第六十二話 セイナは二人の護衛任務に励む?
セイナは、シルフィから、先日造った防具の件で、長々とお説教成らぬ講義を聞かされている時に、その様子を見ていた二人の聖女は、クスクスと笑いながら、二人の様子を伺い、セイナは、シルフィの講義を聞いて、一応反省をする事にした。
セイナは、シルフィの長い講義が終わって、暫くして、車窓から街中の様子を見て、どこに向かっているのか、疑問に思い、聖女ミレーナに尋ねた。
「あの聖女ミレーナ様、今日は街の中の散策ですよねぇ、この馬車はどこへ向かっているのですか」
「うふふ、王家が管理している公爵邸よ、そこに馬車を置いて、そこから、歩いて街の中を散策するのよ」
聖女ミレーナは微笑みながら、セイナに向かっている場所を教えた。
セイナ達が向かっている公爵邸は、いずれセイナとサディオスが婚姻した場合に引継ぐ屋敷であり、セイナに見せる目的で、そこに向かっていた。
「セイナさん、その公爵邸は、王妃様が王家に嫁ぐ前まで、住んでいた御屋敷なのよ、とても素敵な御屋敷だから、良く見ておいて良いわよ」
聖女ミレーナはセイナにその屋敷について、簡単に説明をした。
セイナは、聖女ミレーナからの説明で、婚姻前に王妃様が住んでいたと聞いて、興味を持ち、どんなお屋敷か視たくなり、どんな素敵なお屋敷か楽しみになっていた。
そんな話をしていると、公爵邸に着き門が門番により開けられて、馬車はその門の中に入ると、広い庭園があり、その中を馬車はゆっくりと進み、丁寧に手入れがされた庭園に、綺麗な花が咲き誇っていた。
「凄く綺麗な庭園ですねぇ、あそこに白い綺麗なお屋敷がありますねぇ、凄く綺麗で立派なお屋敷です」
セイナは眼を輝かせて、庭園とお屋敷を眺めていた。
「どうじゃ、セイナ、この屋敷に住んでみたいと思うじゃろう」
シルフィはニヤと笑い、セイナに尋ねた。
「うーん、そうですねぇ、でも住むとなると管理が大変そうですねぇ」
セイナは庶民感覚で、自分で管理する事は難しいと考えて、シルフィに答えた。
「何を言っておる。セイナの魔力量があれば、一人でも管理出来るじゃろう」
シルフィは、またニヤと笑いセイナに言った。
「あっ、そうか魔法を使えば出来るのか、なら住んでみたいですねぇ」
セイナは屈託のない笑顔で、シルフィに答えた。
「そうか、そうか、住みたいか、なら、エルミナ殿の云う事を良く聞いて、勤めに励めば、そのうちに譲って貰えるかも知れんぞ」
シルフィは、含みのある言い方をして、セイナに伝えた。
「えぇ、幾ら何でも其れはないでしょう、エルミナさんが王女様だと云っても、流石にそこまでの権限は持ってませんよ」
「あら、それは分からないわよ、希望の盾は王家の依頼を数多くこなしてますから、ただ、それには幾つかの条件をクリアしないと無理ですけど、セイナさんなら出来るかもしれませんよ」
聖女ミレーナは、セイナにまた含みのある言い方をして、微笑みながら伝えた。
聖女ミレーナは内心、セイナの場合は、たった一つの条件、サディオスと婚姻すれば、この屋敷に住めるのですよと、心の中で叫びたい気持ちを抑えて、セイナに話していた。
そして馬車は屋敷の玄関の前に到着すると、執事らしき男性とメイドが数人立ち並び、出迎えてくれて、そして二人の聖女と共に、セイナ達も屋敷の中の応接室に案内をされた。
「セイナ、私達はこれから着替えてきますから、それまで此処で待っていてくださいねぇ」
聖女ミレーナはセイナに笑顔を向けて待つ様に頼んで、聖女アイラナと別室に向かった。
「この屋敷はやはり内装も凄く綺麗じゃな、我も此処に住みたくなったのじゃ、ここはひとつ、セイナにひと肌脱いで貰って、頑張って貰わねばならんの」
シルフィは、壁などに飾られている絵画や装飾品などを見ながら、セイナにニヤと笑みを浮かべて告げた。
「何を言っているのですか、シルフィなら国王様に一言、言えば貰えるんじゃないですか」
セイナは絶大な力を持つシルフィなら、誰でも云う事を聞くはずだと思い、シルフィに言った。
「それは成らぬよセイナ、我は斯う見えても慈愛の女神メルリス様の使いじゃ、使命以外で力押しする事は出来んのじゃ」
シルフィは尤もらしい事をセイナに話していたけど、実際は出来るのであった。
シルフィは何とかセイナとサディオスに婚姻して貰い、この屋敷に住んで貰わないと意味が無いと強く思い、そして、二人の間に出来た子を愛でる日を秘かな楽しみにしていた。
そして、暫くして二人の聖女は軽装な服装で、セイナ達の前に来て、聖女ミレーナはドレスから白いワンピースに着替えて、聖女アイラナは聖女の正装から、水色のワンピースに着替えていた。
二人のワンピースは、セイナから譲り受けた物で、セイナが此方の世界に合うようにアレンジした物であった。
「ワァー、二人共良く似合っていますよ、綺麗です」
セイナは二人の聖女を見て、本当に感激をしていた。
それから、セイナは二人の聖女様とシルフィにクインを連れて、公爵邸を出て街に向かい、聖女ミレーナはコハクを抱っこしてモフモフを楽しみながら、聖女アイラナと街の事を話していた。
セイナ達が街中に入ると、聖女ミレーナの案内で、宝飾店や服飾店などを何店舗か周り、そして、お洒落な貴族ご愛用の軽食店に入り、軽く食事をしてから、少しお洒落なお店を何店か周ってから、最後に建設中の建物を案内された。
「セイナさん、この建設中の建物は、今度、王家と希望の盾の共同出資で、つくる商会の建物ですよ、ここで、セイナさんが造った便利な魔道具や衣類を販売する予定ですよ」
聖女ミレーナはセイナに、この建設中の建物について説明をした。
「えっ、ここでですか、私そんなに売る程、魔道具なんか造って無いですよ」
セイナは驚き、聖女ミレーナに確認をした。
「うふふ、何を言っているのですか、ダンジョン都市に沢山在ったでしょう、それを参考に王家の優秀な魔導士スッタフが造るのですよ、今現地で分析と解析を行っている処ですよ、既に何点かは再現をして、造っていますから」
聖女ミレーナはセイナに、商会で売る魔道具の製作に、取り掛かっている事を教えて上げた。
「えっ、ダンジョン都市のですか、うっ、思い出すと何か恥ずかしいです」
セイナは、あの時の事を思い出して、少し顔を赤らめていた。
「それで、聖女アイラナ様の国が体制が整えらて、落ち着いた後に、新しい国王と手を結び、販売をする事も検討しているのよ」
聖女ミレーナは、いずれ聖女アイラナの母国にも、販売する計画がある事もセイナに伝えた。
そんな話を聖女ミレーナがした後は、また、公爵邸に向かって歩き出し、ゆっくりと街の中を散策していたけど、街の民達は聖女ミレーナが散策している様子を遠巻きから見て、お辞儀をするだけか、優しく笑顔を向けるだけで、邪魔をしない様に気を使ってくれていた。