第八十七話 ダンジョン開放へ向けて
セイナとサディオスは危なげなく、ボス部屋の魔物、エルムキングシームとブラッドキングボアを倒して、10階層をクリアして、ボス部屋の奥の壁に有った扉が開き、セイナ達はその開いた扉からボス部屋を出て広いホールへと出た。
セイナ達は正面に次の階層に続く階段があり、ホール右側と左側の魔法陣が、床に描かれていたスペースが有り、右側の魔法陣は光を放ち、左側は特に何も起こっていなかった。
「セイナ、右側の魔法陣が出口に出る物で、左側は入り口から、此処に運ぶ魔法陣じゃ、もう帰るからの、右側の魔法陣いで良いでは無いかの」
シルフィが両側にある魔法陣について、セイナに教えた。
「そうねぇ、ダンジョン攻略って、結構時間が掛かるものなのねぇ、それじゃ右側の入り口の処に出る魔法陣で戻りましょう」
セイナは地上の入口の処に出る魔法陣を選んで、戻る事にした。
セイナ達は魔法陣の上に立つと、まるで全身をスキャンされている様な光のリングが、足元から出て、頭の先まで、光のリングが通過すると、今度は足元へと下がると、突然目の前が光に包まれた。
セイナは眩しくて、目を一瞬閉じて、そして目を開けると目の前に扉が有り、周りを見るとシルフィとサディオスにハクも全員が無事に揃っていて、カーラ、サーリ、スカイもセイナの両肩と頭に其々待機していた。
「此れが出口かしら」
セイナは一言いってから、目の前にある扉を開けた。
セイナはその扉の外へ出ると右手にダンジョンの入口があり、如何やら無事に戻れたと安堵して、深呼吸をした。
それから全員が外に出て、皆も深呼吸をして、外に出れた事に、自然と笑顔になり、セイナは明日からの11階層に行く方法を聞くために、シルフィに話しかけた。
「シルフィ、ダンジョンの入口の奥に有る扉が、さっきまで居たホールに行く為の入口なのかしら」
「多分、そうであろうなぁ、我も実際ダンジョンは初めてだから、詳しい事は分らんのじゃ」
シルフィはダンジョンは造った事は有るが、挑戦したのは、今回が初めてであった。
「あっ、すいません、私は希望の盾のセイナと申します、10階層までは問題有りませんでした。明日から10階層まででしたら、開放して良いですよ」
セイナはダンジョン入口を警備していたギルドの職員に報告をした。
「それはお疲れ様です。では明日から、段階的に開放を致します」
ギルド職員は笑顔でセイナ達を労い、明日から段階的に開放する事を伝えてきた。
セイナ達は報告を終えて、取敢えず、王家の別館に帰る事にして、日が暮れて街の街灯に灯りが付き、夜の街並みは、その灯りで彩られて、幻想的な感じに見えた。
この世界の夜の街は店の灯りで、其れなりに明るくはあるが、お店の無い処は暗くて、殆ど見えないが、此の街は街灯のお陰で、万べなく街が明るかった。
街は夜の賑わいも有って、人々は行き交い、意外と賑わっていて、その中をセイナ達は王家の別館へ向かって歩いていた。
「ホウ、中々賑わっているでは無いか、とてもダンジョン都市とは思えん賑わいじゃ、冒険者より、観光客の方が多いのではないか」
シルフィは街で行き交う人々を見て、冒険者は殆ど見かけなかった事に違和感を感じた。
「まぁ、仕方が無いですねぇ、まだ、ダンジョンは開放されてませんから」
セイナは今の段階では冒険者が少ないのは仕方が無いと考えていた。
「セイナ、明日から如何する。11階層から探索時間が、更に長くなるのではないか」
シルフィは明日からの調査は長く成る事を予想して、セイナに如何するのか確認をした。
「そうですよねぇ、野営の準備をした方が良いかも知れませんねぇ」
「では、コハクとクインも連れて行かなければ、戻れなければ、機嫌が悪くなるぞ」
ハクはコハクとクインの事が気掛かりになり、セイナに確認をした。
「そうねぇ、帰ってから、クイン達と相談するわ」
セイナはコハクが拗ねて、モフモフタイムが出来なくなる事が何より嫌だった。
セイナ達は王家の別館に到着して、直ぐに自分達の泊まる部屋に戻り、着替える事になり、セイナも自分の部屋に戻るとコハクがセイナに飛びついて来た。
セイナはコハクを受け止めて抱きかかえて、コハクの顔に自分の顔を擦り付けて、もふもふを味わってから、直ぐにシャワーを浴びて、それからジャージに着替えて、コハクを抱いて、クインと共に食堂に行った。
セイナ達が食堂に着くと、シルフィとサディオスとハクが先に食事を始めていて、セイナも賄いのシェフに料理をトレーに乗せて貰い、コハクとクインの分も用意して貰い、シルフィの隣に座り、コハクとクイン分は、シェフがセイナの席の後ろの床に、皿に乗せたお肉を置いて貰った。
「セイナよ、国王と王妃は明日の朝に王都に発つそうじゃ、セイナに宜しくと言っておったぞ」
シルフィは王妃エリザベスからの伝言を、セイナに伝えた。
「うん、予定通りですねぇ、でも、隣国とも良い関係が結べたので、良かったですねぇ、アイラナさんとは中々会えなくなるのは淋しいですけど」
セイナはアイラナに会えなくなる事が淋しく思えていた。
「そうじゃな、セイナから会いに行けば、公務が無い時なら何時でも会うそうじゃ、アイラナがそう申していたそうじゃ、セイナと我らなら城で歓迎するそうだぞ」
「う~ん、それは如何云う意味なの」
「何でも、城の中に我とエルフィとセイナの絵画が飾ってあるそうじゃ、建国と国を災厄から救ってくれた大恩人と云う事での」
「う~わ、恥ずかしい、えっ、なんで、私の絵も飾っているの、シルフィとエルフィなら分かるけど」
「何、我がセイナのした事を全部、国王のアザシンに説明しておるからの、当然じゃ」
シルフィはセイナの事を相手に知らせる事は当然と自慢げに言った。
「もう、余計な事をして、シルフィは、まぁ、良いわ、其れより明日からダンジョンに泊り込みで、階層をクリアして行きましょうか、余り時間を掛ける訳には行かないわ」
セイナはダンジョンの調査を早急に終わらせて、一刻も早く一般の冒険者に開放したいと考えた。
「そうじゃなぁ、今回は50階層までの調査じゃ、ギルドの管理できる階層じゃ、それ以上、上の階層は冒険者の自己責任と云う事じゃ」
シルフィは冒険者ギルドが管理出来る階層の事を、セイナに伝えた。
冒険者ギルドでは、巨大なダンジョンについては、管理する階層を公表して、管理下の階層であれば救援など、冒険者に何か有れば救助に向かうが、管理外の階層へは何も出来ない事を明確にした。
冒険者達には、そこへ挑む事を慎重に考えさせて、全て自己責任である事を明確化する事で、二次被害を防ぐ事と無茶な探索を控えさせる狙いがあった。