第九十一話 コハクはまだまだ子供で居てねぇ?
セイナ達は新しい仲間を増やして、32階層へ向かうと、其処もまた、岩場の壁で、29階層までの景観と同じで、魔物の種類はトカゲ系、ウルフ系、ホブゴブリン、オーガが新たに出る様に成ったが、コハクの前では敵では無かった。
38階層からはロックドラゴンが現れて、セイナ達は一瞬、驚いたが、アースドラゴンよりは格下で然程強くは無く、難なくコハクが倒せたので、其のままコハクが突進して、階層を走破して魔物達を倒して、ボス部屋のある40階層まで、辿り着いた。
セイナ達は何時もの様にボス部屋の前で、休憩を取っている間に、セイナは此処まで割りと時間が掛かったので、今日は此のボス部屋を攻略してお終いにする事を、シルフィとサディオスと相談をして決めた。
セイナはコハクに寄りかかりながら、ルビーを抱いてモフモフタイムを楽しんで、心を癒しながら、軽くお腹に入れる為にクッキを頬張りながら、水を飲んでいた。
「ルビーは可愛いですねぇ、女の子ですから、コハクのお嫁さんに丁度良いですねぇ、コハク、この子と仲良くするんですよ」
「クウーン」
「何ですか、コハクは私の方が良いのですか、それは嬉しいけど、夫婦になるのはこの子ですよ、私は人ですから、無理ですよ」
「ルビーは大きく成ったら、コハクと沢山、可愛い子供を産んで、私を幸せにして下さいねぇ」
「クウーン、クン」
「頑張ってくれるのねぇ、ルビーは良い子ですねぇ、でも、強く成って、コハクを尻に引く位に成ってくださいねぇ」
「クウーン」
「うふふ、そうですか、強く成りますか、コハク、優しくしないと、怖いわよ、私はルビーの味方ですからねぇ」
セイナはコハクに対して、ルビーを番のパートナーとして、大切にする様に意識付けをした。
「ところで、シルフィ、ボス部屋の魔物は何ですかねぇ、予想を聞かせて貰いますか」
セイナはオーガとドラゴンが出たので、その親玉が出ると予想をしていた。
「まぁ、そうじゃなぁ、キングオーガとアースドラゴン辺りが妥当では無いかの」
シルフィは少し考えて、傾向としてセイナに答えた。
「うむむ、キングオーガですか、手強そうですねぇ、アースドラゴンも可なり強敵です。サディオスは倒せますか」
「正直、戦った事が無いから判らない、勝てる自信も無い、苦戦する事だけは間違いない」
サディオスはオーガまでは、何とか勝てるがキングは難しいと考えていた。
「ならば、連携をして戦いましょう、前衛は私とサディオスで、コハクは魔法で後方支援をお願いします」
セイナはサディオスと連携を取って戦う事を選択して、コハクを後方支援に据えた。
「ハク、シルフィ、万が一の時は救援をお願いしますねぇ、なるべく自分達でやり遂げたいけどねぇ」
セイナは此処まで来ると勝手が違ってくるので、念の為にハクとシルフィにも応援を頼んだ。
「勿論じゃ、セイナ達を見殺しにする心算は無いのじゃ」
「当然だ、危なく成れば助ける」
シルフィとハクはセイナ達の命を守る存在であると自負している。
セイナは作戦の打合せを済ませて、軽く準備体操をしてから、ボス部屋へ挑む為に扉に手をあて、押し開けて、全員で突入をした。
セイナ達が突入してから、入口の扉が閉まり、現れたのが、キングオーガ、オーガ、ロックリザードの三体であった。
セイナは二体では無く、三体であったので、セイナとサディオスで、オーガとロックリザードを先に倒す作戦に変更して、キングオーガの足止めをコハクに任せる事にした。
「コハクはキングオーガを足止めして下さい。私とサディオスで、オーガとロックリザードを倒しますから」
「クウーン」
「サディオス、先にオーガを倒します。良いですか」
「分かった」
セイナはオーガに突進して、棍棒を持っている腕に、氷術の魔力を槍先に籠めて、一突きして、棍棒を落とした処で、右胸を一刺して、膝を付いた処をサディオスが首を切りつけて倒した。
セイナは、サディオスがオーガへ攻撃を仕掛けた時には、ロックリザードへ向けて、突進して、脇から首を一刺しして攻撃を仕掛けて、直ぐさま追撃を加えた。
コハクはセイナ達がオーガを責めている間、キングオーガにアイスランスで攻撃をして、足止めする心算が、一発目に心臓を打ち抜き、即死させてしまい、ショゲテいた。
「クウーン、クン」
あっ、しまった。足止め出来なかった。倒しゃった。
セイナがロックリザードに追撃した直後に、サディオスが止めに首を切りつけて、討伐に成功した事を確認してから、セイナは直ぐにキングオーガへ攻撃を仕掛けようとして、キングオーガを見た時には、既に倒れていた。
セイナはキングオーガが倒れているその横で、コハクがショゲテ居る姿を見て、笑顔でコハクに駆け寄り、コハクの頭を撫ぜて褒めた。
「あら、コハク、何をショゲテいるの、キングオーガを倒してくれたのでしょう、ありがとう、良くやったわねぇ、チュッ」
セイナは頭を撫ぜた後に抱き付き、腰くの頬にキスをした。
「クウーン」
コハクはセイナに褒められて喜び、尻尾をグルグル回して、セイナの頬をペロペロと舐めていた。
セイナ達は倒した三体の死体をスカイが収納した直後に、ボス部屋の奥の扉が開いて、全員で開いた扉からホールへと出た。
コハクはホールへ出ると、直ぐに元の小さいコハクの姿に戻り、セイナに抱かれて、上機嫌で尻尾を振り喜んでいた。
「コハクは本当に強いですねぇ、何時までも幼い子供だと思ってましたが、もう立派なフェンリルですよ、でも、私の前では、何時までも、今のままコハクで居て下さいねぇ」
「クウーン」
「セイナ、それではコハクが独り立ちが出来なくなります。それでは困りますよ」
クインがセイナに苦言を呈した。
「えへ、クインに怒られちゃいましたねぇ、でも、もう少しだけ、許してねぇ」
セイナ達は、そんな一時もあり、少しゆっくりとしてから、出口に転移する魔法陣の上に立ち、地上の出口に全員で転移をした。