ただひと言「ヤれる」
・・・・フロアじゃ「床」じゃん
「ロアとお呼び下さい」
「わかりました。ロア」
「モブ様、あのお聞きしたい事が」
「どうぞ、なんなりと」
「モブ様、認識阻害?を掛けてらしたでしょ」
モブ君は糸目を再び全開にした。
白目に点瞳いただきました。
点瞳、大好物である。
「なぜなのかしら」
あら、狼狽えてらっしゃる。
「ロア、認識阻害を知ってるのですか?」
「質問を質問で返すのよろしくなくてよ」
「認識阻害は一族の秘伝中の秘伝。我が一族以外の者が知ってしまったら。その者を消さねばならないのです」
「ヒッ」
「どこで認識阻害を知ったのですか?」
この場合の説明はコレ一択である。
「夢で見ました。今日この会場で認識阻害を使えるものが現れる。と」
「その説明で今は納得しましょう。
ですが、認識阻害中の人間を認識できる時点でおかしいのです」
「それはDEXかINTが高いからじゃないかなぁ」
「DEX?INT?」
「器用さと知力です」
「それ、軍用語だよね。人前で使っちゃマズいやつだよ」
「まぁ、大変」
「で、なんだっけ?僕が会場で認識阻害を掛けてた理由?」
「モブ様にはお心に決めた方がいて、私に選ばれたくなかったのかなと」
「そう言う時は、誰か好きな人いますか?ってシンプルに聞くんだよ。
認識阻害の事まで言うからややこしくなる。
ちなみに今まではいません。
今は貴女が好きかな?ちょっと迂闊な所はアレだけど。お嫁に来るまでには迂闊な部分は直してね」
「ん?待って?お嫁??」
「ああ、君が嫁いで来たら研究棟や研究施設は大がかりなものを建てると思うよ。
だから心配いらないんじゃないかなぁ」
「そ そうね。」
私が家から出たくないのは、なんでだったっけ?
ああそうだ。山や野が美しくて、走り回る麦が可愛くて・・・
「なんか、まだごちゃごちゃ考えてるようだけど、
僕ん家に嫁に来ないと君消されちゃうよ?
迂闊だよねぇ。自分で選択肢狭めちゃうんだから」
そう言いモブ君はお茶を飲み干す。
「さて、時間だよ。もう心は決まったかな?
さすがに選択肢がないのは可哀相だから、これを使おう」
モブ君は懐から薄茶色の玉を取り出す。
・・・・導火線が出てる。
この人、この会場を爆破するのかしら。
「こ、これは?」
「爆破なんかしないよ?
これは忘却玉。この玉も一族秘伝。今君と僕が話してた記憶が全部消える。
これで本当に、人生を選べる最後の機会だ。よく考えて。
できたら条件とかじゃなくて、僕をどう思ってるか、将来好きになれるか
僕と子供を作れるかとかそういう観点で決めてね」
私はモブ君の顔をじっくり見る。
糸目であるという部分を除いて顔全体を見る。
超平均的な顔。
「平均的」というのは「整っているとイコール」であると、どこかで読んだ。
モブ君は12歳の子供だから、今はなんとも思わないけど、これは大人になったら
凄く美しい男になるのではないか?
顔じゃない。今考えるのは顔じゃない。
性格はちょこっと漂うS感。うん。悪くはない。
ちょこっと漂うS感が嫌いな女性なんていないだろう。
体つきはすらっとしている。
ほっそりとした手足は長い。しなやかな体つきだ。
筋肉はまだつけてないようだ。
忍者には無駄な筋肉は必要ないはず。
だからきっと生涯ホソマッチョなのだろう。
ホソマッチョ嫌いな女性なんていないだろう。
そういう私もホソマッチョ好きだ。
ただ、ゴリマッチョも好きなんだけど。
頭が豹とかでゴリマッチョなら、妄想が捗る。
おいしい。
あ、モブ君の目が冷たくなった。
ゴリマッチョの事考えたあたりから、冷たくなった。
わき道にそれちゃ、だめなんだ。
今はモブ君だ。
モブ君はなんと言ってたか?
「将来僕と子作り出来るか?そういう観点で選んでね」と言ってたはずだ。
モブ君は12歳だから今はピンとこないけど
(私はショタ好きではない。好きなのはうんと年上)
ヤれるかといえば、ヤれる。
私は一度深々と息を吸い、モブ君の顔を真っ正面からみつめ
「ヤれる」
とひと言告げた。
モブ君は瞬時に顔をそむけ
「まぁそれならいいんだけど」
と顔を真っ赤にし目を泳がせた。
ここまでは12歳にしては大人っぽい子だなーと思ったんだけど
植え込みの陰で私に抱きついてきた。
緊張したのかな?
子供らしくて可愛い様子に胸打たれた私はモブ君をぎゅっと抱きしめ
頭をよしよしして撫で回した。