第八話 神獣が居る森
セイナが乗った幌馬車は難所と云われる神獣が住む森に入り、依然に王都に行く時と違い、だいぶ瘴気に覆われていて、エルミナは少し予想と違った森の様子に困惑していた。
「おかしいわね、以前はもっと緑に覆われていたはずなのに、これが神獣が住む森なの、ダイナスはどう思う」
エルミナはダイナスに森の状態を確認とした。
「うむ、どうやら、勢力図が変わっているようだなぁ、穢れの魔物の数が増えているようだ、セイナさんが居なかったら、可成り危険な状態だよ」
ダイナスがエルミナ達にサーチの状況を報告した。
「どうして、こうなったのかしら、神獣フェンリルに何かあったのかしら、それしか原因が浮かばないわよ」
エルミナは酷く困惑をしていた。
「うーん、何か小さい物が猛スピードでこちらに向かって来ているなぁ、そろそろ視界に入るぞ」
ダイナスがサーチで探知した魔物が姿を見せると二人に知らせた。
ダイナスがセイナ達に知らせて直後に後方の森から、可愛い小さい白い犬?がセイナに向かって走り、そしてセイナに向かってジャンプをして、セイナに抱き付き、そして一旦離れて、セイナを森へと引張ろうと馬車の後方へ袖の裾を噛んでいた。
「ルビナス、サンタナ、馬車を止めて暮れ、やはり森で何か有った様だ、セイナさん、此の子はフェンリルの子供だよ。多分親に何かあった様だ、悪いがエルミナと二人で行ってくれるか、俺達は馬車を護るから」
ダイナスはセイナにフェンリルの子供と行くように頼み、セイナは頷き、フェンリルの子供と一緒に馬車を出て、エルミナには目配せして合図を送った。
「あっ、そうだわ、貴方、この浄化石を置いて行くわねぇ、これだけでも可なり効果があるはずだから」
エルミナは先日セイナが作成した、浄化石四個をダイナスに預けて、先に行ったセイナ達の後を追った。
フェンリルの子供は後から来るセイナを気遣い、少し進んではセイナ達を待ち、そして追いつくと先に行く事を繰り返して、何とかセイナを親の元へ連れて行こと必死になっていた。
森の中は可成り瘴気から産まれた穢れた魔物が大勢を占めていたが、セイナが通り過ぎるとドンドンと姿が散無して、浄化されていった。
そして可成り森の奥まで着て、少し開けた処に出ると白く大きいフェンリルが倒れており、その身体の傷から、黒い靄の様なのが湧きでていた。
セイナは親のフェンリルの身体を浄化魔法で先ず浄化を施し、そしてその身体を触り、再生魔法を施して身体の内外の傷などを再生してから、回復魔法を掛けて、何とか一命は救う事が出来た。
「フゥー、何とか一命は救えたけど、体力だけは戻らないのは、多分血が足りないのかしら、こればかりは如何にもならないわ」
セイナは親のフェンリルの身体を摩りながら、フェンリルの子供を片手で抱えて、悲しんでいた。
フェンリルの子供は悲しそうな表情をしていたセイナの頬に鼻先を擦り、『クウーン』と鳴き、今度は頭をセイナの頬に擦り甘えていた。
その様子を後方から見ていたエルミナは、少し考え込んでから、セイナの処に行き、そしてセイナにある事を提案した。
「セイナ、このままでは親のフェンリルは、またさっきの穢れた魔物達に襲われて、死に至るだろう、だから、一か八か、セイナが親のフェンリルをティムしたら如何だろうか、多分セイナなら出来ると思うから」
エルミナは運を天に任せて賭けに出た。
「ティムですか、エ~と、あっ、この事か、分かったは試してみる」
セイナはステイタス画面で検索をして調べて、そして親のフェンリルにティムを敢行した。
「ティム、貴方を私の従魔にします。寄って貴方にクインと命名します」
セイナは親のフェンリルの額に手を充て、ティムを敢行すると親のフェンリルの身体が光った。
そして、クインはセイナの魔力をドンドンと吸収して、セイナは一瞬、頭がふらついたが、不思議な事に次から次へと魔力が溢れ出して、次から次へと親のフェンリルに魔力を吸収させていくと、親のフェンリルの身体から光が治まり、親のフェンリルのティムに成功して、クインは立ち上がる事が出来た。
「フウー、何か頭がボウーとしているわ、なんか物凄く魔力を吸収された感じかするんだけど、気のせいかしら、あっ、クイン立てる様になったのねぇ。良かったぁ」
セイナは、クインに近寄ろうした瞬間、セイナは意識を無くして倒れて、クインは其れを背で受け止めて、其のまま背に乗せて、子供と一緒にエルミナと共に幌馬車に戻った。
セイナは意識を無くして、倒れている間に、昔幼い頃に飼っていた白い子犬のコハクの夢を見て、コハクとは、良く散歩をしていたが、少し目を離した瞬間に自動車に跳ねられて、短い一生を遂げてしまったペットで、セイナはその時に酷く悲しみ、それ以来ペットは飼わなくなっていた。
そしてセイナが意識を取り戻すと目の前にコハクが居ると勘違いをして、フェンリルの子供を抱き上げて、頬にキスして思わずティムをしてしまった。
「コハク、生きていたの、会いたかったわよコハク」
セイナがそう言うとフェンリルの子供の身体か光り、直ぐに収まった。
「あれ、この子はフェンリルの子供よねぇ、まさかこの子まで、今私はティムしちゃったの」
セイナは寝ぼけてフェンリルの子供までティムをしてしまい、親のクインに思わず謝っていた。
「クイン、ごめん、貴方の子どもまで、ティムしちゃった」
セイナがクインに頭を下げて謝ると、クインはセイナの頬に鼻先を付けて頭を上げさせていた。
「うふふ、セイナは一人漫才でもしているのかい、コハクは元からセイナにティムされる気満々だったから気にする事は無いわよ、それよりもクインの姿を見ても驚かないのが面白いわ、うふふ」
エルミナは笑いながら、セイナに教えた。
セイナは、エルミナからから教えられて、クインを改めて見ると、普通の少し大きめな犬と変わらない背丈になっていたる事に気付き、改めて驚いていたセイナであった。