第八十二話 ダンジョン都市へ出発する
セイナは再び、王都のクラウンの屋敷に戻り、そして、直ぐにエルミナの居る執務室へと訪ねると、其処へ聖女である王太子妃ミレーナがエルミナと談笑をしていた。
「只今、戻りましたエルミナさん、ご無沙汰しておりますミレーナ様、今回ご懐妊したとお聞きしております。おめでとう御座います」
セイナは元気よくエルミナとミレーナに挨拶と祝いの言葉を掛けた。
「お帰り、セイナ」
「お帰りなさい、祝ってくれてありがとう」
エルミナとミレーナは笑顔でセイナの帰りを歓迎をした。
「セイナさん、今回ダンジョン都市にお父様たちの護衛に行くそうですねぇ、本来は私も行きたい処ですが、妊娠したので、今回はお留守番に成ってしまいましたわ、向こうで聖女アイラナ様に会ったら、宜しくお伝えしてくださいねぇ」
ミレーナは少し残念そうに表情でセイナに話した。
「うん、セイナ、今回は私の兄も同行する事に成ってねぇ、先方の国王アザシン様は可成り若いと聞いてねぇ、長い付き合いになるだろからと、父の命で、顔繫ぎの為に同行する事になったのよ」
エルミナはセイナに同行者に、兄の王太子エディオンも同行する事を説明をした。
「あぁ、成程、確かにアザシン国王様はお若いですねぇ、23か24歳くらいじゃないかしら、え~と、そうなると他に王妃様も同行するのですか」
セイナは確認の為に、義理の姉でもある王妃エリザベスの同行も確認をした。
「うふふ、勿論よ、お母さまはセイナちゃんと、一緒に居られると喜んでいたわよ」
ミレーナは笑いながら、セイナに伝えた。
「うっ、またあの胸圧に襲われるのかしら、結構苦しんですよ、あの大きい胸は、私にとって凶器でしかありませんよ」
セイナは王妃の愛情攻撃を恐れていた。
「うふふ、そうだよねぇ、あの胸は確かにねぇ、私も幼い頃は何度か死に掛けたわよ、確かにセイナの言う通り凶器と云えるかもねぇ」
エルミナは昔の事を思い出して、笑いながらセイナの云う事に同情をした。
「まぁ、あれだけ大きいとそうなるのかしら、私はセイナさんのお陰で少しは大きくなったけど、お母さまに比べたら半分よねぇ」
ミレーナは自分の胸と王妃様の胸を比較して感想を述べた。
「それで、セイナ、明後日出発する予定だから、それまでは休んでいると良いわ、向こうに着いたら、ダンジョンの探索も始まるから、ゆっくりと出来なくなるだろうからねぇ」
エルミナはセイナに出発の日程を伝えて、旅の予定表を渡した。
「はい、分りました。処でエルミナさんの出産予定日はいつ頃なのですか」
セイナはエルミナのお腹を見て、腑と気が付いて尋ねた。
「うーん、医師の話では、何時産まれても可笑しくないと、云われているけどねぇ」
エルミナは自分の大きなお腹を摩りながら、セイナに伝えた。
「そうなんですか、でも、もう今日中には産まれる感じですけど、私の鑑定では、そう出ていますよ」
セイナはエルミナを鑑定をして、出産直前と表示されていた。
「へぇー、セイナはそこまで見れるのねぇ、って、あれ、来たかもしれない」
エルミナは急に陣痛に襲われた。
「まぁ、大変、直ぐにエルミナさんをベッドに連れて行かなくちゃ。セイナさん手伝ってくれる」
ミレーナは冷静にセイナに協力を頼んだ。
「はい、肩をかしますねぇ、シルフィは居るかしら」
セイナは近くに居たクインにシルフィを呼ぶように念話で頼んでいた。
セイナはミレーナと二人で、肩を貸しエルミナの寝室へと運び、ベッドに寝かせて、下半身に身に着けている下着などを脱がせて近くに有るタオルをベッドの上に何枚か重ねて、出産の準備に奔走した。
それから、ユリエラとサーラも応援に駆け付けて、お湯の準備や出産に必要な物を次々と用意をして、エルミナの出産に備えて着々と準備を進めていた。
セイナはユリエラとサーラが来たのを確認すると、王城に王宮医師と助産婦師を呼びに向かい、王城の玄関の警備兵にエルミナの出産の件を話して、医師と助産婦師の手配をお願いした。
そしてセイナは医師と助産婦師を連れて、クラウンの屋敷に向かい、そして、エルミナの処へ案内をして、一息いれた。
セイナが医師と助産婦師を連れて行き、一時程経ってから、元気な男の子が産声を上げて産まれて、皆は先ずは一安心をしていた。
エルミナは出産を終えてから、疲れたのか赤ちゃんの顔を見てから、やすらかなぁ表情で眠りに就いてしまい、ミレーナはエルミナが無事に出産を終えた事を国王と王妃に伝える為に城へ戻って行った。
エルミナは気持ちよさそうに寝ていると、夫のダイナスが仕事から戻って来た時に丁度良いタイミングで目を覚まして、ダイナスを出迎え、産まれた元気な男の子の赤ちゃんを見せて、二人で喜び合っていた。
エルミナとダイナスはその後相談をして、赤ちゃんの名前を考えて、名付けた名前はダティスと命名をして、赤ちゃんをダティスと呼ぶようになった。
そんなイベントを終えたセイナは、何時もの様にコハクを抱き、自分の部屋で休んでいると、あっという間に夕食の時間になり、今日はエルミナが出産したと云う事で豪勢な夕食となった。
セイナはエルミナが赤ちゃんを産んで三日目の朝を迎え、王家を向かいにクラウンの幌馬車に乗り、王城へと向かった。
王城へ着くと、王家の馬車が二台用意されて、一台目は国王エリナスと王妃エリザベスが乗り、もう一台は王太子のエディオンが乗る事に成っていた。
「セイナちゃん、あっ、居たわねぇ、セイナちゃんは私と一緒に同じ馬車に乗るのよ、私の相手をして貰うからねぇ、シルフィ様もご一緒にねぇ、お願いします」
王妃エリザベスはセイナを大きな声で呼んで、見つけるとセイナの腕を引いて馬車に乗り込み、シルフィも同乗する事を許可も出した。
セイナはコハクを抱きながら、国王と王妃の乗る馬車にエリザベスにより、強引に同乗する事になって、シルフィも溜息を吐きながら、セイナと共に同じ馬車に乗り王城から出発した。