第六十八話 聖霊女王との契約
セイナは聖霊樹を見て、聖霊や妖精が飛び交う様子を暫く眺めていると、ハクに呼びかけられて、ハクの方を見ると、一つの緑色い玉がハクの周りを飛び交っていた。
「セイナ、すまん」
「ハク、如何したの、なんか、緑の聖霊かしらねぇ、好かれたみたいだけど」
「いや、私ではない、セイナに用事が有るらしい」
「えっ、私に何の用かしらねぇ」
「セイナ、如何やら、貴方に聖霊契約して欲しいようですよ」
クインがセイナの傍に来て、緑の聖霊がセイナと契約をしたがっている事を教えてくれた。
「そうなの、この聖霊の特性は判るかしら、余り気が進まないの様ねぇ、今でも自分の能力に振り回されているから」
セイナはこれ以上、自分の能力が増える事に自分自身が脅威に感じていた。
「うふふ、セイナの場合は増えるというよりも、貸し与える立場だと思いますよ聖霊にねぇ、その聖霊は、自然を司る聖霊ですから、契約すれば良いと思いますよ」
クインは、ハクの代わりにセイナに教えてくれた。
「ハクは聖霊との交信が出来ないのかしら」
セイナは疑問に思い、ハクに確認をした。
「すまん、私は余り聖霊とか妖精の扱いは得意では無いのだ」
「ふーん、そうなんだ。でも自然を司る聖霊なら、歓迎するわよ、自然崩壊を食い止めるのに役に立ちそうだから」
セイナが歓迎すると言ったとたんに、緑色の玉はセイナの周りを飛ぶようになり、それともう一つ白い玉の聖霊もセイナの周りを飛び交う用になった。
「あら、氷の聖霊もセイナと契約をしたがってます」
クインが白い玉の聖霊を見て、セイナに知らせた。
「えっ、氷の聖霊も、いいわよ、二つとも私が面倒を見てあげる。氷はこの世界でも貴重だから」
セイナは笑顔でそう言うと、両手の掌を上に向けて、歓迎の意思を示した。
セイナが両手の掌を上に向けると、二つの玉はセイナの掌に乗り、それを確認したセイナは二つの聖霊に魔力を送り始めた。
その時セイナはふと聖霊女王のイメージをしてしまい、二つの聖霊に新たな能力まで与えて、二つの聖霊は美しい女性に成長をして、前回の時よりも、更に鮮明な存在となって、セイナの前に膝まずいた。
「えーと、貴方達の名を与えれば良いのよねぇ」
セイナは二人の聖霊に確認をすると二人の聖霊は静かに頷いた。
セイナは二人の聖霊の名を暫く考えて、自然を司る聖霊にアースリン、氷を司る聖霊にアイリンと名付ける事にした。
「よし、自然を司る聖霊さんにはアースリンと命名します。そして氷を司る聖霊さんにはアイリンと命名します。良いですか」
セイナは二人の聖霊の頭に手を当てて、命名すると、更に魔力をセイナから吸収して、二人の聖霊は更に鮮明になり、そして一瞬光り輝き、完全な聖霊女王として覚醒していた。
「あれ、前回と何か違う感じだけど、どう云う事かな」
セイナは何も深く考えずに、前回と同じ感覚で、聖霊との契約をしてしまった。
「セイナ、あの二人は貴方と契約するのです。相手の能力に合わせてねぇ、聖女アイラナ様の時とは違うのですよ」
クインは呆れてセイナに伝えて、更にセイナに説明をした。
「セイナ、二人の聖霊は完全に聖霊女王に覚醒してますよ」
クインは二人の聖霊の状態をセイナに伝えた。
「えっ、聖霊女王って、本当に、アースリン、アイリン、本当に聖霊女王なの」
セイナは驚いて、二人の聖霊に確認をした。
「はい、セイナ様のお力になる為に聖霊女王に覚醒いたしました」
「私もです。セイナ様のお役に立つ為に聖霊女王に覚醒致しました」
アースリンとアイリンは、セイナに膝まずきながら答えた。
「え~と、守護聖霊とは違うのよねぇ、この場合はどうなるの?」
セイナは守護聖霊との違いを確認をした。
「はい、違いは能力が格段にちがいますが、普段はセイナ様の傍で姿が見えない様に、例えば指輪とか、ネックレスとかに姿を変える事も出来ますよ」
アースリンはセイナに姿を変える事が出来る事を伝えた。
「私も同じですが、出来ればイヤリングの方が嬉しいのですが、その方が意思の疎通がしやすいので」
アイリンは自分の希望をセイナに伝えた。
「うーん、アースリンもイヤリングに姿を変えられるかしら」
セイナはイヤリングが良いと思い、アースリンに姿を変えられるか確認をした。
「はい、大丈夫ですよ」
「なら、アースリンは右耳に、アイリンは左耳にねぇ、出来れば形は同じ形になって欲しいだけど」
セイナは二人の聖霊女王に希望を伝えた。
二人の聖霊女王は互いに顔を見合わせて、主で有るセイナに似合う形をセイナの顔をチラ見しながら、相談をして、ようやく形が決まり、そして其のまま、指定された耳にイヤリングとして納まった。
セイナは、自分の耳に着いたイヤリングを確認する為に、池の水面に自分の顔を映す為に水辺に行き確認すると、ハート型の小さい石が右に緑色と、左に水色の二つが付いていた。
「あら、良いじゃない、着け心地も違和感がなくて、良いわ、二人共ありがとうねぇ、これから、宜しくねぇ」
セイナは割と似合っているので、二人の聖霊女王に感謝をした。
「はい、これからセイナ様の為に尽くします」
「私もセイナ様の為に役に立つ様に頑張ります」
アースリンとアイリンはセイナに誓いを立てた。
それからセイナはコハクを抱きしめて、ハクとクインを連れて、畑の方を見て周り、絹実がちゃんと実っているのか確認をしてから、屋敷に向かう事にした。
「ねぇ、アースリン、アイリン、二人の能力って、一体何があるのが教えてくれるかしら」
セイナは二人の聖霊女王に能力の確認をした。
「あの、すいません。私の能力が増えていて、確認作業中のなので、暫くお待ち下さい」
「はい、私も只今確認作業中です。セイナ様の能力も引き継いでしまったようです」
アースリンもアイリンも能力が増えて、少し混乱している様だった。
セイナは二人の聖霊女王の返事を聞いて、私と契約すると案外大変なんだなぁと思い、少し苦笑いをしながら、畑の絹実の育ち具合を確認をした。