第七十七話 義父の回復
セイナは義父のバーロンの病の治癒を終えた後、バーロンに領地での新規事業の話をして、農地の拡大と工房の新規建設と増設などを説明をした。
「セイナちゃん、領地の民達が、豊かな生活出来るようになり、笑顔で暮らせるのなら、好きにすれば良い、世界樹の件はエリザベスより聞いておる。不作の原因もなぁ」
バーロンは優しい笑顔でセイナに自分の意思を伝えた。
「あっ、はい、ですが、一応これからもお父様に相談しながら事を進めたいのです。私が良かれと思っていても、民達がそう思わないこともあると思うので、独りよがりにならない様に、これからも指導して頂きたいのです。お願いします」
セイナは領地経営には、全く自身が無いので、義父の知恵と経験を教えてもらいたかった。
「そうじゃなぁ、儂は今はこんな状況じゃ、当面はエリザベスに相談すると良い、しかし、セイナちゃんのお陰で、少し元気になれたようじゃ」
義父のバーロンは思いのほか、体調が良くなった事を嬉しく思っていた。
暫くして、バーロンに食事が届けられて、バーロンは自分で食事を摂り、久しぶりに美味しく食事が摂れるようなった事を喜んでいた。
「セイナちゃん、お父様がこうしてご自分で食事を摂れるなんて、本当に凄い事よ、元気になられて、本当に嬉しいわ、ありがとう」
エリザベスは父が美味しそうに食事を摂っている姿に感動をして、涙を流しながら、セイナにお礼を言った。
そんな状況の中で、シルフィが訪れて、セイナの隣に行き、バーロンを見るなり、微笑みながらバーロンに挨拶をした。
「そなたが、セイナの義父に成ったバーロンじゃなぁ、我はセイナの保護者のシルフィと申す。以後宜しく頼むのじゃ」
「貴方様は神龍様ですか、此方こそ、宜しくお願いします」
義父のバーロンは一旦食事をやめて、シルフィに挨拶をした。
「ア~、よいよい、食事を続けよ、そなたには、セイナの為にも元気に成って貰わなければ困るのでの、我からも加護を授けよう、ちょっと額を触らせてもらうのじゃ」
シルフィはバーロンの額に人差し指を当て、そして神龍の加護を授けた。
「これで、良いのじゃ、セイナの治癒で可成り良く成っておる。数日には動ける様になるのじゃ」
シルフィはバーロンに病が悪化しないように、健康体になる加護を授けた。
「ありがとう御座います。神龍様、私は何と幸運なのでしょう、こうして神龍様にもお会い出来ました」
バーロンは涙を流しながら、シルフィを見て感動していた。
「なに、そなたがセイナを信じて養女にしてくれたお礼じゃ、それに元気になったら、我らと同じ、セイナの保護者として面倒を見て貰うのじゃ」
シルフィはバーロンに、セイナの親としての勤めをして貰うつもりで期待していた。
それからは、公爵領の開発について、エルミナをはじめとして、王妃とセイナを含めて、色々と意見を交わして、バーロンも元気になったら、協力する事をシルフィ達に伝えた。
斯うして、セイナは義父との挨拶を無事に済ませてから、いつもの応接室に戻り、王妃はセイナにべったりとくっついて、同じソファーに座り、抱き着いて、父親が元気に成った事に改めて感謝をした。
「セイナちゃんのお陰で、あんなに元気成るなんて、本当にありがとうねぇ」
「うっぷ、王妃様、感謝してくれるのは良いのですが、苦しいです」
セイナは顔面に王妃の胸が当たり、息が思うようにできずに助けを求めた。
「お母さま、セイナが苦しんでますよ、お母さまの大きな胸はある意味、凶器になるので気を付けてくださいねぇ」
エルミナが王妃に注意をした。
「あら、ごめんねぇ、セイナちゃん大丈夫」
王妃エリザベスは慌ててセイナを解放した。
「スウー、フー、はい、何とか大丈夫です」
セイナは大きく深呼吸をしてから、王妃に答えた。
「相変わらずじゃなぁ、王妃殿は、そのうちセイナを窒息死させてしまうのではないかの」
シルフィは苦笑いをしながら、王妃に告げると、王妃も苦笑いをして反省をした。
「それでじゃ、明日なんじゃが、聖女アイラナを隣国の新たな国王の下へ連れていく事に成ったのじゃ、思ったより早く粛清が終わっての、しかし、自然崩壊が思った以上に早くての、それを食い止めなかければいかんのじゃ、セイナ、分かっおるなぁ」
シルフィは真面目な表情に変わり、セイナに確認をした。
「はい、聖霊樹の種ですねぇ、シルフィ、いくつくらい用意すれば良いかしら」
セイナは聖霊樹の種をいくつ用意するか、シルフィに確認をした。
「あそこの国とは、これから付合いが長くなるのでの、五つくらい用意して欲しいのじゃ」
シルフィは少し考え込んでから、セイナに伝えた。
「国王と聖女アイラナ様は婚姻するのですよねぇ、良い国になるといいですねぇ、アイラナ様には幸せに成って欲しいですから」
セイナは聖女アイラナと新しい国王との婚姻が、聖女アイラナにとって幸せになる事を祈り、妄想をしていた。
「うん、そうじゃなぁ、それにはセイナの妄想力が必要じゃ、期待しておるのじゃ」
シルフィはセイナを見て、ニコニコしながら、笑顔でセイナに言った。
「うふふ、セイナの妄想力ねぇ、頑張るのよセイナ、貴方の妄想力が隣国を救う事に成るのだから」
エルミナはセイナに、にこやかに笑いながら伝えて、セイナ以外の皆が笑い始めた。
それから、セイナをダシにセイナの話題で盛り上がり、セイナ一人がイジケテいたが、皆が楽しそうなので、セイナは内心(マァー、皆が笑顔なら、それで良いか)穏やかな気分でいた。