第六十三話 セイナは農地を得る?
セイナは、その日の二人の聖女の護衛任務を無事に完了する事が出来て、依頼票に聖女ミレーナからサインを貰って、王城からクラウンの屋敷に聖女アイラナと共にクインとコハクを引連れて戻り、シルフィは聖女ミレーナと少し話が有るからと、其のまま王城の玄関の中に、聖女ミレーナと共に入って行った。
シルフィは聖女ミレーナと共に、王家のプライベートスペースの中にある何時もの応接室で、国王と王妃に会い、今日のセイナの行動と反応を二人で報告をして、そして、今後の方針として、二人を如何に結びつけていくかを、話し合われていた。
セイナはクラウンの屋敷にもどり、任務完了の報告とサインを貰った依頼票を、エルミナに提出と報告をする為に、エルミナが居る執務室に能天気な笑顔をしながら訪ねて行った。
「エルミナさん、只今、戻りました。任務完了の報告とサイン入りの依頼票です。あら、エルミナさん、どこか具合が悪いのですか、優れ無さそうですが」
セイナは元気な声で、エルミナに報告をした瞬間に気付き、エルミナに尋ねた。
「うーん、大した事では無いわよ、セイナ、只のツワリだから、なんせ私は妊婦ですからねぇ」
エルミナは、セイナの質問に気分が優れない表情で答えた。
「処で、任務完了ねぇ、お疲れ様、この依頼票は預かるわねぇ、セイナはもう、休んでいて良いわよ、クインもお疲れ様です」
エルミナは少し辛そうにセイナとクインに労いの言葉を贈った。
「はい、それでは、失礼します」
セイナはエルミナが具合悪そうだったので、心配ながらも遠慮をして、その場を後にした。
「うむ、ツワリじゃ、私には、何かをしてあげる事は無いわねぇ、そ~としておくことが一番かな」
セイナは、執務室を出た後で、クインに自分の思った事を話した。
「そうですねぇ、こればかりは如何しようも出来ませんからねぇ」
クインはコハクの出産経験がある為に、経験した事で感じた事をセイナに伝えた。
「やっぱり、クインもツワリがあったの、神獣も人と変わらないのねぇ」
セイナは、クインもコハクを妊娠した時に、ツワリが有った事に感心を示した。
「有りましたよ、私は結構辛かったのですよ、気分も優れませんでしたし、何もする気になれませんでした」
クインは当時の事を思いだして、コハクを見詰めた。
クインはそんな辛い思いをしたかいがあって、可愛い息子を産む事が出来たので、それは今は良い思い出でにも成っていたのであった。
「そうなんだねぇ、私も何時かは誰かとの間に、子を産む事があるのかしらねぇ」
セイナはそう思った瞬間に、サディオスの顔が浮かび、思わず頭を振っていた。
「セイナ、如何したのですか、行き成り頭を振って、大丈夫ですか」
クインはセイナが、行き成り、挙動不審な行動をしたので、セイナに尋ねた。
「いいえ、何でもないからねぇ、気にしないで、クイン、チョット変な事を思い出しただけだから」
セイナはクインに、流石にサディオスの顔が浮かんだなどとは言えなかった。
セイナは何故そんな処で、サディオスの顔が浮かんだのか、全く理解できず、少し焦って、クインに言ったけど、自分でも何だかんだと意識しているのかと思って、凄く憂鬱になっていた。
そして王城では、何時もの応接室で未だに、国王と王妃にシルフィと聖女ミレーナとの話合いが行われていて、王妃がある提案をした。
「そう言えば、エルミナちゃんから、セイナ様に農地を授けて欲しいと云う事があったけど、まだ決まって無いのよねぇ、公爵領の別邸と広い敷地があるから、其処を授けましょう」
王妃エリザベスは閃いたとばかりに、シルフィ達に提案をした。
公爵邸の別邸は、以前公務などで、精神的に疲れた時に静養する為に建てた施設で、趣味で畑仕事をしていた王妃の祖父が建てた物で、畑も凄く広くなっていた。
そこの別邸は王都から、然程遠く無く、馬車で三時程で着く距離にあり、セイナに授ける分には丁度良い物件であった。
「オウー、あそこか、あそこは近くに少し大きめに池もあり、景色もいいのう、私が幼い頃にエリザベスと良く遊んでおった場所じゃ、それは良いではないか」
国王エリナスは王妃エリザベスの提案に乗る気であった。
「なる程、そこへ二人切りで行かせるのも、面白いのじゃ、だが我らも御供せんと行かんなぁ、だが邪魔をせねば良いだけじゃなぁ、うふふ、面白い、距離を縮めるには良いかも知れんな」
シルフィは笑顔を浮かべて、王妃の提案に賛成をした。
こうして、セイナに授ける農地は決定されて、早速、エルミナの処に送る事になり、書状はエルミナ宛てに、その別邸の権利書がセイナ宛てに、シルフィが直にエルミナの処へ届ける事になった。
シルフィは国王から、書状と別邸の権利書を預かり、クラウンの屋敷に戻り、直ぐにエルミナの居る執務室に訪れた。
「何じゃ、具合が悪そうじゃなぁ、エルミナ殿、ツワリか、為らば、これを呑むと良いのじゃ」
シルフィは異空間収納から白い玉の薬を一粒出して、エルミナに手渡して、呑む様に勧めた。
「シルフィ様、これは何の薬ですか」
エルミナはその薬を見て、シルフィに尋ねた。
「それは以前、我が妊娠した時に作った、ツワリ止めじゃ、其方なら、効果があるはずじゃ、なんせ我の子の子孫に成るのでの」
シルフィはエルミナに飛んでもない事を話した。
「えっ、私はシルフィ様の子の子孫何ですか」
エルミナは驚いて、思わず聞き返していた。
「そうじゃ、因みに王家の御先祖は我の子とエルフィの子の番じゃ、昔な色々あってなぁ、この地で我とエルフィは、人として暮らして、男性と番になり、其々、何人か子を設けておるのじゃ」
シルフィは、この国の生い立ちの一部をエルミナに伝えた。
それを聞いたエルミナは、直ぐにツワリ止めの薬を呑むと、気分が楽になり、それから、シルフィに色々と質問をして、何故、シルフィとエルフィが、サディオスとセイナを夫婦にしたがっているのか納得をした。