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sideモーブリィ・ヴシュターク

朝から僕は母上とお婆さまに追われている。

訓練にしては濃いなー。

母上が自ら僕を追うなんて。

お婆さまは手裏剣飛ばしてくる。

訓練にしては度を過ぎている。


角を曲がって、掛け軸をめくった裏の空間に逃げ込んだら、お爺さまが待ち伏せしていた。

お爺さまは僕の胴に腕を回すと

「確保ーーーー!」

と大声を出す。

うぇ、鼓膜が破れる。

手枷足枷された僕は女中に洗われて、着替えさせられた。

なんだこれ。貴族のおぼっちゃまみたいな服だw

靴下にフリルが付いている。


そして転移陣に放り込まれた。

各領に1つづつ設置されているこの転移陣は王都のセントラルステーションに繋がっている。

久しぶりの王都だなーと思っていたら、下りのホールに連れて行かれた。

どこ行くんだ?と思ったらローレンツ領に着いた。

南部連合の食料庫と呼ばれる一大食料生産地だ。


街は清潔で発展してて裕福そうだ。

街路樹に見たことのない花が咲いている。

商店街は店先に、野菜や肉や、パンなど大量に並べられている。

もんのすっつつごく豊かだ、スゲー。

野良猫まで太ってる。毛艶がいい。

領主館は普通だ。

普通だ。

ただ、玄関の回りに植木鉢が並べられていて、それがカラフルだ。

薔薇とかじゃないんだ?

お金持ちなら薔薇を飾るんじゃないかな?普通。

僕たちは(僕、父母)庭に通された。

この頃には僕も悟った。

これお見合い会場じゃん。

てか、なんで僕まで?

ここにいるのが全員同派閥なのはわかるけど

ヴシュタークって緊急事態以外、社交しないよね。

お見合いの体裁を取った、急を要する案件なのは理解した。


前知識なしの僕は、庭の植え込みを眺めた。

野の花が丁寧に花壇に植え込まれている。

お金持ちっぽくないけど、いっぱい咲いていると可愛い。

建物の中からとても綺麗な御令嬢が出てきた。

頭に野の花が刺さってる。

普通は宝石とか、豪華な絹のリボンとかでしょ?

何故野の花?

お金持ちなんだか、そうでないのかわからん家だな。

まっすぐに会場に来ないで、植え込みの陰に隠れて会場の様子を眺めてる。

成る程!草を纏い風景に溶け込む為の野の草か、納得。

面白い御令嬢だな。

御令嬢は、辺境伯ご子息アラン君を見てる。

まぁそりゃー見るよなー。

アラン君は顔がメチャメチャいいからな。

世の御令嬢は全員必ずアラン君が好きだろう。


あの御令嬢もきっと、上目使いしてクネクネしておべっか並べるんだろうか。

ポッと頬を染め「恥ずかしいですわ」とかクネクネして。

そういうのを見て「やっぱり彼女も一般的な女の子だと確認して納得したかった」僕は認識阻害を発動して

近くに行って様子を見てみようとしたら、

何故か御令嬢が僕を見ていた。僕を見て手を上げたゾ?

いやわけわかんない。

さっきまでアラン君を見てただろキミ?

御令嬢が僕の方へ真っ直ぐ歩いて来る。

何で?どうして?


騎士爵のご子息たちに囲まれた。

あ?避けた?

回り込まれた。

また避けた?

結局騎士団長の息子ボルケーノ君に捕まってる。

かわいそ。

あ、怒らせて追い払ってる。

ボルケーノ君、頭から噴煙出てるよ。

活火山を堂々とあしらう彼女、剛毅だな。


次はフェーラー家の息子に捕まった。

追い払うタイミングを逸したのか。

不憫だな。

フェーラー家評判悪いから、逃げられるといいな。


僕は認識阻害発動したまま、開いた席におじゃました。

フェーラー家の息子はスゲー乗り気だ。

獲物を狙う目だ。

ローレンツ家の御令嬢の目が困ってる困ってる。


辺境伯閣下が、フェーラー家の息子に覇気飛ばしてる。

僕の方まで覇気飛んで来るんですけど。

 確かにローレンツ家は我ら南部連合の食料庫だから

側姫様のご実家に関わって欲しくないのはわかるけど。


フェーラーの息子が退いた途端、辺境伯ご子息様が席確保した。

早業だった。凄い。

御令嬢に強化キャンプ勧めたら可哀相だろ。

いつもああやってまとわりつく女を追い払ってるのかな?

あれ?強化キャンプに食いついてる。

彼女は強化キャンプがなんなのか知らないのか!

止めなきゃ。

辺境伯ご子息がウキウキ去っていったので、僕は御令嬢の前に姿を現した。


僕が姿を現すと、彼女は花が開いたような笑顔を見せてくれた。

ああ、可愛いな。綺麗なだけの人かと思ったら、笑うとこんなに可愛いんだ。

それに、何故か僕の手を握っている。

手が触れていると意識すると、腰骨の裏側の辺りが熱くなってきた。

彼女は、僕の着ている緑色の服が気になると言ってるので

僕は口から出任せを言ってみた。

そしたら彼女、僕と結婚してもいいって。

ローレンツ家は長男、次男いるから彼女の結婚は条件が厳しくないはず。

とか、色々考えているうちに、婚約が決定した。

決めるの早くない?

僕の心のピュアな部分が狼狽してるのに、彼女は落ち着いている。

普通、女の子って婚約者が決まる時、狼狽えたり、うじうじクネクネしたりするよね?

なぜ彼女はクネクネしないんだろう。

僕なんかにクネクネする必要なんかないから?

僕に対し醒めているのかな?

今、心が痛んだ。

でも、全員に醒めてたな。


枯れているのか?

12歳で枯れてるなんておかしいだろ?


ていうか、婚約どころか結婚まで決定していた。

僕に不満はないけど。

彼女の心が枯れてて醒めている理由は追々調べよう。


好かれているのか、ちょっと不安になった僕は彼女を植え込みの陰で

抱きしめてみたら、抱きしめ返された。

背中に手を回され、後髪に指を差し込まれた。

背中を撫で回されてる。

髪も。

ああああ、撫で回さないでぇええええ。

腰骨の裏側がキュンとする。

変な声が出てしまいそうだ。

僕は自分の腕を噛み、声が出るのを防いだ。

侍女が瞬間移動のように現れて、彼女を確保して去って行った。


助かった。フゥ

ありがとう侍女さん。

連れ込んだのは僕だけど、襲われたのは僕だよね?


これは拙い。

結婚までにコレに慣れないと僕は彼女に翻弄されてしまう。

慣れるってどうやって?

単純に接触機会を増やせばいいのかな?

それしか思いつかないし、多分それで合ってる。


今日1日で僕の人生の大きな部分が簡単に決まってしまった。

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