第七十八話 聖女アイラナの帰国と、セイナが本領発揮する
セイナとシルフィは久しぶりにクラウンの屋敷で過ごし、聖女アイラナと最後の夜に思い出話に花を咲かせて、楽しい時間を過ごした後にセイナは自室で、明日の隣国訪問の為に聖霊樹の種を五つ生成をしてから就寝した。
朝になり、クラウンの屋敷に住むメンバー達が、聖女アイラナを見送る為に全員で玄関に揃い、惜しみつつも別れの挨拶をした。
シルフィは神龍に変身をして、聖女アイラナとセイナを乗せて、クラウンの屋敷の庭から、飛立ち、隣国へと向かった。
「シルフィ様、セイナさん、色々とお世話になりました。私はセイナさんと会えてとても良かったと思っていますわ、元気を一杯貰いましたから、でも、機会があれば、またお会いしたいですわ」
聖女アイラナはセイナとシルフィに感謝の礼を述べた。
「えっ、そうですねぇ、それと聖女アイラナ様に贈り物がありますので、受け取ってくださいねぇ」
セイナは以前に作ったペンダントと野菜などの種が入った袋をアイテムボックスから出して、聖女アイラナに渡した。
「その中に野菜などの種が入ってますから、栽培すると良いですよ、栽培方法を記したメモも入れてありますから」
セイナはペンダントの事は伏せて、聖女アイラナに説明をした。
「あら、この袋に入っているのは、ペンダントもありますが、これは何ですか、セイナさん」
聖女アイラナは小さい袋を見つけ、中を見て、セイナに質問をした。
「あちゃ~、バレちゃったか、そのペンダントには私の魔力が詰め込んでありますから、お守りとして使ってくだされば、嬉しいです」
セイナは気まずい表情をして、そして照れ笑いをしながら説明をした。
「アイラナ様、そのペンダントがあれば、私の力を何倍も引き出す事が出来ますよ、是非身に着けておいてください」
聖女アイラナの守護聖霊セリエは、聖女アイラナにその効果を伝えた。
「まぁ、そうなの、ありがとうセイナさん、お守りとして、身に着けさして頂きますねぇ」
聖女アイラナは早速、そのペンダントを身に着けた。
「ホウ、そのペンダントの魔力は凄まじいのう、一生ものじゃ、聖女アイラナ、大切にすると良いのじゃ、使わねば、子々孫々まで長く持つ物じゃ」
シルフィはそのペンダントに込められた魔力量に感心をして、聖女アイラナに大切にするように伝えた。
「はい、シルフィ様、大切に致します。子々孫々まで持つのでしたら、家宝に致しますねぇ」
聖女アイラナはペンダントを手に乗せて、見詰めながら告げた。
「でも、聖女アイラナ様、使うべき状況になったら、ちゃんと使ってねぇ、その為に作ったんだから、家宝にしてもらう為に作ったんじゃないからねぇ」
セイナは、聖女アイラナに使うべき時に使う様に念押しをした。
そんな会話をしているうちに、旧サベラス王国の王都の上空に到着して、王都を眺めると王城が在ったと思われる処は瓦礫の山に成っていて、セイナがシルフィに言った。
「あの瓦礫の山は王城跡なのかしら、シルフィ、随分派手にやったのねぇ」
セイナはシルフィに軽蔑の眼差しで見ていた。
「ちとばかりなぁ、其のくらい遣らんと、あの胸糞悪い王族を根絶する事が出来んからの」
シルフィは吐いて捨てるような言い方をした。
「まぁ、話を聞く限りでは、そうなんでしょう、庇う理由が無いものねぇ、民達も一安心したんでしょうねぇ」
セイナは根絶された王家に対する感想をシルフィに言った。
「セイナや、あそこに池があるのじゃ、そこに降りるから、分っておるなぁ」
シルフィは王都の中央から、少し外れた所にある池を目印に降下していった。
王都の住人達がシルフィを見つけると、なぜか手を振り、怖がるどころか、なぜか歓迎されているように、セイナからは見えた。
「シルフィ、王都の民達から歓迎されている様に見えるけど、そうなのかしら」
セイナはシルフィに思わず確認をした。
「きっと、そうですよ、民達も前国王の悪政に苦しんでいましたから、そこから解放してくれたのが、シルフィ様ですからねぇ」
聖女アイラナは微笑みながら、シルフィの代わりにセイナに答えた。
シルフィは池の畔に降りると、セイナと聖女アイラナを降ろすと、直ぐに人の姿に戻り、そしてセイナに告げた。
「セイナ、此処に聖霊樹の種を植えて、ついでに素敵な王城を建ててやって欲しいのじゃ、セイナの妄想魔法での」
シルフィはセイナを見て、ニヤと笑いセイナに告げた。
「シルフィ、そんな失礼な言い方ってあるの、本当にもう、私は夢見る乙女なの、妄想なんて酷いじゃない」
セイナはシルフィに反論しながら、シルフィの言った畔の指定場所に、聖霊樹の種を植えた。
セイナは何時もの様に、聖霊樹の種に聖水をかけて、そして聖女アイラナの為に王城の形を妄想して、お伽話に出てくるような白亜の城をイメージしながら、種子育成魔法をその地に放った。
セイナが種子育成魔法をかけると池全体が白銀色の光に吞まれ、そして王城跡地へと光が広がり、その光の中から、段々と城の形が形成されていくのと同時に聖霊樹が成長した。
聖霊樹の周りには花々が咲き乱れていき、光が収まる頃には、池と畔全体と旧王城の周りに真っ白い城壁と城門も立派なものが建てられた。
そして、城壁の中心に白亜の城が姿を現して、その様式は、まるでお伽話出るお城の様に物で綺麗な城が建てられ、聖霊樹も立派な成木になっていた
「うっふん、如何かなぁ、シルフィ、こんな感じで、聖女アイラナ様は如何思いますか、城の出来栄えの程は」
セイナはドヤ顔でシルフィに聞き、聖女アイラナにも感想を聞いた。
「うんうん、相変わらずじゃの、呆れて物も言えんほどの出来栄えじゃ」
シルフィは呆れた表情で、期待通りの面白さに納得をして笑っていた。
「えっ、えいと、そうですわねぇ、相変わらず凄いですわ、でも、とても綺麗な城だと思いますわ」
聖女アイラナは惚けて、自分が住む城なのに、なぜか他人事の様にセイナに感想を言った。
それから、セイナ達は城門の処に行き、聖女アイラナの夫になる新国王アザシン・エイラインを待っていると、部下を引き連れたアザシンが走ってきて、シルフィに膝をつき挨拶をした。
「神龍様、良くぞお出でくださいました。私アザシン、そして部下の者と共に歓迎をいたします。そして聖女アイラナ様もお元気に成られて良かったです」
「うむ、それと此処にいるのは、我の主のセイナじゃ、宜しく頼むのじゃ」
シルフィはセイナをアザシンに紹介をした。
セイナはアザシンに挨拶をしてから、新しい王城の中の出来栄えを早く確認したくて、シルフィに耳打ちして、城の中を見に行くように頼んで、城の中に皆で入っていった。