第九十話 コハクの番?
ボス部屋に突入したセイナ達は、入口の扉が閉まると、目の前にジャイアントキラアント、ジャイアントキラマンティス、レッドストーンリザードの三体が現れた。
「サディオス、貴方はカマキリのお化けねぇ、コハクは蟻のお化けを頼むわ、私はトカゲをやるわ」
セイナはサディオスとコハクに指示を出して、戦闘を始めた。
戦闘が始まって、直ぐにコハクは巨大化して、ジャイアントキラアントの首を一瞬で爪をむき出して切り落とし倒して、サディオスはジャイアントキラアントマンティスの鎌を上手く捌き、鎌と腕の関節の処を切り落として、危なげなく戦っていた。
「フーン、ヤァー、ソコダー、ヤァー」
サディオスはジャイアントキラマンティスの鎌を切り落とした。
「次行くぞ、トォリャー・・・・・」
セイナはレッドストーンリザードの脇に廻り、首を突いて内部から凍らせて、三ヶ所突いて、完全に呼吸が出来なくなるようにして、窒息死させて討伐した。
「さぁ、行くわよー、トッリャー、エッイ、先ずは一発目よ」
セイナはレッドストーンリザードの脇に廻り首を先ずは一突きして刃先に、氷の魔力を流した。
「次、いっくわよー、トォリャー、二発目・・・・・」
セイナは二回目、三回目と首を突いて首の中の細胞を凍らせて、窒息死させた。
サディオスは残りの片方の鎌も切り落として、最後に首を切り倒して、ジャイアントキラアントマンティスを定石通りの基本的な戦いをして倒した。
セイナ達は無難にボス部屋の魔物を討伐して、死体をスカイに収納して貰い、ボス部屋の奥に有った扉が開き、其処からホールに出て、魔法陣の上に立って、ダンジョンの出口に転移した。
セイナは昨日同様に入口を警備している冒険者ギルドの職員に、11階層から30階層の状況を説明をして、21階層は草原ステージになっていて、魔物は其処まで出現した魔物が多数で群れを成している事説明して、可成り難解である事を説明をした。
「ご苦労様です。そうですか21階層ですか、分かりました。ギルドの方でも検討して対応を致します。本日はお疲れ様でした」
冒険者ギルドの職員は一瞬、渋い表情をしてから、笑顔になり、セイナ達に労いの言葉を掛けた。
セイナ達はそれから、日が暮れた街の街灯に明りが付いた街の中を歩いて、王家の別館に戻り、身体を休める事にした。
セイナは何時もの小さくなったコハクを抱き、上機嫌で街中を歩き、コハクに頬擦りをしたりして、心を癒していた。
シルフィはその様子を何とも言えない、複雑な心境で眺めながら、ハクと如何したものか話して、クインもコハクのセイナへ対する依存度が高い事を心配していた。
「ハクよ、コハクにも早く番になる相手を、探さんと拙くないのかの」
シルフィはセイナとコハクの関係に不安を抱き、ハクに問いかけた。
「そこが、一番難しい処なのだがなぁ」
ハクも其処が心配なところであるが、相手になるものが現状、存在しないのが悩みの種であった。
「せめて、あのダンジョンに雌のシルバーウルフの子がいれば、番に出来るのですが」
クインがポツンと呟いた。
「オォ~、それじゃ、何とか成るかも知れんぞ、う~ん、コアに創らせるか」
シルフィが、クインの呟きに閃き、早速明日にでも実行する事を考えた。
その晩、セイナは夕食後にコハクとクインと一緒にお風呂に入り、疲れを癒して、その後、ベッドにコハクを抱きながら、腰掛けて、明日の探索に備えて装備の点検をしてから、何時もの様にコハクを抱いて眠りに就いた。
早朝、セイナは気分良く、目覚めてクインに声を掛けて、朝食を食べに食堂へコハクを抱いて行き、朝食を食べてから、部屋に戻り装備を身に着けて準備を整えてから、集合場所の別館の玄関の前に行き、軽く体操しながら、シルフィとサディオスとハクが来るのを待っていた。
セイナは全員揃った処で、ダンジョンに向けて出発して、シルフィに31階層について、21階層の様に特別なステージに成っているか如何か、考えを聞いた。
