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余談 第1.6話 遊園地と大食堂

 初めて遊園地に連れていってもらったのは前世のことを思い出してそんなにたってないときのことだ。たぶん入学祝いだったんじゃないかな。

 オレはおめかしされ、真っ赤なスカートとかはかされた。女の子供服なんかやだなぁと思ってたけども、同じくらいの年齢で小公爵の小姓に出たときのお仕着せとそんなに変わらなかったので気に病むのはやめた。

 どこに連れていかれたのか最初はさっぱりわからない。あちこちで悲鳴があがり、恐ろしい機械音が聞こえ、大きなものが動いているのだけが見えて、なにか地獄のようなところにつれてこられたのかと怯んだ。

 よく聞くと悲鳴は歓声だし、あちこちにうちと同じように親子連れがいるし何かの魔物かと思った作り物を着込んだ誰かが風船を配っていたりしてこれは遊戯施設らしいとわかった。

 父にはなんかこだわりがあるようで、最初に乗せられたのはジェットコースターというもの。母は下でにこにこ見上げているがあれは絶対乗りたくなかったんだと思う。

「ベルトをちゃんとしめて、前のハンドルにちゃんとつかまっててね」

 遊園地の案内係に言われて緊張する。これでこれからどんな目にあうのかはさすがに見てればわかる。だけど父は夢だったのかゆずってはくれなかった。

 後日談だが、ずっと先にユカリと再会し、この思い出を語るとずるいと言われた。彼女が同じくらいのころには身長の制限があってこのころのオレくらいだったら乗せてもらえなかったらしい。ゆるい時代だったようだ。

 ジェットコースターは、結果だけいえば最高だった。

 最初こそ落ちる感覚に恐怖したんだけど、振り落とそうとする暴れ馬の鞍上で馬があきらめるまでがんばることにくらべるとただ上下してるだけで悪意がなく、むしろダイナミックな分楽しい。オレの表情を見て父大満足のひどいどや顔だ。

 メリーゴーランドとコーヒーカップは母も一緒にのった。オレと父が物足りない顔をしてるのを見て母はあきれていたようだ。

 にぎやかで華やかでどこにいっても楽し気な家族がいる。オレも場の空気に酔ってすごく楽しんでしまったらしい。両親はうれしそうだ。

 母が用意してくれたちょっと気合のはいったお弁当をみんなで食べて、午後も楽しんでそれからデパートへ。

 オレのよそ行きと、父のネクタイ、母は靴を買った。デパートにあるものは欠点もあったけどいいものが多く、にぎわっていることもあって騒々しくはないが楽しい。

 ま、服に役に立たない飾りとか多かったり、ときどき残念さでは前世を越えるデザインのものもあったけど。

 最後はデパートの大食堂で夕ご飯だ。

 サンプルケースの中にある見本は作り物なだけにどれもこれもおいしそうで華やかでテンションがあがる。カウンターで食券を買って案内された席につき、ちょっとスカート短めのウェイトレスが食券を半分ちぎってもっていったのはたぶん注文とテーブルを間違えないためだろう。

 クリームソーダとプリンは却下された。よくわからないけどコーラとお子様ランチは承認された。コーラといったとき父はなぜかにやにやし、母はため息ついて自分の分はオレンジジュースにした時に嫌な予感を覚えるべきだったかも。父は生ジョッキ、ああ、これはエールににてるな。あんな泡はなかったけど。

 満席に近い大食堂にようやく席をしめ、気取ったしぐさでウェイトレスさんが品物を運んできた。ようし、泡がでてるのは同じだとコーラを一口のんで。

 ちょっと後悔した。

 なんだこの薬臭いとしかいえない飲み物は。外国渡りと聞くけどこんなの喜んで飲むのはオークやトロールくらいじゃあるまいか。

「こっちのジュースとかえる? 」

 母はしっかりこの反応を読んでいたようだ。ご厚意に甘えようかと思ったけど、父ののむビールも苦い飲み物。もしかして慣れたら結構いけるんかもしれない。

「あんた結構頑固やね」

 母はあきれたが好きにさせてくれた。

 最後のほうは慣れてきて、カラメルとか利いてて結構うまいと思えるようになった。

 お子様ランチは、まあ子供向けなんだけど最高だった。家じゃ、母がその気になって手をかけたときに一つだけ出るようなもの、フライ、ハンバーグ、あとは不思議になめらかな赤いソーセージなんかが盛り合わせてあってもう。

「あ、パセリは無理にたべなくてもいいんだぞ」

 いやいや、前世にもあったハーブだ。これはこれで好きだよ。

 ごはんがすんで家に帰るのがちょっと残念なくらい楽しい一日だった。

 一緒にいける弟か妹がいるといいな。

 そう思いながら寝床にはいってから魔力の存在を確信した。幸福の魔法。

 楽しいひと時が終わって、前世で魅了魔法をくらったあとに似た感じを思い出したんだ。

 この世界にもわずかだが魔力はある。

 なら、魔法の修練は無意味じゃないだろう。

 あと、あのおいしそうな料理、父の食べた盛り合わせ、母のナポリタン、それにお子様ランチのそれぞれの料理は戻ったあとも再現できるようにしておきたい。

 クリームソーダもプリンもだ。

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