第九十三話 受肉
セイナは今日でダンジョンの調査を終わすと張切り、宿舎である別館から出発して、ダンジョンへと向かった。
早朝の街中には、宿屋からダンジョンへ向けて、出掛ける冒険者の姿がチラホラと見受けられて、食肉になる魔物が居る事で、結構稼げるダンジョンと評判も上々の様であった。
セイナ達はダンジョンの入口に到着すると、入口を警備するギルド職員に挨拶をして、転移の魔法陣のある入り口から40階層のホールへと転移をした。
「さてと、行きますかねぇ、コハク、戦闘モードに成ってくださいねぇ、ルビーはしっかりとクインの背中で待機してくださいねぇ」
セイナは皆に声を掛けた。
「クウーン」
「クン」
コハクとルビーはセイナの指示に返事をして、コハクはセイナの腰の丈まで、身体を大きくした。
クインはルビーの体重が昨日より重みを増した事に気付き、昨日までは生物としての重みを余り感じず、生命体としては不安定な存在であったものが、昨晩でセイナの魔力を吸収した事で、生物として完全な存在へと変わった事を確信をした。
セイナ達が階段を下りて、41階層の入口に出ると周りに岩場が広がり、奥に細い木々が点々と生えている感じで地面には背丈の低い草が生い茂り、処処に岩が点在していて森と云うよりは、林と云った雰囲気のステージであった。
セイナ達は林の中に入り、周りを注意深く、見回りながら歩いていると、木の近くに生えている草を見ると、見覚えのある薬草に見えて、鑑定すると切り傷に効く薬草、ほろらぎ草と鑑定された。
「オッー、薬草が生えてますよ、此処は薬草も採取できるステージなんですねぇ、其れは有難いですねぇ、今日は採取しませんが、種類を確認する価値がありますねぇ」
セイナは採取したいが、魔物の生態調査がメインなので、今回は諦める事にした。
「シルフィ、私、薬草の種類を確認するから、警戒を宜しくねぇ、コハクも宜しく」
「そうか、分かったのじゃ、只、余り時間を掛けるで無いぞ」
「うん、分かってますよ」
セイナは薬草と思われる草を鑑定をして、見て回る事にした。
林の中を歩いているとオーク、オーガ、ロックリザード、キルスパイダー、ビッグアント、ビッグボアと多種な魔物が一体から六体の集団で現れて、サディオスとコハクがメインで討伐していった。
「う~ん、ねぇ、シルフィ、私、また、魔力を吸い取られている感覚が有るんだけど、何か原因、分かるかしら」
セイナは自分の身体から、魔力が抜けて行く感覚があり、ダンジョンに入る度に、大小に関わらず、時折感じる感覚であった。
「さぁ、なぁ、我には分からんよ、コアが何かしておるのかもなぁ、まぁ、セイナに害をなす事は無いはずじゃ」
シルフィは何となく分かっていたが、惚けて知らんふりをした。
「まぁ、良いけどねぇ、身体が軽くなる感じだから、でも、私の魔力量って、一体、如何なっているのかしら、謎ねぇ」
セイナは結構な魔力量をダンジョンに、吸収されているはずなのに、何とも無い自分が良く分からなった。
「それは我も、そう思うぞ、セイナ殿は、どれだけの魔力量を内包しているか、是非とも知りたくなる」
ハクは近頃、セイナの魔力をコントロールするのが、結構辛くなっていた。
そんな会話をしている間に、サディオすとコハクの活躍のお陰で、41階層をクリアして、42階層へ入ると、また、洞窟の様な岩肌の壁で、今回は前の階層よりも天井が高く壁の幅も広くなっていた。
「うーん、今までの洞窟より通路が広くなってますねぇ、警戒しましょう」
セイナは通路が広くなっている事に警戒をする事にした。
セイナ達が洞窟を進むと初めに出くわしたのが、オーク二体とオークゼネラル一体の三体の魔物で、その時何故かルビーがオーク一体に勝手に飛びつき、喉を噛みつき、噛み千切って倒して、そのままオークの身体を半分程、食べてしまった。
セイナはルビーの行動に呆気に取られて、眺めている間に、コハクがゼネラルに止めのアイスランスで、頭の額に当てて倒して、サディオスは止めにオークを首を刎ねて討伐をした。
「ルル、ルビー、如何しちゃったの、何故、急に・・・・」
セイナは、ルビーがオークの死体を夢中で、食べている姿を見て、思いっきり動揺をしていた。
「セイナよ、動揺する気持ちは分かるが、ルビーは受肉したてで、血肉が足らんから、補充しておるんじゃ、其処の処を理解してやってくれんか」
シルフィはセイナに説明をして、動揺をしているセイナを落ち着かせる様にした。
ルビーはオークの身体を半分食べ終わってから、血で汚れた身体を自身で浄化魔法を掛けて、綺麗にした後に、セイナの前に来て、セイナの顔を見て、語りかけた。
「クウーン、クン、クウーン」(ごめんなさい、如何しても、身体が欲してしまい、我慢が出来ませんでした)
「そうか、うん、でも、此れからは私に一言、言って頂戴ねぇ、ルビー」
セイナはシルフィの説明もあり、ルビーの謝罪に理解を示して、抱き上げた。
セイナはルビーを抱き上げて、頬擦りをして、愛情が有る事をルビーに示すと、ルビーも嬉しそうに、セイナの頬に鼻を擦りつけていた。
セイナはルビーを抱きしめた後に、また、クインの背中にルビーを乗せて、探索の続きをする為に、洞窟の中を皆に声を掛けてから歩みだした。
「ヨッシ、探索の続きをしましょうか、皆、行きますよ」
セイナ達は、それから、勢いをつけて、前進して、オーク、オーガ、タイガベア等を倒し続けて、42階層をクリアして、43階層へと進んだ。
そして43階層へ進むと、其処からオーク、オーガ等の他にミノタウロスが現れて、セイナとコハクとサディオスの三人で、何とか討伐して、スカイに収納をさせた。
「フウ~、ミノタウロス、強かったァ~、初めて戦ったけど、オーク何か、まだ、可愛い方ねぇ」
セイナは何とか倒して、溜息を吐いてから、何とか倒して安堵した。
「俺も初めて、戦ったが、棍棒の振りの力強さが半端じゃ無かったよ、未だに手が痺れてるよ」
サディオスは、痺れている手を振っていた。
セイナは、此処で小休止を取って、ミノタウロスでの戦いで、セイナも手が痺れていたので、その痺れを取る為に一息入れた。