第八十四話 ダンジョン都市で二か国会談開催
セイナは一夜明けて、朝食を摂り、直ぐにダンジョン都市へ向けて、王家の馬車は出発して、今日の日暮れまでには、ダンジョン都市の手前の街に着く予定になっていた。
ダンジョン都市が出来てからは、魔物の数も減り、森の開発が進み開拓がされて新しい小さい街がいくつもでき、農地の開墾され作物の収穫が増えて、人々の表情は何時も笑顔で活気づいていた。
次の街までの道中は平穏で、特に問題も無く順調に進み馬車の車窓から見る景色も以前来た時とは違い、森から畑に変わり、人々は畑仕事に従事していた。
「この辺は随分と景色が変わったのじゃ、以前は森しかなかったのにの、随分とまぁ、此処の領主も頑張ったものじゃ」
シルフィは車窓から見る景色を見て、微笑みながらセイナに告げた。
「うん、そうだねぇ、そんなに日にちが経っていないのに凄いねぇ」
セイナはシルフィの告げた言葉に答えて感想を言った。
「この辺もそうだが、王都周辺もだいぶ作物の育ちが良くなって、久々の豊作だと文官が話っておったの」
国王エリナスは微笑みながら、収穫の改善をした事を喜んでいた。
「これもセイナちゃんのお陰ねぇ、流石は私の自慢の義妹ねぇ」
王妃エリザベスは笑顔で、セイナの事を自慢げに褒め称えた。
「そうじゃなぁ、後は私がしっかりとこの国の舵取りをせんといかんなぁ、今回のエンライン王国との話合も両国にとって実りあるものにしたいの」
国王エリナスは今回の会談で、良い関係を築きたいと考えていた。
「王よ、その会談には我も同席させて貰うのじゃ、なんせ、相手の国王アザシンを指名したのは我なのだからの、見届けねばならんのでの」
シルフィは国王エリナスに、会談の場に同席させて貰う事を告げた。
「シルフィ様も参加すると云う事でしたら、歓迎いたします。先方も文句は言わんでしょうから」
国王エリナスは会談にシルフィの同席をする事を歓迎をした。
「王よ、我は両国に共存共栄を求める。その方向で話を進めて欲しいのじゃ」
「共存共栄ですか、うーん、それが出来れば、私達も歓迎いたします。一国でも味方になる国が在った方が、国は安定しますからな」
「うん、そうじゃなぁ、我はこの先の文明が発展した未来を見たいのじゃ、セイナはその為に、この世界に来たと思っておる」
シルフィはセイナを見ながら、国王エリナスに自分の願望を話した。
そんな会話をしていると会談の場所と成る迎賓館の隣にある王家の別館に到着して、そこで宿泊して明日からの会談に備える事にした。
そんなシルフィの想いを受け取った国王エリナスは、翌日シルフィを伴い、エイライン王国の国王アザシンと会談に挑んだ。
「これはシルフィ様もお越しですか、今日は宜しく御願いします」
「うん、久しぶりと云うほどではないが、元気で何よりじゃ」
「国王アザシン殿、初めまして、私はエリナスと申します。今日は宜しく頼みますぞ」
「これはこれは、挨拶頂き感謝致します。国王エリナス様、私は成りたての国王です。如何かお手柔らかにお願いします」
この挨拶から会談が始まり、国王エリナスと国王アザシンとの半日に及ぶ話合いが行われ、様々な分野での協力と交流、そして互い共存共栄を果たすための同盟を正式に結ぶ事に成り、それを見届けたシルフィも上機嫌であった。
会談が行われている間に、セイナは王妃エリザベスと王妃に成った聖女アイラナと共にダンジョン都市の街を観光をして回り、護衛にサディオスを伴い買い物などをして楽しんでいた。
「しかし、この街並みはダンジョン都市の街と言うよりも未来都市と云った方が良いくらいねぇ、それに乙女心を思い出すメルヘンティックな風意気も良いわねぇ、セイナちゃん」
王妃エリザベスは街並みを見ながら、セイナに微笑みながら感想を述べた。
「アッハハ、そうでーすねぇ」
「ウッフフ、セイナさん、久しぶりに来ましたが、だいぶ住人も増えて、活気があって、良い街に成りましたねぇ、ダンジョンもそろそろオープンするんですよねぇ」
聖女アイラナは街を行き交う住人の様子を見ながらセイナに尋ねた。
「はい、明日から私とサディオスとシルフィの三人で、ダンジョンの中の調査をする事になってますよ、其の結果次第で、冒険者の方達に開放する事になってます」
セイナは明日のダンジョンの調査の事を笑顔で、二人に説明をした。
「サディ、明日はしっかりセイナちゃんを護衛するんですよ」
「分ってますよ、母上、セイナさんの事はしっかり守って見せますから」
「あら、逞しい事を言ってますねぇ、頑張って男の威信を上げなさいねェ、期待してますよ」
王妃エリザベスはニヤと微笑み、サディオスを激励をした。
最近のサディオスはセイナに対して、以前ほどの敵対心は無くなり、セイナに関してはその能力と健気さと、苦しんでいる人々に対してのひた向きさに共感を持つようになっていた。
サディオスは、セイナが決して自分の為にだけ能力を使わずに、この国の発展の為に尽力している姿勢に更に好感を持つようになり、自分には決して真似のできる事では無い事も自覚して、セイナを支える事に尽力する事が自分の使命と考える様になっていた。
最後にセイナ達はメルリラス商会の店舗を視察も兼ねて買い物をしてから、会談が行われた迎賓館に行き、食事会に参加する事に成っていた。
セイナは食事会に参加して、美味しい食事を堪能して、アイラナとは、これからも友人として交流していく事を約束して、明日からのダンジョン調査の為に早めに別館に戻り休む事にした。
「明日からダンジョンの調査か、何だか楽しみだわ、コハクはクインと留守番に成るけど、大人しく待っててねぇ」
「クウン」
「セイナ、問題無いと思いますが、気負付けて行って来てくださいねぇ、貴方もセイナの事を頼みましたよ」
クインはセイナが初のダンジョンアタックする事を心配して、同行するハクにも注意喚起をしていた。
「ウフフ、クインは心配性ねぇ、大丈夫よ、あそこのダンジョンのコアは私の管理下に成っているから、私の命の危険は無いわよ、それじゃ、皆お休みねぇ」
セイナはクインを安心させる事を言って、眠りに就いた。