第七十話 セイナは王妃に初めて会う
セイナは畏まるサディオスを何とか説得して、今まで通りにする様に伝えて、シルフィとエルフィもサディオスに対して、王家の者が、只の小娘に畏まっては変に思われると厳重に注意をした。
シルフィとエルフィは、この際なのでサディオスに、セイナのナイトになれる様に、これからも鍛えるから覚悟するように伝えた。
セイナは内心、そこまでしなくても良いじゃないかと思ったけど、シルフィとエルフィが余りに気合が入っていたので、セイナが口を挟める雰囲気では無かった。
「あっ、そうだ、アースリン、アイリンは、私の処に戻っておいてくれる。何時管理人さん達が来るか解らないから」
セイナはアースリンとアイリンに指示を出すと、二人の聖霊女王はセイナの耳にイヤリングの姿に成り戻った。
「処で、シルフィ、エルフィ、明日なんだけど、絹実の収穫を手伝って貰っても良いかしら」
セイナは明日の収穫を手伝って欲しくて二人に確認をした。
「エルフィとハクは明日から、またサディオスの特訓があるからの、我がするのじゃ、それで良いであろう」
シルフィは、何やらすっきりした表情で、にこやかにセイナに確認をした。
「うん、別に構わないけど、機器の試運転をする為に使う分だから、それ程量は入らないから」
セイナはシルフィ達が何かを企んでいる様に思えていたけど、取敢えず良いと思い、了承をした。
「あのシルフィ様、ここの名称を付ける件は、如何致しますか」
サディオスは、シルフィに馬車の中で相談した事を持ち出した。
「オウー、そうじゃったの、セイナや、ここの名称を付けた方が良いじゃろう、どうするのじゃ」
シルフィはサディオスに言われて思い出し、セイナに提案をした。
「えっ、アー、名称かぁ、そうよねえ、うーん、ここは絹の生地を作るのが主だから、シルク工房でいいかなぁ、まぁ、他にも色々作るけどねぇ」
セイナは自分の名を余り表に出したくないので、主な目的で作る物の名を取って付けた。
「あっ、そうだ、エルフィ、明日サディオスの特訓に行くのよねぇ? 魔物を倒すでしょう? 魔石を集めておいて欲しいのだけど、ダメかな?」
セイナはいずれ冷蔵庫を作りたいと想っていたので、魔石を集めたいと思い、シルフィに頼んだ。
「魔石ですか、別に構いませんよ、何かに使いたいのですねぇ」
エルフィは別に問題無いので、引受けた。
「うん、そうなの、商会で売る製品の第一弾として、冷蔵庫を造ろかなと思って、だから魔晶石を沢山造っておきたいの、」
セイナはせっかく、氷の聖霊女王と契約したので、冷蔵庫を作りたいと考えていた。
「なる程の、氷の聖霊女王と契約しておるからの、丁度良いという事かの」
シルフィはセイナの言う事に納得をした。
そんな時に玄関から、来客が来た時の呼び出しの音が聞こえてきて、サディオスが直ぐに反応をして、玄関の方へ向かう事なった。
「うーん、誰か来たみたいです。俺が出迎えに行ってきます」
「うん、そうじゃな、多分、王妃殿が手配した従者達であろうからの、頼むぞ、サディオス」
シルフィは従者達が来たと思い、サディオスに出迎えを任せた。
サディオスが出迎えにいって、暫くすると女性の声とサディオスの声が聞こえてきい、何だか騒々しく成っていった。
「サディオス、セイナちゃんは何処にいるの」
「母上、二階に居ますが、如何なさったのですか」
サディオスの焦っている声が、二階まで聞こえていた。
「何じゃ、あの声は王妃殿の声じゃなぁ」
シルフィは意外そうな表情で、誰が来たか皆に知らせた。
「えっ、王妃様ですか、何でまた急に来たんですか」
セイナは焦ってシルフィ達に確認をした時に、王妃が応接室に入って来た、
「もしかして、貴方がセイナちゃん? 会いたかったわ」
王妃エリザベスはセイナを見て、思いっきり、抱きしめに言った。
「えっ、うっぷ、うんうん・・・」
セイナは驚いた瞬間に王妃に抱きしめられて、息が出来なくなっていた。
「コレコレ、王妃殿、其のままでは、セイナが天に召されてしまうぞ」
シルフィは苦笑いをしながら、王妃を窘めた。
「えっ、あら、ごめんなさい、セイナちゃん、やっと会えて、つい嬉しくて、オホホ」
王妃はセイナに直ぐに謝り、其のまま、セイナの隣に腰を降ろした。
「そうでしたわ、シルフィ様、エルフィ様に、ご相談があって参りましたの、宜しいですか」
王妃エリザベスは姿勢を正して、二人に真剣な表情で相談を持ち掛けた。
「ホオー、相談か、なんじゃ」
シルフィが、真剣な表情になり、エルフィも王妃に真剣な表情を向けた。
「実は、今年の公爵領の穀物の収穫が二年連続で不作に成りそうなのですわ、天候は良かったのにですよ、先日報告があったオルディノ辺境伯爵領と同じではないかと思い、病床の父の処に相談しに行ったのです」
王妃エリザベスはチラと、隣に居るセイナの顔を見てから、シルフィ達に話の続きをした。
「お父様にオルディノ辺境伯爵領の時の話をして、それを解決したのが、セイナちゃんとシルフィ様とエルフィ様ですのよと話をした途端に、そのセイナちゃんを養女にして、公爵家を継がせて、民達を救って欲しい、直ぐに手続きをしなさいと申しましたの」
王妃エリザベスはセイナの顔を見ながら、シルフィ達に父の意思を伝えた。
「ホオー、別に良いじゃないかの」
「うん、問題無いわねぇ、良いじゃないの」
シルフィとエルフィはその話に、全く迷い無く、賛成の意思を示した。
「そうですか、シルフィ様、エルフィ様のお二人なら、賛成してくれると信じてました。ではセイナちゃん、この公爵家養女契約証にサインをしてくれるかしら」
王妃エリザベスは、既に国王の承認のサインが入った契約証をセイナの前に置いた。
セイナは目の前に置かれた公爵家養女契約証を手に取り、内容を確認して、後見人の処にサインをしている人達の名を見ると、チャッカリと国王エリナスをはじめ、エルミナの名が書かれており、更にオルディノ辺境伯爵、サディエンス伯爵の名まで書かれていた。