「お母さんは星座になったんだよ。マジで」
「ちょっとたっくん、いつまで起きてるの? 宿題は? 明日の準備は? 早く済ませてもう寝なさい!」
「うるせーーーーっ!」
夜空に高く吠え上げて、如月託人は部屋を飛び出しリビングへ。
「どういう事だよ、親父!」
庭に出て夜空を見上げていた父親はキョトン、と、
「だから言っただろう? お母さんは星座になったんだよ」
「それがなんでああなるんだ!?」
託人も裸足のまま庭に降りて、今は亡き母親の声を響かせる星を指差す。
「お母さんはM88星雲から来た宇宙人でな。肉体が活動を停止すると、意識は星に帰るんだ。そして星座になって、私達を見守ってくれているんだよ」
「そうよたっくん、ちゃんと歯磨きして、おトイレ行って、お腹出さないでお布団かけて寝るのよ!」
託人はダムダムと地団駄踏んで、
「思ってたのと違ーーーーうっ!」
「たっくん! お腹出して寝るから風邪なんか引くのよ! 小っちゃい頃からそうなんだから!」
「ごほっごほっ、うるへー……!」
「たっくんたっくん、明日の運動会がんばってね。リレーのアンカーなんでしょ? 全員ぶっちぎっちゃいなさい!」
「わーかったようるせーなー!」
「ちょっとたっくん、いくら明日試験だからって、根の詰め過ぎも体に毒よ? そのくらいにしてもう寝なさい」
「わかってるよ、うるせーなー……」
「たっくん、明日は卒業式ね」
ベットに横になりながら、託人は窓から夜空を見る。冬の夜空は高く澄み、星の光がすぐ傍に感じられた。
「それでね、お母さんも、そろそろ卒業しようかなって思うの」
星のひとつがきらり、と落ちる。
「風邪引いた時、看病してあげられなくてごめんね。遠足とか運動会とか、お弁当作ってあげたかったな。ほんとうは、もっともっと一緒に居たかったけど」
ぽろぽろと、星座を形作る星がこぼれ落ちていく。
「でもね、傍に居なくても、お母さんはずっとたっくんの事、想ってるからね」
最後の星がきらめいて、託人は窓から身を乗り出して手を伸ばし、
「お母さんっ!」
そして星座は夜空に消えて、それでも託人の胸にはあふれる程の光があって、
「ったく、うるせーなー……」
我ながらM88星雲って面白いなって思います。
ちゃんと実在してるみたいですが、内容とは特に関係ありません。