来訪者はいつも突然に
刻印も大詰めに差し掛かり、仕上げの乾拭きを終えた時
工房にノックの音が響く
どうぞーーーという間にガチャリと扉が開く
「いやぁー少年、息災かね」
少し酩酊しているであろう30代の女性が扉に寄りかかりそう声を掛けてくる。
「お陰様で、衣食住に恵まれ仕事も順調です」
そうかそうか、と頷きながら工房の隅に置かれた椅子にフラフラと歩みを進め腰掛ける。
「森の中で、泣きながら魔獣に怯えていたお前を拾ってやってやってこうしてギルドの工房を使わせてやってるのは私だもんな」
そう言いながら手に持っている酒瓶を呷る
「いやぁーあの時、別の世界から来たなんて嘘のような話を信じた私に目の狂いは無かったようだ」
うんうんと頷きながら私を見つめてくる…
正直こういう時は無茶な仕事を振ってくる前兆でしかない。
「そんなお前に折り合って話がある」
そらきたぞ
「実はな、とある領主の息子がダンジョンに挑むという事で武具と加護を求めてる。そして道中で直ぐに整備出来る同行者もだ。」
最悪だ
正直、刻印だけなら受けれるが同行となるとそれなりの戦闘スキルが必要になる
自慢じゃ無いが元の世界にいた時もこの世界に来てからも戦いという物に触れた事が無い。
ここは正直にーーー
「あの、私戦った事が」
と言いかけた所で
「ありがとう、お前ならそう言って受けてくれると思ったよ。実は出発は3日後でな、それまでに支度しておいてくれ」
そういうと、どっこらしょという声をあげて腰を摩りながら扉にまたフラフラと歩き始める
ガチャリとノブを捻り、部屋から出る間際に
「あと私も行くから、私の分も用意しておけ」
そういうとバタンと戸がしまる音だけが工房に残った。