「ねぇ、シルフィ、31階層も何か変わったステージに成っていると思う」
「うーん、そうじゃなぁ、可能性はあると思うがの、只、草原ステージでは無く、別の物では無いか、例えば森と砂漠とかの」
「エ~、森はともかく、砂漠は嫌だなぁ、砂埃が凄そうで嫌だわ」
「まぁ、行けば分かる事じゃ、嫌でも何でも、進まなきゃなるまいって」
シルフィはセイナの反応に、苦笑いしながら答えた。
「まぁ、そうだけどねぇ、頑張ろうねぇ、ねぇ、コハク」
セイナは笑顔で、コハクに声を掛けていた。
セイナ達がダンジョンの入口に到着すると、何組か冒険者のパーティーが、ダンジョンの中に入っているのが見られて、セイナは少し嬉しい気分になった。
そして、セイナ達の処に冒険者ギルドの職員らしき男性が来て、挨拶をしてきて、セイナ達も挨拶をすると、その職員はダンジョンについて報告をしてきた。
「希望の盾の皆さん、お陰様で20階層までは開放する事が出来ました。21階層については、念の為にBクラスのパーティーとAクラスのパーティーを指名して、何処まで対応できるか試してから、条件付きで開放するか如何かを検討する事になりました。今日も気を付けて探索して来てください」
冒険者ギルドの職員はダンジョンの件の報告をセイナ達に話してから、お辞儀をしてギルドの建物に戻って行った。
「まぁ、いくら冒険者と言っても、命あってのものですものねぇ、慎重に事を進める事は良い事だわ」
セイナは冒険者ギルドの対応に満足した。
セイナ達は魔法陣のある入り口から、ダンジョンに入り、30階層のホールに転移して、コハクには戦闘モードに成って貰い、そこから、階段を下りて31階層へと進んだ。
31階層は森と云うか、山の麓と森と云った雰囲気で、獣道が通っていて、その獣道を歩いて奥に進むとゴブリンが入たり、オークが徘徊してたりと、ウルフ系にトラ系居たり、クマ系の魔物も居たりで、結構バラエティーに富んだ魔物達が闊歩していた。
セイナ達は極力戦闘は避けて、出ぐわした魔物だけを討伐して進んでいたが、セイナは何か違和感を覚えて、シルフィに確認をした。
「ねぇ、シルフィ、私、また、魔力を吸い取られている感じがするんだけど、気の所為じゃ無いわよねぇ」
「うーん、そうかのう、気の所為じゃないかの、なぁ、ハク、そうであろう」
シルフィは知っているが惚けて、ハクに振った。
「我は知らんぞ、気の所為ではないのか」
ハクも惚けていた。
「そうかしら、変ねぇ、まぁ、良いわ、害はなさそうだから」
セイナは違和感は有るが害は無いと思い、気にしない事にした。
セイナは暫く森の獣道を歩いていると、違和感は消えて、逆に何かスッキリした感じを受けて、身体が軽くなり、歩いていると、突然目の前に、可愛い白銀のウルフの子供がセイナの胸元に、抱き付いてきた。
「クウン、クーン」
「まぁ、可愛い、シルバーウルフの子かしら、親と逸れたのかしら」
「セイナや、此処はダンジョンじゃ、魔物の子なんぞ、居る訳なかろ、おそらくダンジョンから、セイナへの贈り物じゃ、ティムしてやるのじゃ」
「えっ、そうなの、可愛いから、この子は雌ねぇ、それじゃ、目がクリっとして可愛いから、ルビーねぇ、貴方は今日からルビー、私の従魔よ、宜しくねぇ」
「クウーン」
シルバーウルフの雌の子供の身体が一瞬、光を放ち、ティムに成功をした。
「う~ん、可愛い、ルビーは危ないから、クインの背中に乗っててねェ」
セイナは笑顔でルビーをそ~とクインの背中に乗せた。
「クイン、ルビーを宜しくねえ、」
「セイナ、任せて、大切に保護しておくから、セイナは安心して探索を続けて」
クインはコハクの番になるルビーを、自分の子として、大切に扱う事にした。
それからセイナ達は、素早く行動をして、戦闘を最小限に抑えて、31階層を抜ける事に成功をして、32階層へ向かった。