第五十一話 スイカとメロンって何?
翌朝を迎えて、早朝稽古の後に、セイナは朝食を摂り終えると、聖女ミレーナと聖女アイラナに連れられて、空いている畑に連行されて、その後をシルフィとエルフィにハク達も付いて来ていた。
「さあ、セイナ、お願いねぇ、ここの畑は今は使われていないから、安心して使っていいわよ」
聖女ミレーナは顔は笑っていたが、眼が真剣で、少し怖いくらいになっていた。
セイナが連れて来られた畑は、街の中にある小さい畑で、家庭菜園で使う感じのもので、一辺が10m位の正方形の形の畑であった。
「アハハ、分かりました。暫くお待ちくださいねぇ」
セイナは少し顔を引き攣りながら、苦笑いを浮かべて返事をした。
セイナは、先ずは使われていない畑に畝を魔法でつくり、そしてマジックバックから、小さい紙袋を二つ出して、先ずはスイカの種を先に畝の一列目に植えて行き、それが終わると、二列目の畝にメロンの種を植えた。
それからセイナは聖水を種を植えた畝に蒔いてから、種子育成の魔法を使って、畑一面に魔力を放出すると畝から芽が出て、ミルミルと成長させて行くと実がなり、ドンドン大きく成り、食べごろの大きさにまで成長させた。
「フウー、出来ましたよ、聖女ミレーナ様、どうします、全部収穫しますか」
セイナは聖女ミレーナに確認をした。
「うーん、取敢えず試食する分で良いと思うわよ、二、三個あれば足りるでしょう」
聖女ミレーナは試食する分だけとセイナに告げた。
セイナは聖女ミレーナに言われて、取敢えずスイカとメロンを三個ずつ収穫して、マジックバックに仕舞って、そして皆で宿屋に戻って行った。
セイナは宿屋に戻ると、厨房の一角を貸して貰い、スイカとメロンを切って人数分を更に盛り付けて、食堂で待っている聖女ミレーナと聖女アイラナにシルフィとエルフィ、そしてオルディノ辺境伯爵も何故か試食会に参加していたので、追加して配膳をした。
「それでは皆さん、試食してみてください。大きい赤い実の方がスイカです。小さい方がメロンです」
セイナがそう言うと一斉に全員が食べ始めた。
「うーん、両方とも甘くて美味しいですわ、セイナさん」
聖女ミレーナは笑顔で、セイナに感想を伝えた。
「はい、ほっぺが落ちそうです。大変甘くて美味しいですわ」
聖女アイラナはまるで子供に戻ったような感想を述べていた。
「オッ、これは素晴らしい、甘くて美味しいですぞセイナ殿、これは是非我が領で生産させてください」
オルディノ辺境伯爵は興奮気味にセイナに伝えていた。
シルフィとエルフィは試食を始めて、直ぐにペロリとあっという間に平らげて、セイナに美味しいと合図を送り、ご満悦でいた。
「そうですわねぇ、オルディノ辺境伯爵に、この果物の生産を任せましょうか、生産が上手く行った暁には、私の処に幾つか献上をお願いしますねぇ」
聖女ミレーナはチャッカリとオルディノ辺境伯爵に献上を要求していた。
「アハハ、それではこちらの紙袋に入っているのがスイカの種で、こちらがメロンです。これを畝を作って種を蒔いて下さい。先程借りた畑にまだ生えていますので、それを参考にすれば良いと思いますよ」
セイナは聖女ミレーナの反応に引き攣りながら、スイカとメロンの種をオルディノ辺境伯爵に渡した。
「これは、これは、ありがとうございす。これでまた、私の領に名物が出来ると云う物です。これを成功させれば、民達もきっと喜ぶと思います」
オルディノ辺境伯爵は素直に喜び、セイナに握手をして感謝していた。
オルディノ辺境伯爵はセイナから、譲り受けた種を大切そうにバックの中に仕舞い、改めてセイナと聖女ミレーナに感謝をした。
「聖女ミレーナ様、この度はありがとう御座います。実はここの処の不作続きで、私も民も大変困っていましたので、助かります。土壌の質が年々悪く成り、聖女ミレーナ様に浄化して貰えばマシになるかと思って、無理矢理でしたが、お呼びした次第です。・・・・・」
オルディノ辺境伯爵は聖女ミレーナ様を呼んだ理由を詳しく話して、最後にお詫びを入れていた。
「そうですか、でも私もここに来て、良かったと思ってますわ、自然崩壊の兆しがここに出ていたのです。それを知ることが出来ただけでも収穫があったと云う物ですわ」
聖女ミレーナは優しくオルディノ辺境伯爵に話し、お詫びを受け入れていた。
聖女ミレーナはオルディノ辺境伯爵と再度打合せをして、話合いの結果、オルディノ辺境伯爵は領の問題に大体の目途が付いた事と、明日から早速、この果物を種植えを指導したいと言う事で、予定を切り上げ、明日の早朝に王都に戻ることが決まった。
聖女ミレーナはその決定を護衛騎士隊長に告げると、装備の点検と物資の補給をする様に指示をしてから、部屋に戻り、セイナ達に明日の早朝には王都に向けて出発する事を知らせた。
「セイナさんのお陰で、これでやっと王都に帰る事が出来ます。スイカとメロンが功を奏した様です。オルディノ辺境伯爵は大変喜んでおりましたよ、セイナ」
聖女ミレーナはそう云うと、セイナを抱きしめて感謝の意を示した。
「アハハ、そうですか、スイカとメロンですか・・・・」
セイナは自分では大した事では無かったけど、それを言うと角が立ちそうなので、言う事を辞めていた。
「あのセイナさん、私も王都に行く事になったのですが、セイナさんの処にお世話になっても大丈夫でしょうか」
聖女アイラナは、セイナのお世話になりたくて頼んできた。
「はい、そうですねぇ、エルミナさんに聞いてみないと、私では何とも言えないのです。私も居候のようなものなので」
セイナは聖女アイラナに直ぐには返事が出来なかった。
「聖女アイラナ様、その件は私からエルミナ様に話しを通しておきますので、大丈夫ですよ、夫のダイナスさんにも話してありますから」
聖女ミレーナは聖女アイラナに心配ない事を伝えた。
そして、その日の夕食は王都に帰れると言う事で護衛の騎士達は喜び、元気が何時もよりあったほどで、大変賑やかな食事の時間に成っていった。