、私なら見逃さないからに決まっているわ!


 あぁ……早く……魔力測定の場で、真剣に魔力をあげようとして全身全霊をかけるも、全く結果が出ずに、それでも諦めず魔力を込めるも、やっぱり成果が出ずに、どんどん絶望に瞳が暗くなりつつも、やっぱり諦めきれずに前を向きつつも、心の中ではどうにもできないこともわかってるみたいな顔……


 早くみたぁああああいなぁああぁああああああ!!!!!!!!! ひぃはぁああぁああああああん!!!!


 ……っと、歩きながら危うく意識が薄れそうになったわ。恐るべし、一路(いちろ)マジック。


 私が妄想と戯れているうちに、いつの間にか大学の大講義室みたいな部屋に通されているわ。普通に私も座ってるけど、途中からここに座った記憶がないのだけれど、記憶が飛ぶほど妄想に耽っていたかしら?


「皆様! 改めまして、ようこそヒノス帝国へ! ヒノス帝国は、皆様を歓迎いたします!」


 へぇ、あのお姫様、あんなに大きな声出せるのね。ん?


 ⚫︎シラユ・ヒノス

 ※更新済み情報のみ表示

【備考欄】NEW!

 シラユは、異世界召喚者達に対して冷静に振る舞っているが、内心では心躍らせていた。というより、狂乱に近かった。帝国を自身のものとする為の強力な駒が想像以上に手に入ったと考えているからだ。

 これまでの異世界召喚に関する文献から、異世界人には奴隷紋や隷属系の魔法が無効化されることはわかっている為、彼女の〝魅了(チャーム)〟も効きにくいことは覚悟していたが、実際に召喚者達が現れた瞬間に全力で〝魅了(チャーム)〟のスキルを発動したが、はっきりと無効化された感覚があったことで、計画を第二のプランへと変更したのだった。

 それは彼女がもつもう一つのスキル〝扇動〟を使用し、緩やかにシラユを護る矛と盾を利用することだった。異世界人と話し合いの場として、自然に大会議室へと彼らを誘導する。 そこで、彼らを扇動することで、自身の優位性をいち早く作ることが、彼女の今後の計画の実現に重要な事になるのだった。


「……本当に長いわね」


 何なの? 備考欄って更新されるごとに長くなるわけ? しかも、結構重要な事だったから、結局最後まで読んでしまったじゃない。


「皆さんは、選ばれし勇者なのです! 女神様に選ばれ、世界の壁すらも越え、この世界を救世するために降り立った勇者様……この世界を……この帝国を……私をお救いください!」


「「「うぉおおぉおおお!!!!」」」


 あ、これやばいわね。おそらくだけれども、私はこれが〝扇動〟だと知っているから、この上手でも下手でもない普通の演説に狂乱するほど盛り上がれないけれども、そうでない皆んなは、異常なほど王女の言葉に熱く心を滾らせてしまっているわ。


 私が鑑定の魔眼持ちだとバレるのは、間違いなく悪手でしょうから、周りに合わせて盛り上がっていた方が良いわね。自分の性癖を、親にさえバレずに生きてきた私の演技力は伊達ではないわ。


 ただ……私の他にもう一人、王女の〝扇動〟を抵抗(レジスト)した生徒がいるけれども……やっぱり貴方には、この程度の言葉なんて効きはしないわね。むしろ、周りの盛り上がりについて行けずに、完全にドン引きしている姿が萌えるわ。


 それに引き換え、冴斬君なんてガンギマリの目になってしまっているから、笑えないわ、本当に引くわね。


「なんで……? ……異世界の勇者達! 女神の使徒として、世界を護るため、私の矛として強くあれ!」


「「「王女様ぁぁああああ!!!」」」


 最後、自分の矛とか言っちゃってるのに、何の疑いもなく一路(いちろ)君以外は、覚悟決まった感じになってるから、スキルってのは想像以上にヤバいわね。でも、やっぱりあの王女の目線と困惑した感じは、一路(いちろ)君が〝扇動〟の力が全く効いていないことに気付いた様子ね。


「ふ……おもしろい人ね……さぁ、勇者様方! 魔力測定にむかいましょう!」


「「な!?」」


 ん? 誰かと驚きがハモったわね。そんなことよりもよ! 何今の呟きは!? 〝おもしれぇ女〟の口調(トーン)で言ってたわよね!? 間違いなくフラグが建った感じなんですけどぉおお!? 


 その美貌や力で、思い通りに人を動かせてきた姫が、初めて思うように行かなかった男を、最初は興味の対象として意識して、最後にはあれでしょ!? その自分に対する普通な対応が、逆にキュゅんとしちゃって惚れちゃうんでしょぉお?


 クソがぁあああぁああああああああ!!!!!!  そんなんさせないですけどぉおおおおお???????


 魔力検査で一路(いちろ)君を、クソ雑魚モブにしてやるから見てなさいよォオオオオオ!!!


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